前々回は "Gilead" の邦訳がまだ出ていない話をしたが、"Gilead" の前年(03年)に全米書評家協会賞(全米批評家協会賞)を取った "The Known World" もやはり未訳のようである。
- 作者: Edward P. Jones
- 出版社/メーカー: Amistad
- 発売日: 2004/06/04
- メディア: ペーパーバック
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…例によって昔のレビュー。これはたしか映画化されたはずだが、いまだに翻訳が出ていないところを見ると、そもそも黒人奴隷の話題そのものが日本の読者には受けないという出版社の読みがあるのだろう。その嗅覚は鋭いとは思うけれど、おかげでこんなにすばらしい小説を楽しめない読者もいるわけだ。洋書ファンなら先刻承知の秀作なので何も問題はないのかもしれないが、「完全ガイド」と銘打った某社の『ペーパーバック300選』にも載っていないのは解せない。まあ、「完全な完全ガイド」なんてものは存在しないということか。
なお、"Gilead" のところで書いたように、神父物、牧師物も日本ではとかく敬遠されがちなので、そんな作品を一つだけ紹介しておこう。これも昔のレビューだ。
- 作者: Elizabeth Strout
- 出版社/メーカー: Downtown Press
- 発売日: 2007/06/01
- メディア: ペーパーバック
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…"Gilead" ほど緻密な構成ではないので、ますます陽の目を見そうにないが、洋書を読む楽しみの一つは、こういう埋もれた心温まる作品に出会うことだ。このところ英米のメディアが選んだ昨年の優秀作ばかり読んでいるが、要は「後追い」に過ぎない。あちらでもあまり脚光を浴びていないような積ん読の旧作に早くとりかかりたくなってきた。