ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Marilynne Robinson の “Lila”(1)とギリアド四部作

 相変わらず体調がパッとせず、今回もずいぶん予定より遅れてしまったが、なんとか Marilynne Robinson の "Lila"(2014)を読了。"Gilead"(2004)に始まり、おそらく "Jack"(2000)で最後と思われるギリアド四部作の第三作である。刊行年に全米批評家協会賞を受賞。また全米図書賞最終候補作およびブッカー賞一次候補作でもあった。レビューとあわせ、ほかの三作も紹介しておこう。 

Lila

Lila

 

 [☆☆☆★] ひとはなぜ孤独なのか。なぜ絶望し、思い悩むのか。もし神が存在するのなら、神はどうして人間に孤独と絶望、苦悩を経験させるのか。本書の根底にあるのはそうした宗教的、哲学的な難問である。これを発するのが、幼女時代から悲惨な生活を送ってきたライラ。答えるのは、アイオワ州の架空の町ギリアドの老牧師ジョン。ホームレスだったライラがジョンと出会うまでの体験を回想するうち、自然に芽ばえた素朴な疑問をジョンにぶつけると、とうに妻子をうしない独身のジョンは真摯にむきあい誠実に答えようとする。もちろん正解のない問題であり、両者の問答は堂々めぐりの感がなきにしもあらず。これに比例して物語もなかなか進まない。ライラの過去と現在が彼女の意識のなかで頻繁に交錯し、何度か同じエピソードがくりかえされるうちに、その苦難に満ちた数奇な人生が次第に浮かびがってくる。孤児のライラと、母親がわりの女ドールとのふれあいが読みどころ。上の難題に完全な答えは出てこないものの、人間の受難にたいして神の恩寵と、親子や夫婦などの家族愛、隣人愛が対比されていることは明らかである。読者の立場によって胸を打たれる場面も異なるのでは、と想像する佳作である。

"Gilead"(2004 ☆☆☆☆) 

"Home"(2008 ☆☆☆★★★) 

"Jack"(2020 未読) 

Jack: An Oprah’s Book Club Pick

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