ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Marilynne Robinson の “Lila”(1)とギリアド四部作

 相変わらず体調がパッとせず、今回もずいぶん予定より遅れてしまったが、なんとか Marilynne Robinson の "Lila"(2014)を読了。"Gilead"(2004)に始まり、おそらく "Jack"(2020)で最後と思われるギリアド四部作の第三作である。刊行年に全米批評家協会賞を受賞。また全米図書賞最終候補作およびブッカー賞一次候補作でもあった。レビューとあわせ、ほかの三作も紹介しておこう。 

Lila

Lila

 

[☆☆☆★] ひとはなぜ孤独なのか。なぜ絶望し、思い悩むのか。もし神が存在するのなら、神はどうして人間に孤独と絶望、苦悩を経験させるのか。本書の根底にあるのはそうした宗教的、哲学的な難問である。これを発するのが、幼女時代から悲惨な生活を送ってきたライラ。答えるのは、アイオワ州の架空の町ギリアドの老牧師ジョン。ホームレスだったライラがジョンと出会うまでの体験を回想するうち、自然に芽ばえた素朴な疑問をジョンにぶつける。とうに妻子をうしない独身のジョンは、真摯にむきあい誠実に答えようとする。もちろん正解のない問題であり、両者の問答は堂々めぐりの感がなきにしもあらず。これに比例して物語もなかなか進まない。ライラの過去と現在が彼女の意識のなかで頻繁に交錯し、なんどか同じエピソードがくりかえされるうちに、その苦難に満ちた数奇な人生がしだいに浮かびがってくる。孤児のライラと、母親がわりの女ドールとのふれあいが読みどころで、上の難題に完全な答えは出てこないものの、人間の受難にたいして神の恩寵と、親子や夫婦などの家族愛、隣人愛が対比されていることは明らかだ。読者の立場によって胸を打たれる場面も異なるのでは、と想像する佳作である。

"Gilead"(2004 ☆☆☆☆) 

"Home"(2008 ☆☆☆★★★) 

"Jack"(2020 未読) 

Jack: An Oprah’s Book Club Pick

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