Margaret Drabble の "A Summer Bird-Cage" を読了。題名に summer のついた未読の本はまだ何冊か手元にあるが、本書でとりあえず今年の「夏シリーズ」はおしまい。

- 作者: Margaret Drabble
- 出版社/メーカー: Penguin
- 発売日: 1973/04/26
- メディア: ペーパーバック
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…恥ずかしながら、マーガレット・ドラブルの小説を読むのはこれが初めて。煎じつめれば「女の長いおしゃべり」につきあったような感じで、作中人物の生き方に大きな感動を覚えたり、何か人生の真実について深く考えさせられたりするような作品ではない。
が、なにしろキャラクターの造型が巧妙で、波瀾万丈の展開が売り物の現代小説と較べると、ほとんど性格と人物関係の描写だけで読ませる本書は、英国小説の伝統を踏まえた1963年の旧作なのにかえって新鮮に感じられるほどだ。
本書における性格描写には情景描写も含まれる。典型的な例を一つあげれば、妹が姉のベッドルームに入り、そこで目にした衣類や家具などを細かく観察するうちに姉の心理変化が示される場面。こういう細部を丹念に仕上げているからこそ、全体としても「女の長いおしゃべり」が単なる無駄口に終わっていないのである。
テーマとしては、結婚と女の社会的自立という項目を立てることができるかもしれない。が、「結婚と恋愛のはざまで揺れ動く女性の生き方が示され」ていると言っても、だから何なんだとも思う。つまり本書は「たわいもない小説だ」。「しかし面白い」。その面白さを生みだす話芸としてのおしゃべりを楽しむ。そういう小説の楽しみ方があってもいいのではないだろうか。