ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Evelyn Waugh の "Decline and Fall"

 06年に続いて05年に読んだ本のベスト3を選ぼうと思ったが、ぼくがリアルタイムで英米現代文学を追いかけるようになったのはこの2、3年のことで、05年はまだ旧作が中心だった。たとえばイーヴリン・ウォーなども一例で、以下は、「奇想と常識と」と題してアマゾンに投稿し、その後削除したレビュー。

[☆☆☆☆] ウォーの処女長編。ブラック気味というか、ほとんど狂気と紙一重のユーモアが全篇にあふれていて、よくまあヘンテコな話を思いついたものだと、つくづく感心してしまった。しかも、アハハと笑わされているうちに、待てよ、このユーモアの裏には、じつは上流社会にたいする鋭い批判精神があるのではと思わせるフシもあって、デビュー当時からウォーは、ただ者ではなかったことがわかる。つまり、彼の「奇想」は、すこぶる健全な常識から生まれたものではあるまいか。その小説の傾向はしばしば「おふざけ」と「まじめ」に分類されるが、両者は本質的に同じひとつの精神から発している。とそんな感想をいだかせる作品だった。むろん世評どおりの傑作である。

 …ウォーはほかにも何冊か読んだが、レビューを書いたのはこれだけ。"Sword of Honour" 3部作が未読なので、まだウォーの全貌をつかんだとは思っていない。がとにかく、大変な鬼才であることだけはたしかだ。彼のようなユーモアと鋭い知性を兼ねそなえた作家といえば、現代では誰なのだろうか。