ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Marilynne Robinson の "Home"(2)

 読了してみれば雑感(1)の経過報告と同じで、今年の全米書評家(批評家)協会賞の候補作としては、ぼくが読んだものの中では3番目の出来。Marilynne Robinson の前作 "Gilead" と較べても若干落ちる。
 "Gilead" の場合、本書と違って最初から何も伏せることなく、死期の迫った老牧師が幼い息子に宛てた手紙に自分の思いを書きつづる。見方によっては本書以上に山場が少ないとさえ言えるが、息子や妻に示す愛情と、死を間近にひかえて揺れ動く心境がストレートに伝わってきて胸を打つ。いわば単純明快な感動を与えることで成功しているわけだ。http://d.hatena.ne.jp/sakihidemi/20080224
 その点、本書は最後に「隠し球」があって、なるほど、そういうことだったのか!と大いに盛り上がる一方、途中の展開が弱い。家出した息子のことで老牧師が傷つき、実らなかった結婚のことで娘が苦しみ、放蕩息子も過去を気に病み、また新たに女のことで悩んでいる。そういう大枠は当初からあっさり読めるのだが、「山場らしい山場が少なく、一本調子なのが難点」。
 …と思ったら、「結末で衝撃の事実がひとつ待ってい」た。これにより感動が深まり、読後感はけっこういい。ただ、勘のいい読者なら、ある程度察しがついた内容ではないか、という気もする。それゆえ、ボケ+お疲れモードのぼくは「読みの甘さを反省している」わけだ。
 余談だが、本書も昨年の "The Road Home" も一昨年の "Half of a Yellow Sun" も、みんなほかのメジャーな文学賞の落選作。オレンジ賞は女流作家のための落ち穂拾い用か、と皮肉りたくなる。まあ、ひとつの作品が各賞を総ナメにするより、こんな秀作もあるよと紹介されたほうが、いろんな本を読む機会が増えてありがたいけれど…。