ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Beryl Bainbridge の “The Dressmaker”(1)

 1973年のブッカー賞候補作、Beryl Bainbridge の "The Dressmaker" を読了。さっそくいつものようにレビューを書いておこう。

[☆☆☆★★★] 衝撃の結末に愕然となり、読みはじめたときから心に引っかかっていた疑問を解消すべく、冒頭の第0章を再読したところ二度びっくり。なるほど、そういうことだったのか! これはきわめて巧妙に仕組まれた一種のミステリである。そもそも、終幕までミステリであることにまったく気がつかなかった。第二次大戦中のリヴァプール。若い娘リタがアメリカ兵と出会い恋をする。それを見守るのは、ドレスの仕立てをしながら、リタを母親代わりに育ててきた伯母のネリーと、その妹で、早くに夫を亡くしたがいまなお色気たっぷりのマーゴ。そんな人物関係がしだいに見えてきたところで、これはてっきり、ジェーン・オースティンあたりを鼻祖とする家庭小説だろうと思った。なるほど丹念な人物造形、鮮やかな場面や視点の変化、当意即妙の会話など技法的には秀逸。しかしながらリタの恋をはじめ、描かれる事件はしょせんコップのなかの嵐にすぎないのではないか。とそこへ最後、劇的な展開が待っていた。そのサスペンス・タッチはヒッチコックばりで、思わず息をのんでしまう。それにしても、みごとにダマされた。まさにウェルメイドとしかいいようのない一品である。