今年のアレックス賞受賞作のひとつ、Ernest Cline の "Ready Player One" をやっと読みおえた。さっそくいつものようにレビューを書いておこう。(追記:本書は2018年、スティーヴン・スピルバーグ監督により映画化され、日本でも『レディ・プレイヤー1』として公開されました)。
[☆☆☆★★] ゲームファンにとっては垂涎の的と思われる完全無欠の壮大なSFゲーム小説。2044年、いまや人間は醜悪で危機的な現実から逃れ、文明のあらゆる領域にわたって構築された仮想現実の社会に住んでいる。そのソフトを開発した億万長者の遺言で、仮想現実世界のどこかに隠された三つの鍵で三つの扉を最初にあけ、「卵」を手に入れた者が全財産を相続することに。主人公のウェイド少年がアバターとなり難敵と戦うシーンはテレビゲームかつCG映画そのもので、けっこう手に汗握る。1980年代のゲームやテレビ番組、映画などを忠実に再現した世界が主な舞台とあって、読者によってはレトロ感覚に酔いしれることだろう。ウルトラマンやガンダム、メカゴジラなどが登場して壮絶なバトルをくりひろげるなど漫画的なおもしろさに充ち満ちている。が、ウェイド少年が仲間と結束し、利益の独占をもくろむ巨悪の企業と戦うという展開どおり、これは要するに勧善懲悪のゲームを小説化したものだ。そう割り切って読めば、細部へのマニアックなこだわりにいたく感心する。童心にかえって楽しむべき、「オタク度」が試される作品である。