今年のアレックス賞受賞作のひとつ、Ernest Cline の "Ready Player One" をやっと読みおえた。さっそくいつものようにレビューを書いておこう。
[☆☆☆★★] ゲームファンにとっては垂涎の的と思われる完全無欠の壮大なSFゲーム小説。
2044年、今や人間は醜悪で危機的な現実から逃れ、文明のあらゆる領域にわたって構築された仮想現実の社会に住んでいる。そのソフトを開発した億万長者の遺言で、仮想現実世界のどこかに隠された3つの鍵で3つの扉を最初にあけ、「卵」を手に入れた者が全財産を相続することに。主人公のウェイド少年が
アバターとなり難敵と戦うシーンは、テレビゲームかつCG映画そのもので、けっこう手に汗握る。1980年代のゲームやテレビ番組、映画などを忠実に再現した世界がおもな舞台で、読者によってはレトロ感覚に酔いしれることだろう。
ウルトラマンや
ガンダム、
メカゴジラなどが登場して壮絶なバトルをくりひろげるなど漫画的なおもしろさに充ち満ちている。が、ウェイド少年が仲間と結束し、利益の独占をもくろむ巨悪の企業と戦うという展開どおり、これは要するに勧善懲悪のゲームを小説化したものだ。そう割り切って読めば、細部へのマニアックなこだわりにいたく感心する。童心に返って楽しむべき、「オタク度」が試される作品である。英語はコンピュータやゲームの専門用語が頻出するなど語彙的にはむずかしめだが、おおよそ理解するだけで十分楽しめる。