ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Tupelo Hassman の “Girlchild” (1)

 今年のアレックス賞受賞作のひとつ、Tupelo Hassman の "Girlchild" を読了。さっそくレビューを書いておこう。

[☆☆☆★] 親子の絆、家族愛、そして通過儀礼をテーマにすえた文学的なコラージュ。ネヴァダ州の田舎町に住む母子家庭の少女ローリーの幼少期からの生活を中心に、母親の娘時代からの人生、祖母の人生なども少しずつ紹介される。ローリーの日記ふうの記述はもちろん(なかには黒塗りの箇所も)、なにかと問題を起こす母親と面接したソーシャル・ワーカーの報告書や、ローリーの身を案じる祖母の手紙など、いろいろな断片的スケッチが連続。孤独なローリーと数少ない友人たちとのふれあいや、母が娘を、娘が母を思うくだりに心を打たれる一方、ワサビのきいたユーモアに苦笑。傷ついた純真なローリーが家族の愛を支えにおとなへと成長する定石どおりの展開だが、それをコラージュ化したところがミソ。時々の点景を楽しむべき作品である。