ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Dave Eggers の “A Hologram for the King” (1)

 Dave Eggers の "A Hologram for the King" を読了。昨年の全米図書賞最終候補作で、ニューヨーク・タイムズ紙や、パブリシャーズ・ウィークリー誌、アメリカおよびカナダのアマゾンの年間ベスト、Michiko Kakutani の Favorite Books にも選ばれている。さらにまた、毎年恒例の PPrize. Com による予想では、今年のピューリッツァー賞「候補作」にも擬せられている。さっそくレビューを書いておこう。

A Hologram for the King

A Hologram for the King

[☆☆☆★★★] 「俺は誰だ」「私はなぜここにいるのか」――だれでも一度は駆られる疑問かもしれないが、本書はこの定番の問題をきわめて現代的に、かつコミカルに扱った秀作である。昔は羽振りがよかったものの、いまや自己破産寸前の経営コンサルタントが起死回生をかけ、サウジ国王にホログラムによる会議システムを採用してもらおうと、彼の地で建設中の大都市に乗り込む。が、国王はいっこうに姿を見せず、プレゼンテーションは延期につぐ延期。そもそも都市建設そのものが進んでいない。このカフカ的状況が、こっけいなエピソードや爆笑物のジョークもまじえて描かれると同時に、主人公の失敗したビジネスや破綻した結婚生活の回想、健康への不安、一人娘への思いなどがフラッシュバック。そこから孤独な現代人の実存の不安がうかびあがる。この笑いとシリアスな問題の配合が絶妙で、どんどん先を読みたくなる。濡れ場もあって楽しんでいるうちに、ふと流れこんでくる人生の悲哀にしんみり。虚無の深淵に頭をかかえこむ。人生は不条理で、かつ、おもしろおかしい。おかしいから不条理なのか、不条理だからおかしいのか。そんなラチもないことを考えてしまった。英語は標準的で読みやすい。