かなり旧聞に属するが、去る13日、今年の全米批評家協会賞(対象は昨年の作品)が発表され、Chimamanda Ngozi Adichie の "Americanah" [☆☆☆☆] が栄冠に輝いた。
ぼくは去年の7月だったか、あちらの下馬評を参考に、同書がブッカー賞のロングリストにノミネートされるのではないかと期待して読み、もののみごとに空振り。しかしながら、賞レースとは関係なく、いい作品に出会えたことが純粋にうれしかった。
その後、同賞のショートリストにのこった作品も何冊か読んでみたが、ぼくの評価ではどれも Adichie 作品より下。結局、受賞作にも興味がわかず、また、全米図書賞の最終候補作をながめても食指が動かなかった。
そうこうするうちに、今年の全米批評家協会賞の最終候補作が発表。ぼくは "Americanah" 以外に、Ruth Ozeki の "A Tale for the Time Being" [☆☆☆★★★] も読んでいたが、両作のあいだには、★1つ以上の差があるかもしれない。今ふりかえると、後者の「一面的、図式的な人間観・歴史観」にはゲンナリさせられる。おなじ日系作家の作品なら、点数評価では同点だが、ぼくは Julie Otsuka の "The Buddha in the Attic" [☆☆☆★★★] のほうが好きだ。
一方、"Americanah" はといえば、Adichie の旧作 "Half of a Yellow Sun" [☆☆☆☆★] には一歩譲るものの、人間のとらえ方という点で、さすが Adichie と感心させられるものがある。ほかの候補作は未読だが、全米批評家協会賞は今年も大いに満足できる受賞結果だったのではないか。以下、去年書いたレビューを再録しておこう。