ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Melanie Dobson の “Chateau of Secrets”(1)

 きょうも昼過ぎまで〈自宅残業〉。しかし午後はがんばって、Melanie Dobson の "Chateau of Secrets"(2014)をようやく読了。さっそくレビューを書いておこう。

[☆☆☆★★★] ああ、おもしろかった! けっして内容は深くないが、終始一貫、大いに楽しめる上質の文芸エンタテインメントである。まず第二次大戦中、ドイツ軍に占領されたノルマンディーの貴族の館で、父の死後、館主となった若い娘ジゼルがドイツ兵相手に大奮戦。レジスタンスの闘士を支援するなどスリルとサスペンスに満ちた展開だ。一方、時は流れて70年後、アメリカに移住したジゼルはいまや寝たきりの生活。孫娘のクロウに戦争体験について尋ねられ、謎のことばを口走る。その昔いったいどんな事件が起きたのか。おりしも上の館をロケ地にドキュメンタリー映画製作の話がもち上がり、クロウは調査を開始する。現今ふたつの物語とも短い章から成り、それぞれ山場に差しかかり、サスペンスが高まったところで一気に時代が飛ぶ。現代篇は謎また謎の展開。その答えが過去篇で少しずつ明らかにされ、登場人物よりも先に読者のほうが真相を知る結果、いやおうなく物語の渦中に引きこまれる。都合のいい偶然が重なり、ふたつの流れがひとつに合流するのは定石どおりだが、巧妙なカット割りと、起伏に富んだストーリーのおかげでまったく気にならない。なお、作者によると本書は、ドイツ軍のなかにユダヤ系兵士が存在したという意外な史実にもとづくものだそうだ。