ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

ヴェルレーヌの「秋の歌」

 いやはや、地獄の夏だった。今年は超多忙の夏になりそうだと、ある程度覚悟はしていたものの、まさかこれほどとは思わなかった。
 おかげで帰省も断念。7月の20日ごろだったか、それまで快調に読み進んでいた Naomi Alderman の "The Power" も完全にストップ。ブログを更新するどころではなかった。ブッカー賞ロングリストの記事は、選ばれそうな作品を中心に、あらかじめ書いておいた原稿をコピペしただけだ。
 読書以外の趣味も夏休み。ソフトで見た映画は「バルタザールどこへ行く」、「緋牡丹博徒」(第1作)くらい。どちらも、とてもよかった。音楽は、BGMに「ブランデンブルク」か中島みゆきを流していただけ。
 しかしここ数日、やっと落ち着いてきた。伸び放題だった庭の雑草を抜き、老後に読みそうもない本を少しだけ処分。きょうは朝のうちに仕事のノルマを達成したので、これからメモを頼りに粗筋を思い出しながら、"The Power" の続きを読みはじめる予定だ。
 ところで、月が変わり、きょうは曇りのせいか、ぼくの住む高台の住宅地では早くも秋の気配がただよっている。そこでふと、ヴェルレーヌの「秋の歌」を思い出した。
 いま wiki で調べると、有名な上田敏訳のほか、堀口大学、窪田般彌の訳も載っている。正確さはわからないが、音の響きの点では、やはり上田訳がいちばんいいように思える。
 いつぞや見つけた誰かの英訳 "Autumn Song" はこうなっている。

A long sobbing
Of the violin
Did not stir
But did pain
My vein
In languor.

I was broke
To choke
At the chime.
I reminisced
And missed
My old time.

Deported away
On a windy day,
Here and there
I strayed in grief
Like a dead leaf
Blown in the air.

 どれほど原詩に忠実な訳かは怪しいが、ぼくはフランス語はさっぱりなので、この英訳にもとづいた昔の拙訳を紹介しておこう。

むせび泣く
ヴィオロン
かき立てず
いたぶりぬ
わが心
もの憂さの

くず折れぬ
息つけず
鐘の音に
思ひ出し
なつかしむ
過ぎし日を

吹きやられ
風の日に
ここかしこ
悲しみの
枯れ葉かな
宙に舞ふ

(写真は、宇和島市立宇和津小学校の裏を流れる小川。昔は未整備で大きな石がゴロゴロ。「ウナギがおるんぞ」と、去る2月に他界した五歳年上のいとこに教えられたが、実際に捕まえたことはなかった)