ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Naomi Alderman の “The Power”

 ずいぶん前に今年のベイリーズ賞(Baileys Women's Prize for Fiction:旧オレンジ賞)受賞作、Naomi Alderman の "The Power"(2016)を読み終えていたのだが、その後なかなかレビューを書く時間が取れなかった。おかげで、かなり印象がぼやけてしまった。
 とはいえ、読了直後よりも客観的に作品を振り返ることはできるかもしれない。なんとか頑張ってレビューをでっち上げてみよう。

The Power: WINNER OF THE 2017 BAILEYS WOMEN'S PRIZE FOR FICTION (Tpb Om)

The Power: WINNER OF THE 2017 BAILEYS WOMEN'S PRIZE FOR FICTION (Tpb Om)

[☆☆☆★★] 近未来社会を舞台にしたSF仕立ての男女抗争劇。アメリカやアフリカ、中東など世界各地で突然、超能力をもった10代の少女が現われ、その電撃的なパワーでワルい男どもを撃退。やがて成人女性もスーパーウーマンとなり、暴徒化した猛女軍団と治安部隊との衝突などを通じて次第に男性優位の社会が根底から揺らぎはじめる。複数の人物が交代で主役をつとめ、それぞれ緊迫した場面を語り継ぐスピーディーな展開で、終盤近くまで物語そのものの迫力に圧倒される。女性による逆差別、男性テロリストの襲撃に始まる反乱とその鎮圧など、ますますエスカレートする事態と平行して、各人物の個人的な対立抗争も劇的に描かれ、サービス満点。大いに楽しめるのだが、当初からイマイチ物足りない。いまなぜウーマンリブ小説なのか?という説得力に欠けるからだ。社会的には依然、男女の不平等を是正する意味があるとしても、それを文学の世界で訴えるとなると、たとえば、人間はそもそも平等なのかといった根本問題にまで思索を深めなければ薄味になってしまう。また本書の場合、泥沼化した抗争劇の意味、つまり、理想から虐殺が生まれるという人間の悲劇性を暗示しただけで終わる点もいただけない。作者としては、定石どおりの流れを避けたかったのかもしれないが、それに代わる強烈なテーマが示されているわけでもない。文学的な味付けが中途半端なら、娯楽路線のほうも尻すぼみ。話をおもしろくしすぎて収拾がつかなくなった作品と言えそうだ。