ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“We” 雑感

 パンデミック。恐ろしい響きだ。いまやのんびり小説を読んでいられないような気もするが、とりあえず枕元には『舟を編む』。テレビ放映された映画を観たきり、原作のほうは長らく積ん読だった。バタンキューとなる夜もあるけれど、かなり面白い。
 "The Mirror & the Light"(2020)のほうは結局、アマゾンUKでイギリス版を注文した。日本経由で頼んでもよかったのだが、いきなり超大作が手元に届くと、慢性遅読症のぼくは本を見ただけでメゲてしまう。
 それにこのところ、和書にくらべ洋書のほうは当たりがわるい。"Reproduction"(2019 ☆☆☆)のあと、これまた積ん読中だった Alfred Döblin の "Berlin Alexanderplatz"(1929)に取りかかったのだけど、最初の50ページくらいで挫折してしまった。
 えらくむずかしいので、ついアマゾンUKのレビューを拾い読みしたところ、… it was difficult to read as a result of the montage. I persisted and read a little every day and finally got the gist of it. という評を発見。なるほど、ネイティブも悪戦苦闘するくらいなんだ、とホッとしたが、このまま read a little every day というわけにも行かない、とあきらめた。
 同書はいずれまた再挑戦するとして、時節柄、Camus の "The Plague"(1947)をパラパラめくってみた。英訳は未読だったからだが、邦訳の売れ行きが急増というニュースを聞いて意欲喪失。アマノジャクのぼくは、ざるが傾いて、なかの小豆がざっと流れだすような現象が起きたとき、ちょっと待てよ、と考えることにしている。こうした日本人の〈ざる小豆現象〉をいち早く指摘した女流作家がいるのだけど、もちろんご存じでしょうね。
 そんなこんなで、結局きのうから Yevgeny Zamyatin の "We"(1920)を読みはじめた。恥ずかしながら未読でした。
 まず、どうでもいいかもしれないことから。Penguin 版には We was written in 1920. としるされているが、『新潮世界文学辞典』では英語版1924年刊となっている。つまりロシア語の原書は1920年刊ということなんだろうけど、早川書房版『SFハンドブック』によると1921年刊。いちおう本ブログでは1920年説を採用しておきます。
 肝心の中身は? もちろん、面白い。☆☆☆★★★は堅いだろう。周知のとおり全体主義ディストピアを描いたものだが、〈女は魔物〉という定番の要素もありそう。どうなるんでしょうか。

(写真は、石川県羽咋駅前の風景。先月撮影。羽咋は〈UFOのまち〉なのだそうだ。和倉温泉で一泊したあと、七尾線羽咋に向かい、羽咋からバスで富来(とぎ)、富来からタクシーでヤセの断崖へ。自家用車かレンタカーを利用しないかぎり、東京から現地に行くにはこの行程しかない。ちなみに、帰りは現地付近から富来までコミュニティ・バスを利用)

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