ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

"The Red and the Black" 雑感(2)

 ざっと40年ぶりに、今度は英訳で取りかかった本書だが、ぼくにしては珍しく大筋を憶えていた。主人公はジュリアン・ソレルという美青年で、彼はまずレナール夫人という美しい女性に恋をする。次に、貴族の娘でこれまた美女のマチルドと恋仲になる。それから『赤と黒』の赤は軍人、黒は聖職者を表わし、当時はそのどちらかになるのが出世の道だった。(いま念のため、『新潮世界文学辞典』(これ、便利です!)を調べると、それぞれジュリヤン、レーナルという表記になっている)。
 と、こんな予備知識でもほんとうは余計なくらいなので、当初は面白く読めるかなと気がかりだったが、読み進むうちに、若いころ2回読み、2回ともかなり昂奮したときの記憶が少しずつよみがえってきた。初読はたしか中2のころだから、当時としては、ずいぶんマセガキだったのではないだろうか。
 ともあれ、昔の昂奮は思い出したものの、今回はさすがに無我夢中というわけには行かなかった。理由はいくつかある。まず第一に、ぼく自身が年を取ってしまい、惚れたハレたのたぐいに感度が鈍くなっていること。きのう引用した Julien Sorel と Mme de Renal の出会いのシーンなど、「純情っていいな」と思いつつ、そう思うこと自体がもうオジイチャンの感想である。やっぱり年は取りたくないものだ。
 それから、ボチボチ読んだのもよくない。とくに、メモを取りながら、というのが大いによろしくない。ぼくは読みながらどんどん忘れるほうなので、メモがあると助かることが多いのだが、それでもその結果、おのずと分析的な読み方になってしまう。恋愛小説なんて分析するものじゃありません。
 さてその分析だが、と大げさに言うほどの内容でもないのだけれど、メモを取っているうちにふと気づいたことがある。それは、"The Red and the Black" という題名に代表されるように、本書が「対比のオンパレード」とでも呼ぶべき数多くの対照的な要素から成り立っている点である。
……長くなりそうだ。中途半端だが、そろそろ眠くなってきたし、きょうはもうおしまいにしよう。
(写真は宇和島市龍光院四国八十八箇所霊場第四十番札所である)。