ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Andrei Makine の “Brief Loves That Live Forever” (1)

 2015年の国際ダブリン文学賞(International Dublin Literary Award)最終候補作、Andrei Makine の "Brief Loves That Live Forever" を読了。フランス語からの英訳作品である。さっそくレビューを書いておこう。

Brief Loves That Live Forever

Brief Loves That Live Forever

[☆☆☆★★] 人は永遠の幸福を求めようとするが、実際に永遠に続くのは一瞬の愛の光景かもしれない。本書はそんな情景を拾い集めた作品である。というと何やら感傷的な思い出話に聞こえるが、さにあらず。主人公はロシア生まれでフランスに住む老人。少年時代から脳裏に焼きついている光景は、個人的な体験であると同時に、そのまま激動のロシア現代史となっている。革命、世界大戦、圧政と反体制運動、ソ連崩壊、大国の復活。歴史の大きな流れを象徴するかのように、生涯忘れえぬ出来事が起こる。大事件ではない。あの日あそこで目にした女、語り合った娘、淡い恋、切ない思い。現象的には茶飯事であり、それが一生の思い出となることもまた珍しくない。ところが、つかのまの愛が、その記憶が「あらゆる政治信条を超えて」永遠に生きつづける、と老人は述懐する。個人的感情を圧殺する歴史の中から生まれた悲痛な叫びである。
(写真は、先月末に急死した愛犬タチ)