ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Patrick Modiano の “Paris Nocturne”(2)

 先月の中ごろ、ガーディアン紙の連載記事 'Tips, links and suggestions: what are you reading this week?' をながめていたら、背表紙の写真だけだったが、なんとなく気になる本が載っていた。"Paris Nocturne"。蠱惑的なタイトルである。
 さっそくネットで検索。カバー写真をひと目見て迷わず注文した。このタイトルでこのカバーなら、読者が飛びつくこと間違いなし、という出版社の読みどおりのジャケ買いである。フランス語の原題は "Accident nocturne"。英訳タイトルのほうがずっといい。
 その後 Patrick Modiano について調べてみると、いやはや、まことにお恥ずかしい。なんと2014年のノーベル文学賞受賞作家ではないか。しかも、フランス文学のファンからすれば、今ここでこんな記事を書いていること自体、ナンセンス。wiki によると、「フランスでは "Modianesque"(モディアノ中毒)という言葉があるほど人気が高い」作家なのだそうだ。
 それより何より、世間一般のノーベル賞の認知度は、ブッカー賞や全米図書賞など足元にも及ばないほど、ずば抜けて高い。だからフランス文学ファンならずとも、一昨年 Modiano が受賞したことを知り、もし初耳ならどんな作家だろうと興味をもった人たちもきっと多いはず。え、ウッソー、あんた知らなかったの、と呆れた声が聞こえてきそうだ。
 仕方ない。当時ぼくは諸般の事情で本ブログを休止中。Modiano の Mo の字も知りませんでした。
 さらに wiki によると、ゴンクール賞作家がノーベル賞を受賞したのは Modiano が初めてとのこと。ゴンクール賞の受賞作は "Rue des boutiques obscures" (1978) で、英訳タイトルは "Missing Person"。なんとあの『冬のソナタ』の下地になった作品だという。邦題は『暗いブティック通り』。
 また Modiano は、ルイ・マル監督作品『ルシアンの青春』の原作者でもあるらしい。へえ、ちっとも知りませんでした。えらく暗い映画だったことだけは憶えている。でも、ルイ・マルといえば『恋人たち』や『死刑台のエレベーター』、『鬼火』のほうが強烈でしたね。
 というわけで、きょうは基礎知識だけ、みなさんに追いつきました。
(写真は、宇和島市三島神社の鎮守の森)