ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

今年のブッカー国際賞ショートリスト予想

 そろそろ Orhan Pamuk の "The Museum of Innocence" の落ち穂拾いをしなければ、と思いつつ〈自宅残業〉に追われている。その合間にボチボチ読んでいるのが Annie Ernaux(フランス) の "The Years"(原作2008、英訳2017)。ご存じのとおり、今年のブッカー国際賞候補作である。 

The Years (English Edition)

The Years (English Edition)

 

 本書のことを知ったのは3月中旬で、そのころ現地ファンのあいだでは1番人気だった。だからショートリストの発表(ロンドン時間で4月9日)までに、せめてこれだけでも読んでおこう、と思って注文したのだが、その1週間後に急転直下、元の職場へ今月からの復帰が決定。以後、その準備に忙殺され、ただでさえ遅読症なのに、がくんと読むスピードが落ち、本書に取りかかるのも大幅にずれ込んでしまった。
 いま改めて現地ファンの声を拾ってみると、"The Years" は3番人気に後退。最右翼に挙げられているのは、Sara Stridsberg(スウェーデン)の "The Faculty of Dreams"(英訳2019)。これは注文しました。 

The Faculty of Dreams: Longlisted for the Man Booker International Prize 2019 (English Edition)

The Faculty of Dreams: Longlisted for the Man Booker International Prize 2019 (English Edition)

 

  ついで、Juan Gabriel Vasquez(コロンビア)の "The Shape of the Ruins"(英訳2018)。 

The Shape of the Ruins: A Novel (English Edition)

The Shape of the Ruins: A Novel (English Edition)

 

 Vasquez といえば、2014年の国際IMPACダブリン文学賞受賞作、"The Sound of Things Falling"(原作2011 ☆☆☆★★★)で有名な作家である。 

 以上、1. "The Faculty of Dreams" 2. "The Shape of the Ruins" 3. "The Years" が下馬評の高い作品のようだ。看板に偽りありで、「ショートリスト予想」といっても、現地ファンのそれを紹介しただけにすぎない。
 "The Years" に戻ると、いまのところ、☆☆☆★くらい。ノルマンディーの田舎町 Yvetot(イヴト)が舞台で、時代は第二次大戦直後に始まり、いまは1950年代なかば、アルジェリア独立戦争のまっ最中。主人公はまだ無名の若い娘のようだが、ほんとうにヒロインかどうかは不明。というのも、ストーリーは皆無にひとしく、人々の生活や情景、会話の断片などがスケッチふうに、あるいは脈絡のない記録映画のように描かれるだけ。おなじ娘がときどき顔を出すので、もしかしたら彼女が主役なのかなと推測している。
 大戦に勝利し解放された当時の記憶はとうに薄れ、娘がフランスのセンター試験であるバカロレアに合格した喜びも消えうせようとしているなど、年月とともに All the images will disappear.(p.7)というのがテーマかもしれない。が、まだ序盤なのでよく分からない。今後の盛り上がりを期待したい。