ぼくは洋書を読むとき、いつもメモをとることにしている。いわゆる5W1Hを基本に、そのほか気のついたことはなんでも書き留める。そうしないとすぐに忘れてしまうからだ。
メモ用紙はB5の裏紙(表は宮仕え時代に使用)を4つ折りにしたもの。これに3色のボールペンで(重要と思った事柄は赤)、小さい字で書き込んでいく。なるべく少ない枚数で済ませたいからだ。前回の "The Orenda" は大作だったが、1枚でこと足りた。
ところが、この "Homage to Catalonia" は "The Orenda" の半分にも満たないのに、中盤を過ぎたところでもう8枚目。ひょっとしたら新記録かもしれない。
学生時代に邦訳で読んだときは傍線を引いただけで、メモはとらなかった。38年前に途中まで読んだ Penguin 版も、傍線が下線に変わっただけ。それを最初から上の要領で読み直している。あやふやながら昔の記憶をまったく消してしまうことはできないものの、極力初見のつもりで読んでいる。
きょうはその「第一印象」を少しだけ簡単にまとめておこう。詳しく書きだすと切りがない。
1.1936年12月から Orwell が実際に体験したスペイン内戦の記録だが、21世紀のコロナの時代にもじゅうぶん当てはまる内容をふくんでいる。とくに全体主義のプロパガンダや、マスコミによる情報操作など。
2.森鴎外のいう「二本足の学者」をもじっていえば、Orwell は「二本足の作家」。理想と現実双方に立脚している。理想に共感して参戦、現実を知ったことなど。
3.上の言い換えでもあるが、Orwell はすぐれたバランス感覚の持ち主。バルセロナ内戦の原因は一方的なものではないという判断など。
4.非常に正直な作家。ナイーヴな理想主義をもっていたこと、政治情勢に無関心、無知であったことなどを告白。
5.非常に純粋。正義のため勇敢に戦う人びとに共感。自分も最前線で戦いたいという思いが強い。
6.正直で純粋であるがゆえに、ウソや欺瞞、不純なものに敏感。これが正確な現実観察、現実認識にもつながっている。
7.バランス感覚と現実認識の結果、論より証拠という実践的な判断、かつ柔軟な思考がしばしば見受けられる。
8.上の言い換えでもあるが、教条的、観念的な正義感の持ち主ではない。
9.以上のすべてについて知的昂奮が味わえるが、戦闘シーンなどの緊張感もすごい。
ほかにもまだあるが、きょうはこれまで。
(下は、きのう聴いていたCDのひとつ)