この夏以来の宿題だった Katherine Webb のベストセラー小説、"The Legacy" をやっと読みおえた。さっそくレビューを書いておこう。
[☆☆☆★★] 百年近い時を隔てた愛と憎しみ、秘密の物語。最後に明かされる真実はけっして意外ではないが、それでも爽やかな読後感が得られ、理屈ぬきに楽しめるヒストリカル・ロマンスである。ある女が赤ん坊を森のなかに置きざりにするプロローグからして蠱惑的。本篇ではまず、現代っ子のエリカが幼いころ、いとこの謎の失踪事件が起きたイギリス貴族の館を相続。ついで二十世紀初頭、ニューヨーク生まれのキャロラインがオクラホマの牧場主と結婚し異郷の地で悪戦苦闘。ふたつの物語が平行して進むうち、やがてキャロラインがエリカの曾祖母だったことがわかるなど、ジグソーパズルのピースがしだいに組みあわさっていく。一家に渦まく愛憎と秘密、事件にかかわった親子や夫婦、姉妹たちが心に負った深い傷。そうした「負の遺産」が起伏に富んだサスペンスフルな展開で語り継がれ、トラウマの超克へとなだれ込む。夏の日盛り、緑陰読書にもってこい、文芸エンタテインメントの佳篇である。