この夏以来の宿題だった Katherine Webb のベストセラー小説、"The Legacy" をやっと読みおえた。さっそくレビューを書いておこう。
The Legacy
- 作者: Katherine Webb
- 出版社/メーカー: Orion (an Imprint of The Orion Publishing Group Ltd )
- 発売日: 2010/06/24
- メディア: ペーパーバック
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[☆☆☆★★] 百年の時を隔てた愛と憎しみ、秘密の物語。最後に明かされる真実は決して意外なものではないが、それでも爽やかな読後感の得られる佳作で、理屈ぬきに
ヒストリカル・ロマンスの醍醐味を満喫できる。全体は二部構成で、20世紀初頭、
オクラホマの牧場主と結婚したニューヨーク生まれの女性が異郷の地で悪戦苦闘する過去編と、イギリスの片田舎にある古い屋敷を相続したひ孫の女性が曾祖母の秘密と、幼いころに起きた従兄の失踪事件を解き明かそうとする現代編が交互に進行。ある女が赤ん坊を置き去りにするショッキングなプロローグから物語の渦中に引きこまれ、2つの大きな流れが1つに交わるころにはすっかり虜になっている。愛憎や嫉妬など、男女のあいだに渦巻く情念から突発的な事件が起こり、親子や夫婦、姉妹たちの心に深い傷が生まれる。そのトラウマを引きずって生きる、あるいは超克しようとする女性の姿を長い歴史の中で描いた作品である。起伏に富んだプロット、手に汗握るというほどではないにしても適度のサスペンス、感情移入しやすい人物の造形など、ストーリー重視型の小説としてどの要素も合格点。たとえば夏の日盛り、木陰で読めば至福のひとときを過ごせるだろう。英語もごく標準的で読みやすい。