昨年のフランク・オコナー国際短編賞受賞作、Ron Rash の "Burning Bright" を読みおえた。さっそくレビューを書いておこう。
[☆☆☆★] 「さまざまな孤独」とでも副題をつけられそうな短編集。南北戦争、第二次大戦、そして現代と時代設定は多岐にわたり、主人公も老若男女いろいろだが、いずれも孤独な人間が織りなす物語という点で共通している。舞台はノースカロライナ州一帯の田舎町や農場、山間部。静かな自然環境のもと、配偶者や家族のいない、あるいは、家庭のなかで精神的に孤立した人間が孤独に耐えながら暮らしている。お定まりの哀感が流れるうち、彼らはやがてなんらかの事件をきっかけに激しい情熱や衝動にかられ、一気に緊張が高まる。ときには狂気や妄想、犯罪へとつながる爆発的な「孤独のエネルギー」が迫力満点。これが終始一貫、各物語の原動力となっている。ゆえに思わず引きこまれるが、そのわりに深い感動をおぼえる作品は少ない。ひとは孤独なものだ、というメッセージがほとんどだからだ。生後まもなく死亡した子どもへの思いがしみじみと伝わってくる第5話がマイ・ベスト。