ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Karen Thompson Walker の “The Age of Miracles” (1)

 米アマゾン上半期ベスト10小説のひとつ、Karen Thompson Walker の "The Age of Miracles" を読了。さっそくレビューを書いておこう。

The Age of Miracles: A Novel

The Age of Miracles: A Novel

The Age of Miracles

The Age of Miracles

[☆☆☆★★★] 最後の短い一文に胸をえぐられ、★をひとつおまけした。SF青春小説の佳作である。2020年ごろの夏、突然、1日の時間が少しずつ伸びはじめて重力も変化。やがて昼も夜も極端に長くなり、生態系は乱れ、緑の自然が消え、地球の磁場が崩れて太陽嵐が吹き荒れ、強い放射線が降りそそぐようになる。古典的な終末の世界だが、この破滅の進行状況をつぶさに物語るのが、ハリウッド近郊の小学校に通う女の子ジュリア。内気で孤独な彼女はいじめを受け、友だちにも見放されるが、やがてある男の子を好きになる。こちらも同じく古典的な設定で、終末テーマのSFとしても青春小説としても新味は少ない。ジュリアの両親をめぐるホームドラマしかり。が、彼女が天変地異に遭遇することによって本来平凡な通過儀礼が重みを増し、親しい隣人や優しい祖父、そして少年などへの思いを深めていくところがすばらしい。感傷を排して淡々と事実を述べつづけ、正確には回想しているだけに、最後の一文のように、定番ながら感動的なくだりもある。英語は平明でとても読みやすい。