ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Umberto Eco の “Baudolino”(2)

 Rebecca Makkai の "The Great Believers"(2018)をダラダラ読んでいる。ご存じのとおり、ニューヨーク・タイムズ紙が去年選んだベスト5小説のひとつだが、いまのところ、☆☆☆。ゲイとエイズ、そして家族愛を扱ったもので、暗いし、なかなか話が先へ進まない。
 おまけにぼく自身、四月から一年間だけ元の職場で働くことになり、もっか、その準備に追われている。〈自宅残業〉を余儀なくされる商売だからだ。といっても、もちろん残業代は出ない。一種の奉仕みたいなものですな。
 閑話休題。Umberto Eco を読んだのは本当に久しぶり。あの名作 "The Name of the Rose"(1980 ☆☆☆☆★★)以来、恥ずかしながら二冊目である。 

 このペイパーバック版をいつ、どういうきっかけで買ったのかも憶えていない。巻頭の紹介文によると、Eco はまだ存命中となっているから、大昔であることだけは確かだ。
 ともあれ長らく積ん読のままだったが、数年前、『完全版 密室ミステリの迷宮』というムック本をパラパラめくっていたところ、本書に関する言及を発見(p.12)。 

完全版 密室ミステリの迷宮 (洋泉社MOOK)

完全版 密室ミステリの迷宮 (洋泉社MOOK)

 

  へえ、これは密室ミステリなのか! が然、興味が湧き、なるべく早いうちに読もうと思っているうちに、いままでズレ込んでしまった。
 ぼくは学生時代、いや宮仕えの身となってからもずっとミステリ・ファンだった。冒険小説やスパイ小説に入れ込んだ時期もあるが、もともとは皆さんとおなじく、ルパンとホームズから入った。それから、市立図書館で手にした、あかね書房版・少年少女世界推理文学全集『赤い家の秘密・黄色いへやのなぞ』。中でも、「黄色」のほうを読んだときの衝撃はいまだに忘れられない。
 その後、角川文庫で同書の完訳版を読んだとき、またまた腰が抜けてしまった。それからもいろんな密室ミステリに出会ったが、いちばん驚いたのはやはり『黄色い部屋の謎』ですね。
 いまでもぼくの書棚には長編、短編集、傑作集とりまぜ、密室ミステリの原書が山積している。いつか純文学について行けなくなったら乗り換えようと、もっぱら古本を買い込んである。John Dickson Carr なんて、古本でないと入手できないものが多い。あ、少なくとも、ぼくがコレクトした時期はそうだった。
 というわけで、この "Baudolino"、どんな密室殺人が起きるのだろうと大いに期待しながら取りかかった。が、なかなか事件が起こらない。これ、ほんとにそうなの、と疑いはじめたころ、待ってました! で、そのトリックは?
 けっこう、よく出来た密室ミステリだと思います。もちろんネタを割るわけには行かないが、ある有名な密室トリックの変形バージョンですな。(この項つづく)