ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

2010-01-01から1ヶ月間の記事一覧

Colum McCann の "Let the Great World Spin" (2)

ぼくは原則的に同じ作家の作品を1年以内には読まないようにしているが、その理由は、いくら勘の鈍いぼくでも立て続けに読むと、さすがにその作家のパターンが見えてくるからだ。それよりは未読の作家にどんどん取り組み、旧知の作家でも久しぶりに読むほう…

Colum McCann の "Let the Great World Spin" (1)

昨年の全米図書賞(National Book Award)受賞作、Colum McCann の "Let the Great World Spin" をやっと読みおえた。さっそく、いつものようにレビューを書いておこう。Let the Great World Spin作者: Colum McCann出版社/メーカー: Bloomsbury Publishing …

"Let the Great World Spin" 雑感(2)

第3部の中ほどまで読み進み、ようやく全体像が見えてきた。核にあるのは、ニューヨークの今はなき世界貿易センターのツインタワーのあいだを綱渡りした男の話。どうも実話くさいなと思って読んでいたら写真が載っていた。そこでネットを検索すると、1974年…

"Let the Great World Spin" 雑感(1)

先週は珍しく職場で仕事に励んだせいか、家に帰るとぐったり。この日記に駄文を書くのが精一杯で、本はほとんど読めなかった。もう年も年だし、早いとこ宮仕えをやめてボンヤリ暮らしたいのだが…。 閑話休題。昨年の全米図書賞受賞作、Colum McCann の "Let …

Janice Y.K.Lee の "The Piano Teacher"(6) 

昨日で本当におしまいにしようと思ったが、今日帰宅して今までの感想を読みかえしているうちに、性懲りもなくもう1回だけ補足したくなった。 ぼくの本書にたいする小説としての評価はレビューと昨日の日記に尽きているが、「ジャニス・リーはとんでもない問…

Janice Y.K.Lee の "The Piano Teacher" (5)

本書について駄文を綴るのは昨日でおしまいにしようと思ったが、あとひとつだけ気になることがある。 それを詳述する前に今までのおさらいをすると、本書は「まずまず面白い佳作」という程度。「戦争が生んだ愛の悲劇」にしても「女性の成長物語」にしても平…

Janice Y.K.Lee の "The Piano Teacher" (4)

ぼくはカッコよく言えば「原典主義者」、実際は面倒くさがり屋なので、序文、あとがき、インタビュー記事のたぐいはまず読まない。注文する前もレビューなど読んだためしがない。だが、この作品だけはじっくり巻末の参考記事に目を通してみた。本書で「リア…

Janice Y.K.Lee の "The Piano Teacher" (3)

本書で描かれている「戦争によって引き裂かれた恋人たちの悲劇」は、太平洋戦争直後から始まった日本軍による香港占領が原因である。それゆえ、占領時代の状況がここで詳しく述べられるのは当然で、そんな「小説は、もしかしたらこれが史上初めてかもしれな…

Janice Y.K.Lee の "The Piano Teacher" (2)

ぼくは何しろ洋書オタク、海外小説オタクにすぎないので、雑感にも書いたとおり、「最大の関心はあくまでも、本書がウェル・メイドな小説かどうか、という点にある」。この立場から結論を述べると、これはまずまず面白い佳作だと思う。米アマゾンでは星4つ…

Janice Y.K.Lee の "The Piano Teacher" (1)

ニューヨーク・タイムズ紙の trade paperback 部門ベストセラー(現在第4位)、Janice Y.K.Lee の "The Piano Teacher" をやっと読みおえた。 さっそく、いつものようにレビューを書いておこう。The Piano Teacher: A Novel作者: Janice Y. K. Lee出版社/メ…

"The Piano Teacher" 雑感

ニューヨーク・タイムズの Trade Paperback 部門ベストセラー(今検索すると第4位)、Janice Y.K.Lee の "The Piano Teacher" に取りかかった。去年の初めだったかアマゾンUKでもベストセラーになっていたが、星の数があまり多くなかったのと(現在3つ半)…

Petina Gappah の "An Elegy for Easterly"(2)

小説や映画のメリットのひとつは、現実に訪れる可能性がきわめて低い場所でも行った気分になれることで、本書の舞台ジンバブエも、これを読まなければまず遠い国のままだったはず。ましてその歴史など皆目不明、ネットで検索してから知ったかぶりで書いたの…

Petina Gappah の "An Elegy for Easterly"(1)

昨年のガーディアン新人賞(The Guardian First Book Award)受賞作、Petina Gappah の "An Elegy for Easterly" を読みおえた。いつものようにまずレビューを書いておこう。An Elegy for Easterly作者:Gappah, Petina発売日: 2009/12/03メディア: ペーパー…

Marian Keyes の "The Brightest Star in the Sky"(2)

これは面白い! ぼくのようにダラダラ読まなければ、なおさら面白いはずだ。600ページを超える大長編だが、時間のある人なら一気に読みたくなると思う。適度に濡れ場もあってサービス満点。いや、ちと過剰気味で、この半分くらいの分量でも同じヒーリング効…

Marian Keyes の "The Brightest Star in the Sky"(1)

アマゾンUKが選んだ昨年のベスト10小説のひとつ、Marian Keyes の "The Brightest Star in the Sky" をようやく読みおえた。これでやっと年が明けたような気がする。さっそく、いつものようにレビューを書いておこう。Brightest Star In The Sky,The作者: Ma…

"The Brightest Star in the Sky" 雑感(3)

しばらくブログを休んでいたが、やっと再開にこぎ着けた。大晦日から三が日は「小人閑居して不善を為す」、ダラダラした毎日で本書もほとんどお休み。明けて仕事を始めたとたん、これが目の回るような忙しさで今日の午前中まで大変だった。しかしまあ何とか…