ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

2012-04-01から1ヶ月間の記事一覧

“Almost Heaven” 雑感 (2)

世間は連休のはずで、うちのドラ娘も久しぶりにわが家に帰ってきたが、ぼくの職場は明日まで仕事。昨日もけっこう忙しかった。今日も出勤だが、こっそりこれを書いている。 仕事の合間にボチボチ本書を読んでいるうちに、だいぶ目鼻がついてきた。これはキリ…

“Almost Heaven” 雑感 (1)

Chris Fabry の "Almost Heaven" をボチボチ読んでいる。帰省中、バッグの底に忍ばせていたのだが、父の葬儀のあとも役所参りなどに追われて結局、荷物になるだけだった。去年のキリスト教図書賞最優秀小説賞 (Christian Book Award for Fiction) の受賞作…

Eleanor Henderson の “Ten Thousand Saints” (2)

忌引きがおわり、今日から職場に復帰したが、あまり仕事にならなかった。読みかけの本もあるものの、さほど進んでいない。 "Ten Thousand Saints" について少しだけ補足しておこう。これは物語としては、ほどよく山場もあって、まずまずおもしろい。が、昨年…

今年のピューリツァー賞とオレンジ賞最終候補作など

"Ten Thousand Saints" について少し補足しようと思ったが、父の逝去でしばらく田舎に帰省していたせいか、頭がまだ働かない。そこで今日は、最近発表された文学賞の受賞作や候補作をならべてお茶を濁しておこう。 まずピューリツァー賞だが、これは帰省中も…

Eleanor Henderson の “Ten Thousand Saints” (1)

先週の月曜日、愛媛の田舎で長らく療養中だった父が永眠した。急遽帰省し、水曜日に葬儀。そのあと、お寺や役所関係などの事後処理に忙殺され、とうに読みおえていた本書のレビューがなかなか書けなかった。昨年のニューヨーク・タイムズ紙選最優秀作品のひ…

“Ten Thousand Saints” 雑感

今週は Eleanor Henderson の "Ten Thousand Saints" をボチボチ読んでいた。ニューヨーク・タイムズ紙が選んだ昨年の 10 Best Books の1冊で、おととい紹介したとおり、PPrize.com の予想によると、今年のピューリッツァー賞 “候補作” でもある。 このとこ…

今年のピューリッツァー賞予想

読みはじめた本はあるのだが、多忙につき雑感を書くほども進んでいないので、今日は発表が迫ってきた今年のピューリッツァー賞の予想を。といっても、周知のとおり、この賞のショートリストは受賞作と同時に発表されるので、不勉強のぼくは PPrize.com の予…

Naomi Benaron の “Running the Rift” (4)

あとひとつ、「ジェノサイドを引き起こす人間そのものの悲劇性」を物語る例を紹介しておこう。虐殺が始まったあと、主人公のジャンは、ランニングの指導をしてくれていたフツ族のコーチの家を訪れる。そこの家政婦とジャンの会話がこうだ。"I am angry with …

Naomi Benaron の “Running the Rift” (3)

本書にも「ジェノサイドを引き起こす人間そのものの悲劇性」を想起させる箇所がいくつかある。たとえば、主人公のツチ族の大学生ジャンが、フツ族ながら親友のダニエルが暴徒に殺されたのを知ったあと、ダニエルが思いを寄せていた女子学生と出会ったときの…

Naomi Benaron の “Running the Rift” (2)

よろず無知なぼくでも、さすがにルワンダ虐殺のことは何かの記事で知っていたが、本書の終幕に差しかかったとき、実際はどうだったんだろうと思ってネットを検索してみた。いやはや、「慄然とするような大惨劇」などという表現は陳腐で生ぬるい。ぼくは Wiki…

Naomi Benaron の “Running the Rift” (1)

一昨年のベルウェザー賞(Bellwether Prize for Fiction)受賞作、Naomi Benaron の "Running the Rift" を読みおえた。これは今年1月の米アマゾン月間ベスト作品のひとつでもある。さっそくレビューを書いておこう。Running the Rift作者:Benaron, NaomiOn…

“Running the Rift” 雑感

今週は一昨年のベルウェザー賞(Bellwether Prize for Fiction)受賞作、Naomi Benaron の "Running the Rift" をボチボチ読んでいた。この賞は日本ではあまりなじみのない賞だと思うが、社会正義の問題を扱った小説を対象に隔年選ばれるもので、2000年から…

Arthur Phillips の “The Tragedy of Arthur” (4)

今まで述べた理由で、本書を高く評価するむきがあっても決して不思議ではない。事実、ニューヨーク・タイムズ紙の Notable Book や、ニューヨーカー誌その他の年間ベスト作品に選ばれるなどメディア露出度は抜群に高いし、米アマゾンでも今現在、レビュー数6…

Arthur Phillips の “The Tragedy of Arthur” (3)

「作者のしたたかな計算」は、「シェイクスピア劇の序文」の結びもからも読みとれる。'What sort of story is this? Not quite a tragedy, not for anyone else, anyhow. Not quite a comedy, not for me, anyhow. A problem play, I suppose we could call …

Arthur Phillips の “The Tragedy of Arthur” (2)

「技巧的な、あまりに技巧的な作品」と昨日のレビューには書いたが、これは大変な労作でもある。巻末のシェイクスピア劇のパスティーシュ、"The Tragedy of Arthur" をちらっと読んだだけでも、そのすごさに圧倒される。シェイクスピアの研究者やファンだっ…

Arthur Phillips の “The Tragedy of Arthur” (1)

Arthur Phillips の "The Tragedy of Arthur" をやっと読みおえた。ただし、巻末に収録されているシェイクスピアの(?)戯曲、"The Tragedy of Arthur" は拾い読みした程度なので、以下のレビューはもっぱら、その「序文」を対象としたものである。The Trag…

“The Tragedy of Arthur” 雑感

この週末は英訳で読んだトルストイの毒にすっかり参ってしまい、「はて、これから何を読んだものか」と、現代文学の積ん読の山をながめながら迷っていたが、今日で月も変わり新年度。心機一転、Arthur Phillips の "The Tragedy of Arthur" に取りかかった。…