ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

2016-07-01から1ヶ月間の記事一覧

ぼくのタチくん

きょうの午後、うちの愛犬タチくんが死んだ。6月末に突然けいれんを起こしたあと、ずっと半身不随。人間でいえば90歳くらいの老犬だった。「お手!」と声をかけ、しばらくしてようすを見たら息絶えていた。いつものように手を上げられなかったタチは、『あ…

"Brief Loves That Live Forever" 雑感 (1)

まずブッカー賞の話題から。ぼくはアンテナに登録している現地ファンのブログを参考にしながら、ロングリストにノミネートされそうな有資格候補作を何冊か読んでいたのだが、当たったのは1冊だけ。"The Sellout" も有資格だとは思いもよらなかった。 例によ…

2016年ブッカー賞ロングリスト発表(The Man Booker Prize 2016 Longlist)

今年のブッカー賞ロングリストが発表された。このうち、"The Sellout" はご存じのとおり、今年の全米書評家協会賞受賞作でもある。同書もふくめ、ぼくが読んだことがあるのは2冊だけ。直感だが、"My Name Is Lucy Barton" はショートリスト入りの可能性が高…

Yaa Gyasi の “Homegoing” (2)

この一週間、超多忙でろくに本も読めなかった。電車やバスの中で読もうとするとコトリ。寝床で『海街diary』を読みはじめてもコトリ(吉田秋生は昔から好きだ)。 ましてブログの更新などできやしない。「ブログはヒマな人がやるもの」と、ぼくがブログを書…

Yaa Gyasi の “Homegoing” (1)

ガーナ出身でアメリカ在住の新人作家、Yaa Gyasi の "Homegoing" を読了。先月7日に刊行されたばかりの作品で、今年のブッカー賞候補作の資格があるかどうか、あちらのファンのあいだで話題になっている。さっそくレビューを書いておこう。Homegoing: A nov…

Akhil Sharma の “Family Life” (3)

日本の場合、「介護は社会問題」と言えば、福祉制度あるいは介護団体や施設の問題という意味だろう。それがこの "Family Life" では、文化の問題へとつながっている。 ぼくがそのことに気がついたのはここだ。'It is common among Indians to look at someon…

Akhil Sharma の “Family Life” (2)

何回か前にも書いたが、うちの老犬がある日突然けいれんを起こし、そのまま半身不随になってしまった。きのうも夜中に何度か鳴くので、そのたびに目が覚めて水をやったりしている。 犬でさえ大変なのに、まして人間相手の介護となると、その苦労はもちろん並…

Akhil Sharma の “Family Life” (1)

今年の国際ダブリン文学賞(International Dublin Literary Award)受賞作、Akhil Sharma の "Family Life" を読了。Sharma はアメリカ在住のインド系作家である。さっそくレビューを書いておこう。Family Life作者:Sharma, AkhilFaber & FaberAmazon[☆☆☆★★]…

"Family Life" 雑感

北海道旅行最終日。今はまだ札幌のホテルにいるが、これから昨日に引き続き、小樽へ行く予定。 出かける前に、今読んでいる本のことを少しだけ書いておこう。アメリカ在住のインド系作家 Akhil Sharma の "Family Life" (2014) である。今年の国際ダブリン文…

Elizabth Strout の "My Name Is Lucy Barton" (3)

北海道旅行5日目。札幌のホテルでこれを書いている。 きょうは夕刻、小樽まで足を伸ばし、まず船見坂へ。次いで、今は廃校になっている某中学校(立入禁止のため伏字)、手宮西小学校の裏山、最後は定番の運河という順序で見学した。いずれも大林宣彦監督映…

Elizabth Strout の "My Name Is Lucy Barton" (2)

北海道旅行4日目。然別湖のホテルでこれを書いている。 本書はピューリッツァー賞作家の最新作。だから注目を集めて当然だし、刊行されたのが今年の2月ということで、すでにお読みの方も多いのではないかと思う。 が、ぼくは、これがあちらのファンのあい…

Elizabeth Strout の "My Name Is Lucy Barton" (1)

北海道旅行3日目。網走のホテルでこれを書いている。 バスの中で Elizabeth Strout の最新作、 "My Name Is Lucy Barton" を読了。あちらのファンのあいだでは、今年のブッカー賞の有資格候補作に擬せられている。さっそくレビューを書いておこう。My Name …

David Mitchell の “Slade House” (2)

昨日から7年ぶりに北海道旅行。この記事は知床のホテルで書いている。 ということで、"Slade House" の原書も読書メモも手元にない。そこで記憶を頼りに、今まで読んだ今年のブッカー賞有資格候補作をふりかえると、本書はオモシロ度ではピカ一。 いや、Yan…

David Mitchell の “Slade House” (1)

きょうはまず、Sara Baume の "Spill Simmer Falter Wither" (2) これは既報どおり2015年のコスタ賞新人賞候補作である。本ブログを中断していた時期に刊行された主な作品を少しずつ catch up しなければ、と再開後から思っていたが、本書は予定外。もと…

Han Kang の “The Vegetarian” (4)

これを読んでいて、ふと思い出したのがまず、『ツレがうつになりまして。』。といっても、ぼくは映画しか知らない。だから中途半端な印象論だが、本質的には同じ問題を扱っているような気がする。「異変はある日突然やって来る。日常生活が突如、暗転する。…

Sara Baume の “Spill Simmer Falter Wither” (1)

あと1回だけ Han Kang の "The Vegetarian" について補足しようと思っていたのだが、この週末に Sara Baume の "Spill Simmer Falter Wither" を読了。2015年のコスタ賞新人賞候補作である。こちらのレビューを先に書いておこう。Spill Simmer Falter Withe…

Han Kang の “The Vegetarian” (3)

本書と、前回レビューを再録した Kyung-Sook Shin の "Please Look after Mom" の点差は★1つ(約5点)。じつはそのレビューを読み返すまで同書のことはすっかり忘れていたのだが、それでも若干、字句の手直しをするうちにハッキリ思い出した。もしかしたら…