今朝の新聞を見たら、ノーマン・メイラーの訃報記事が載っていた。が、ぼくは今年の2月、最新作の "The Castle in the Forest" を「巨匠衰えたり」と題して酷評しただけに、その死を知っても別に驚かなかった。
The Castle in the Forest: A Novel
- 作者: Norman Mailer
- 出版社/メーカー: Random House
- 発売日: 2007/01/23
- メディア: ハードカバー
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…この日記では、メジャーな賞の受賞作や候補作は別にして、なるべく4つ星以上の作品についてだけ書こうと思っていたのだが、ぼくの評価基準にも関係することなのであえて採り上げた。メイラーといえば、ご存じ『裸者と死者』で有名な「巨匠」だが、少なくとも最近、この "The Castle in the Forest" ほど、読んで腹立たしい思いをしたことはない。書中、ここから先は本筋とは無関係なので、しばらく読み飛ばしても結構という予告のあと、実際まったく関係のないエピソードが挿入されているのにも驚いた。これでは「昔の名前で出ています」もいいところではないか、と慨嘆したものだ。
ともかく、本来なら全体主義やジェノサイドという重大な問題にふれざるを得ないはずなのに、それを故意に回避し、戯れ言ばかり並べている点に憤りを覚える。ぼくだって大きなことは言えないが、ここまで人間の悪魔性をおもちゃにしているところを見ると、メイラーは、人間というものがまるで分かっていなかったのではないか。『裸者と死者』をはじめ、彼の過去の名作も、そういう目で再検証する必要がありそうだ。