ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

2011-01-01から1ヶ月間の記事一覧

Hans Keilson の “Comedy in a Minor Key”(2)

今日はまずコスタ賞の話題から。昨年暮れ、長編部門のラインナップに Maggie O'Farrell の新作が混じっているのを発見したとき、たぶんこれが最優秀賞に選ばれるだろうなとは思ったのだが、食指は動かなかった。旧作 "The Vanishing Act of Esme Lennox" htt…

Hans Keilson の “Comedy in a Minor Key”(1)

このところパッとしない体調だったが、今年の全米批評家(書評家)協会賞の最終候補作、Hans Keilson の "Comedy in a Minor Key" を何とか読みおえた。さっそくレビューを書いておこう。Comedy in a Minor Key (Modern Voices)作者: Hans Keilson出版社/メ…

Alexander MacLeod の “Light Lifting”(2)

去年の秋にインフルエンザの予防接種を受けたのに、どうも今日は朝から頭が重く、仕事の切りがついたところで早退してしまった。熱が出る前に昨日の続きを書いておこう。 雑感でもふれたように、本書は現在、ネット経由ではどうやら日本では入手不可能らしく…

Alexander MacLeod の “Light Lifting”(1)

去年のギラー賞(Scotiabank Giller Prize)の最終候補作、Alexander MacLeod の "Light Lifting" をやっと読みおえた。例によってさっそくレビューを書いておこう。 追記:その後、本書は2011年のフランク・オコナー国際短編賞の最終候補作に選ばれました。…

“Light Lifting”雑感(2)

キザな言い方だが、「ここには短編小説ならではの豊穣な文学の可能性が広がっている」という昨日の印象は今日もまったく変わらない。どの短編も「人生のそれぞれの瞬間を鮮やかにとらえ、永遠に固定したような場面が連続」し、「独特の緊張感がみなぎってい…

“Light Lifting”雑感(1)

Alexander MacLeod の短編集、"Light Lifting" に取りかかった。去年のギラー賞(Scotiabank Giller Prize)の最終候補作で、あちらの一部ファンのあいだでは、受賞した Johanna Skibsrud の "The Sentimentalists" よりも高く評価されているようだ。ぼくも…

Kevin Wilson の “Tunneling to the Center of the Earth”(2)

アレックス賞は周知のとおりヤング・アダルト向けの良書を紹介する文学賞で、例年かなり水準の高い作品が選ばれている。が、何しろ毎年10冊ずつ受賞作があるのでフィクションにかぎっても読み洩らしが多く、最近のリストをながめると年に数冊しか読んでいな…

Kevin Wilson の “Tunneling to the Center of the Earth”(1)

去年のアレックス賞受賞作のひとつ、Kevin Wilson の "Tunneling to the Center of the Earth" を読みおえた。さっそく、いつものようにレビューを書いておこう。Tunneling to the Center of the Earth: Stories (P.S.)作者: Kevin Wilson出版社/メーカー: E…

“Tunneling to the Center of the Earth”雑感

ジュール・ヴェルヌの『地底旅行』とよく似た題名だが、あちらの英訳タイトルは "Journey to the Center of the Earth"。本書は表題作の短編をふくむ Kevin Wilson の短編集で、去年のアレックス賞受賞作の一つである。 周知のとおり、今年のアレックス賞は…

Jaimy Gordon の “Lord of Misrule”(2)

これは第4章を読みはじめてやっと救われた。それまでぼくにはかなり退屈で、同じ専門外の競馬を描いた小説でも、大昔傾倒したディック・フランシスのほうがはるかに面白かったなあ、とジャンル違いなのについ頭の中で較べながら読んでいた。 ただ、好きな人…

Jaimy Gordon の “Lord of Misrule”(1)

去年の全米図書賞受賞作、Jaimy Gordon の "Lord of Misrule" をやっと読みおえた。さっそくレビューを書いておこう。Lord of Misrule作者: Jaimy Gordon出版社/メーカー: McPherson & Co発売日: 2010/11/30メディア: ハードカバー クリック: 8回この商品を…

“Lord of Misrule”雑感(3)

「事件らしい事件はない」と昨日書いたが、今まで最大の「事件」はやはり競馬のレース。章題にもなっているとおりだが、レースの実況中継はまずまずで、およそ手に汗を握るようなものではない。大昔何冊も読んだディック・フランシスの競馬スリラーのほうが…

“Lord of Misrule”雑感(2)  

ううむ、渋い、渋いですな。去年の秋、しばらく文芸エンタメ路線を走っていた目でながめると、これはいかにも筆運びが重い。前回同様、「今のところ、派手なストーリー展開は皆無と言ってよ」く、筋立ての面白い小説を期待して取りかかるとかなり忍耐を強い…

“Lord of Misrule”雑感(1)

映画や小説なら「テーマそのものには共感できなくても、作劇術や語り口などに魅了されることもあるはずだ」と昨日書いたが、ぼくの場合、それがまさに当てはまるのが音楽だ。年が明けてまたバッハに戻り、器楽曲を中心にBGMとして流しているが、耳の悪い…

Rafael Yglesias の “A Happy Marriage”(3)

先日、映画「君を想って海をゆく」はイマイチだったと書いたが、その理由の一つは、クルド人難民の少年がイギリスにいる恋人と再会すべく、英仏海峡を泳いで渡ろうとする設定そのものにさほど共感できなかったからだ。それから、少年に水泳を教えるコーチと…

Rafael Yglesias の “A Happy Marriage”(2)

昨日のレビューにも書いたとおり、これは「男と女が出会って結ばれ、そして死別する。煎じ詰めるとそれだけの話」である。おまけに終始一貫、過去と現在の物語が交差する展開だし、末期ガンに冒された妻が死の床にあるという現在編がどんな結末を迎えるかは…

Rafael Yglesias の “A Happy Marriage”(1)

去年のロサンジェルス・タイムズ紙小説大賞(LA Times Book Prize for Fiction)受賞作、Rafael Yglesias の "A Happy Marriage" を読了。これでようやく年が明けたような気がする。さっそくレビューを書いておこう。A Happy Marriage作者: Rafael Yglesias…

“A Happy Marriage”雑感(4)

今日は久しぶりに映画館のハシゴをしてきた。ひょっとしたら学生時代以来初めてかもしれない。まず見たのが「君を想って海をゆく」。「フランスで大ヒットを記録した感動ドラマ」という宣伝文句に釣られたのだが、ぼくにはイマイチでした。そこで口直しにウ…

“A Happy Marriage”雑感(3)

大晦日の晩からメタボな生活が始まり、昨日の朝、体重を量ったら2キロもアップ。あわててジョギングを再開したが、晩にはまた一杯やってしまい、この調子だと元に戻すのが大変だ。 三が日は映画を何本か見ようと思っていたのに、飲んでいるうちに決まってダ…