ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Robert Walser の “Jakob von Gunten”(1)

きのう、スイスの作家 Robert Walser(1878 – 1956)の "Jakob von Gunten"(1909, 英訳1969)をやっと読了。Walser のことは、いまから10年ほど前、優秀な英文学徒T君に教えてもらった。以下のレビューは、彼の墓前に捧げるものである。 Jakob von Gunten …

Audrey Magee の “The Colony”(2)

きょうから20日ぶりにジム通い。思ったより走れ、筋トレもいつものメニューをこなせた。 それはいいのだけど、この1週間は長旅の疲れのせいか、ふだん以上にぐうたら生活。身体だけでなく、頭のほうもそろそろ動かさないと。 そのぼんやりした頭で読んでい…

José Saramago の “Blindness”(3)

おとといの夕方、旅行から帰ってきた。伊勢志摩~広島~宇和島をめぐる6泊7日の〈シマつながり〉の旅で、終点だけ観光地ではないがぼくの郷里。広島で乗ったタクシーの運ちゃんが野球ファンで、元メジャーリーガーの岩村が宇和島東出身だということも知っ…

Claire Keegan の “Small Things Like These”(1)

きのう "Season of Migration to the North" のレビューをアップしたあと、スイスの作家 Robert Walser(1878 – 1956)の "Jakob von Gunten"(1909, 英訳1969)を寝床のなかで読んでいたら、三軒先のドラ息子の家に本が届いたという知らせ。アマゾンUKに速…

Tayeb Salih の “Season of Migration to the North”(1)

ゆうべ、スーダンの作家 Tayeb Salih(1929 – 2009)の "Season of Migration to the North"(1966, 英訳1969)を読了。本書は2001年、アラブ諸国の文学関係者により、「20世紀にアラビア語で書かれた最も重要な小説」に選定されている。4回目のコロナワク…

José Saramago の “Blindness”(2)

きょうの午前中、4回目のコロナワクチン接種を受けた。2・3回目のときの副反応からして、今回も8度以上の熱が出そう。なんだかもう頭がボンヤリする。ひどくならないうちに手っとりばやく記事を書いておこう。 表題作は以前から、タイトルどおり、「ある…

Joshua Cohen の “The Netanyahus”(1)

今年のピューリツァー賞受賞作、Joshua Cohen の "The Netanyahus"(2021)を読了。さっそくレビューを書いておこう。 The Netanyahus: An Account of a Minor and Ultimately Even Negligible Episode in the History of a Very Famous Family 作者:Cohen, …

Dino Buzzati の “The Tartar Steppe”(2)

きょうは近所の夏祭り。盆踊りはなかったけど、夕方、出店の前は長蛇の列だったらしい。けれど三軒先に住むドラ息子がコロナに感染したので、初孫のショウちゃんは濃厚接触者。お祭りに連れていくわけにもいかず、ぼくは家で一杯やりながら Amazon Prime で…

Chinua Achebe の “Things Fall Apart”(2)

ロンドン時間26日、ブッカー賞のロングリストが発表された。いつもながら現地ファンのヒートアップぶりには感心させられる。「あと6時間で発表だ。ワクワクしてる」「そうだ、そうだ」なんていうファンたちの声からして、日本でもアメリカでも、発表前から…

Knut Hamsun の “Hunger”(2)

ブッカー賞のロングリスト発表が目前に迫ってきた(ロンドン時間26日)。いまチェックすると、現地ファンの下馬評で1番人気は相変わらず "The Colony"。ぼくもいたく感動しただけに(☆☆☆☆)、入選を祈るばかりだ。 気になるのは、今年の(対象は昨年度)全…

Audrey Magee の “The Colony”(1)

きのう、Audrey Magee の "The Colony"(2022)を読了。既報のとおり今年の George Orwell Prize の最終候補作だが、いまチェックすると、もっかイギリス現地ファンのあいだでは、今年のブッカー賞ロングリスト入選が最有力視されている。Audrey Magee はア…

Juan Rulfo の “Pedro Páramo”(2)

待ち望んでいた Audrey Magee の "The Colony"(2022)がやっと届き、さっそく着手。なかなか面白い。 これは2019年に創設された(前身あり) George Orwell Prize の今年の最終候補作だが、イギリスの文学ファンのあいだでは、今年のブッカー賞ロングリスト…

José Saramago の “Blindness”(1)

ポルトガルのノーベル賞作家 José Saramago(1922 – 2010)の "Blindness"(1995, 英訳1997)を読了。実際に使用したテクストは Harvill Press 版。さっそくレビューを書いておこう。 Blindness 作者:Saramago, José Vintage Classics Amazon [☆☆☆☆★] 破滅テ…

William Faulkner の “The Unvanquished”(3)

また大事件が起きた。コロナ渦にはじまり、ウクライナ侵攻、そして今回の暗殺と、この数年、それまでほとんど予想されなかったような重大事件が連続している。三つの事件にそれぞれ関連はないが、coincidences にはちがいない。 過去にも、そういえばあのと…

William Faulkner の “The Unvanquished”(2)

注文している今年の〈ブッカー賞ロングリスト候補作〉"The Colony" がまだ届かない。そこで引きつづき、同書の落手直前にタイミングよく片づけば、と Saramago の "Blindness" をボチボチ読んでいる。相変わらず面白い。 ひとがなぜか突然失明する伝染性の奇…

Patrick Modiano の既読作品一覧とゴヒイキ作品ベスト3

前回採りあげた "The Occupation Trilogy" で、架蔵している Modiano 作品はすべて読了。ほかに何冊か気になるものはあるが、いますぐ読みたいほどではない。そこで既読作品一覧をアップするとともに、My Favorite 3 を選んでみることにした。 その前にまず…

Patrick Modiano の “The Occupation Trilogy”

今年もブッカー賞の季節がやってきた。ロングリストの発表が迫り(ロンドン時間今月26日)、現地ファンのあいだでは例年どおり、いろいろな予想が飛びかっている。ぼくもじつは1ヵ月前くらいから下馬評をチラ見しているのだが、いまのところまだ、大本命と…

Dino Buzzati の “The Tartar Steppe”(1)

イタリアの作家 Dino Buzzati(1906 – 1972)の "The Tartar Steppe"(1940, 英訳1952)を読了。ヴァレリオ・ズルリーニ監督の遺作『タタール人の砂漠』(1976)の原作である。さっそくレビューを書いておこう。 The Tartar Steppe (Canons Book 90) (Englis…

Chinua Achebe の “Things Fall Apart”(1)

Chinua Achebe の "Things Fall Apart"(1958)を読了。恥ずかしながら、いままで未読だった。陳腐なレビューしか書けそうにないが、さて。 Things Fall Apart 作者:Achebe, Chinua Penguin Classics Amazon [☆☆☆☆★] 文化とは、そして宗教とは、ある民族や国…

Knut Hamsun の “Hunger”(1)

きのう本書 "Hunger"(1890, 英訳1996)の中間報告をアップしたら、そのあと、なんだか憑きものが落ちたようにどんどん進み、一気に読了。Knut Hamsun(1859 – 1952)は1920年にノーベル文学賞を受賞したノルウェーの作家である。はて、どんなレビューになり…

Patrick Modiano の “Invisible Ink” (2)

ノルウェーのノーベル賞作家 Knut Hamsun(1859 – 1952)の "Hunger"(1890, 英訳1996)をボチボチ読んでいる。薄い本なのだけど、いっこうに進まない。 英語そのものはごく標準的で読みやすい。取りかかったとたん、これなら楽勝と思ったくらい。だけど、そ…

Veza Canetti の “The Tortoises”(2)と、再読したいナチス関連作品一覧

今回からやっと先月の落ち穂拾い。表題作を手にしたきっかけはウロおぼえだが、たぶん、「ウクライナの非ナチ化」という例のプロパガンダ。「非ナチ化?なにそれ?」と思ったものだけど、そんな時代錯誤のような cause でさえ戦争の cause になるのだから恐…

Patrick Modiano の “So You Don't Get Lost in the Neighborhood”(2)

"Young Once"(1981)がとてもよかったので(☆☆☆★★★)、つづけてまた Modiano が読みたくなった。いわゆる〈モディアノ中毒〉の症状である。ぼくは重症ではないけど、軽く患っている。 そこで手に取ったのが表題作(2014)。これもよかった(☆☆☆★★)。Modian…

Juan Rulfo の “Pedro Páramo”(1)

きのう、メキシコの作家 Juan Rulfo(1917 - 1986)の "Pedro Páramo"(1955, 英訳1993)を読了。さっそくレビューを書いておこう。 Pedro Paramo (Serpent's Tail Classics) 作者:Rulfo, Juan Profile Books Amazon [☆☆☆☆★] 生は死によって完結し、愛もまた…

Patrick Modiano の “Young Once”(2)

表題作は、そういえば今年はまだ Modiano を読んでなかったな、と気づいて取りかかった。それからほぼ2ヵ月。ふだんは1週間もすれば粗筋を忘れてしまうこともあるのに、これは本にはさんでいる読書メモを見てすぐに思い出した。秀作でしょう。 冒頭の舞台…

Antonio Tabucchi の “Pereira Maintains”(2)と既読作品一覧

表題作は、4月なかばに取り組んだ Antonio Tabucchi シリーズの4冊目。これで手持ちの彼の作品はぜんぶ片づけたことになる。当面あらたに読み足す予定もないので、以下、ささやかな既読作品一覧をアップしておこう。 1. Indian Nocturne(1984 ☆☆☆★★) 2. …

William Faulkner の “The Unvanquished”(1)

きのう、William Faulkner の "The Unvanquished"(1938)を読了。ミシシッピ州の架空の町ヨクナパトーファ郡ジェファーソンを舞台とするヨクナパトーファ・サーガのひとつで、7つの連作短編をまとめた作品である。さっそくレビューを書いておこう。(「な…

Antonio Tabucchi の “Requiem: A Hallucination”(2)

うかつだった。落ち穂拾いをしようと思って本書を手に取ったら、なんと Tabucchi 自身による巻頭の Note にこんな一節があった。But this book is, above all, a homage to a country I adopted and which, in turn, adopted me, and to a people who liked …

Antonio Tabucchi の “The Edge of the Horizon”(2)

ぼくはいままで同じ作家の作品をつづけて読むことはなるべく控えてきた。連続して接すると、英語的に読みやすい、その作家の特徴をつかみやすいというメリットはあるものの、反面、新鮮味に欠ける憾みもある。それよりむしろ、未知の作家はもちろん、旧知の…

Antonio Tabucchi の “Indian Nocturne”(2)

『インド夜想曲』。なんと蠱惑的なタイトルだろう! そう思って、ほかに目についた作品ともども、英訳版を買い求めたのはずいぶん昔の話。以来、Tabucchi のことはずっと気になっていた。 その積ん読の4冊をやおら書棚から取り出したのは先月なかば。Faulkn…