ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Jane Austen の “Pride and Prejudice”(2)

十九世紀英文学の古典探訪第二回。これでやっと『高慢と偏見』も "Pride and Prejudice" となった。 ただし、中学生のころだったか読んだ邦訳版では、たしか『自負と偏見』だったような気がする。未見のジョー・ライト監督作品は『プライドと偏見』(2005) …

Charlotte Brontë の “Jane Eyre”(5)

映画でも小説でも対決シーンがあるとガ然盛りあがるものだ。西部劇がいい例で、ヒーローが勝つに決まっているとわかっていても思わず目が釘づけになる。 表題作にもいくつか対決シーンがあり、もちろん勝敗がからんでいるわけではないが、そのピリピリした緊…

Jane Austen の “Pride and Prejudice”(1)

先週またもや風邪をひいたせいか、いっとき落ちついていた血圧がふたたび急上昇。文字どおり頭をかかえながら "Pride and Prejudice"(1813)を読んでいた。 それがおととい、あと数ページまで漕ぎつけたところで挫折。右耳が飛行機の離発着時のように詰まり…

Charlotte Brontë の “Jane Eyre”(4)

チェスタトンの著作のうち、メモを取りながら文字どおり熟読玩味したのは『正統とは何か』だけだ。 学生時代、ある最後の授業のおわりに亡き恩師がこういった。「もし自殺したくなったら、死ぬ前に『正統とは何か』と『善悪の彼岸』を読め。それでも死にたか…

Charlotte Brontë の “Jane Eyre”(3)

これはいまさらいうまでもなく、文学ファンならずともタイトルくらいは耳にしたことがありそうな名作だ。そう断言できるのは、文学オンチの家人でさえ知っていたからだ。 そんな名作を英語で読んだからといって、屋上屋を架す以外に、どんな感想が書けるとい…

Charlotte Brontë の “Jane Eyre”(2)

ああ、やっと『ジェイン・エア』が "Jane Eyre" になった! 高1のときだったか邦訳で読んだきりの『ジェイン・エア』。これもいつだったか一度観たきりのフランコ・ゼッフィレリ監督作品『ジェイン・エア』(1996)。 なかなかゴキゲンな映画だったけど、い…

Charlotte Brontë の “Jane Eyre”(1)

きのう、"Jane Eyre"(1847)を読了。途中、風邪をひいたせいか血圧が上がり、文字どおり頭をかかえながらの task となった。 とはいえ、Slow and steady wins the race. いつにもまして、それぞれのシークェンスが全体に占める意味や役割、ひいては作者の意…

“Jane Eyre” 雑感(2)

禍福はあざなえる縄のごとし。正月はスキー三昧でハッピーだったけれど、いまは高血圧で頭が重い。 風邪をひいたせいかもしれない。常備の漢方薬をずっと服みつづけ、きのう、かかりつけの先生に症状と経過を報告したところ、コロナかインフルだった可能性も…

Jonathan Escoffery の “If I Survive You”(2)

ううむ、困った。これ、いったいどんな本だっけ。 と一瞬焦ったが、拙文を読んで思い出した。そうそう、長編とも連作短編集ともいえるような作品で、最後の章(話)が本書と同じタイトルだった。 とりあえず、メモを頼りに第一話 "In Flux" からふりかえって…

Paul Murray の “The Bee Sting”(3)

正月太りがつづいている。スキーは足腰の運動になったはずだけど、そのあと食べすぎたのがいけない。今月ももうなかばだというのに、まだ身体が重く、先週もきのうもジムでろくに走れなかった。 "Jane Eyre" のほうも slow(-and-steady-wins-the-race)ペー…

“Jane Eyre” 雑感(1)

みなさま、新年明けましておめでとうございます。 と本ブログで新春のあいさつを述べたのは今年が初めてだと思う。New Year's resolution の表明です。昨年は最後の記事で書いたとおり読書量が激減。そこで今年はもっと本を読むぞと決心しました。 が早くも…

2023年ぼくのベスト小説

きのう Jonathan Escoffery の "If I Survive You"(2022 ☆☆☆★★)を読みおえ、今年の(途中から決めた)読書予定も終了。 あしたから十何年ぶりかでスキー旅行に出かけ、人生ではじめてスキー場で年末年始をすごすことになっている。そのため、毎年大みそか…

Jonathan Escoffery の “If I Survive You”(1)

今年のブッカー賞最終候補作、Jonathan Escoffery(1980 - )の "If I Survive You"(2022)を読了。Escoffery はジャマイカ系アメリカ人の作家で、デビュー作の本書は昨年の全米図書賞一次候補作でもあった。 ブッカー賞候補作というからには長編と判断され…

Paul Murray の “The Bee Sting”(2)

長かったぁ。これ正直いって、本書を読みおえた直後のいちばんの感想です。早く終わらんかい、とキレるほどではなかったけど、途中からもう、長ぁい。 けれど、同じく超大作で、やはり青春小説かつホームドラマでもあった Barbara Kingsolver の "Demon Copp…

Paul Harding の “This Other Eden”(2)

Paul Harding を読んだのは、2010年のピューリツァー賞受賞作、"Tinkers"(2009 ☆☆☆★★★)以来二冊めだ。 これ、なかなかよかったよ、と当時同僚のオーストラリア人に話したところ、日本語が堪能で下ネタ好きの彼いわく「チンコーズ!」。思わず吹きだしてし…

Paul Murray の “The Bee Sting”(1)

本書も途中、大休止をはさんでしまったが、きのうやっと読みおえた。ご存じ今年のブッカー賞最終候補作である。 Paul Murray(1975 - )はアイルランドの作家で、"An Evening of Long Goodbyes"(2003 未読)でデビュー。第二作の "Skippy Dies"(☆☆☆☆)は20…

Sarah Bernstein の “Study for Obedience”(5)

あっ、今年はモツレクを聴かなかった! そう気づいたのは数日前のこと。モーツァルトの絶筆「レクイエム」は凄絶なだけにBGMむきではないけれど、それでも例年、命日の12月5日前後には架蔵盤をぜんぶ聴いていた。しかしいまも流しているのは昔なつかし Eagl…

Sarah Bernstein の “Study for Obedience”(4)

きょうはジムで2+4+4キロ走。けっこう快調だった。 行き帰りのバスで読んでいた "The Bee Sting" も相変わらず快調。やっと中盤に差しかかったところだけど、今年のブッカー賞候補作でイチオシという感想も変わらない。それどころか、☆☆☆★★★でもよかん…

Sarah Bernstein の “Study for Obedience”(3)

きょうもジムで2+8キロ走。やっぱりバテた。でも今月はもう十何年ぶりになるのかスキーに行く予定なので、少しは足腰を鍛えておかないと。ウソかほんとか、ぼくのような高齢者でも、鍛錬しだいで筋力はアップするんだそうだ。 だけど知力のほうは明らかに…

2023年ブッカー賞発表とぼくのランキング

あれっ、とんだ勘ちがい! てっきり、ブッカー賞の発表は12月初旬だと思っていたら、なんと三日前にもう発表があったとは…… ああ、現地ファンの下馬評どおり、Paul Lynch の "Prophet Song"(2023)が受賞かぁ。先ほどチェックしているうちに気がつきました…

Sarah Bernstein の “Study for Obedience”(2)

やっと体調がもどり、きょうはジムで2+8キロ走。さすがにバテた。 おかげで帰りのバスではコックリさんだったが、行きに読んでいたのは Paul Murray の "The Bee Sting"(2023)。例によってカタツムリくんのペースながら、内容そのものは依然快調だ。 Pa…

Paul Lynch の “Prophet Song”(4)

この十日ばかり、またしても絶不調だった。急激な冷え込みと極端な寒暖差に身体が対応せず、てきめん風邪をひいてしまった。 コロナでもインフルでもなく、ただ喉が痛く、黄色い鼻水が出て、7度にも満たぬ発熱。そんな気分のすぐれない日がずっとつづいた。…

Paul Harding の “This Other Eden”(1)

きのう、今年のブッカー賞最終候補作、Paul Harding(1967 - )の "This Other Eden"(2023)を読了。Paul Harding は周知のとおり2010年に "Tinkers"(2009 ☆☆☆★★★)でピューリツァー賞を受賞。 同賞の受賞作家がブッカー賞のショートリストにのこるのは、E…

Paul Lynch の “Prophet Song”(3)

外は冷たい雨。拙宅の前の公園を見わたすと、きのうの夕方、きれいに掃除したばかりのベンチまわりに桜の落葉がみごとに散乱している。 桜といえばもちろん春の季語で、古来、小野小町をはじめ多くの歌人・俳人たちに詠まれてきた。大昔の拙句だが、 はらは…

Paul Lynch の “Prophet Song”(2)

10月27日からはじまった読書週間が昨日でおわった。新聞によると、「あるアンケートでは、1ヵ月間に全く本を読まないという回答が半数近くを占めた。原因の一つは『読みたい本が分からない』こと」。 ぼくも他人ごとではなく、この春ごろから読書量が激減。…

Sarah Bernstein の “Study for Obedience”(1)

またしても途切れ途切れの読書だった。昨日、Sarah Bernstein の "Study for Obedience"(2023)をやっと読了。Sarah Bernstein(1987 - )はカナダ出身の作家で、現在はスコットランド在住。デビュー作は "The Coming Bad Days”(2021 未読)。本書は彼女の…

Michel Houellebecq の “Submission”(3)

本書を読もうと思ったきっかけは、後日起きた大事件とはなんの関係もない。遅まきながら注文した今年のブッカー賞最終候補作が手元に届くまでの、いわば場つなぎに、積ん読の山からテキトーに見つくろっただけだ。 Houellebecq はフランスのベストセラー作家…

Paul Lynch の “Prophet Song”(1)

きのう、今年のブッカー賞最終候補作、Paul Lynch の "Prophet Song"(2023)を読了。前回途中経過を報告した翌日、一気に終盤まで進んだのはいいけれど、そのあと急に飽きてしまい、それから一日数ページのペースだった。 しかしいま、現地ファン投票による…

Michel Houellebecq の “Submission”(2)

先週7回目のコロナワクチン接種を受けてから絶不調。こんども副反応がひどかった。めずらしく高熱こそ出なかったものの、注射したほうの腕と両手がやけに痛かった。鎮痛剤を服まないと痛みがぶり返し、ほとんどコロナにかかったようなものだった。 いまも、…

Siân Hughes の “Pearl”(2)

先週末、横浜野毛の〈DOLPHY〉でもよおされたジャズコンサートを聴きにいった。 同店を訪れるのは今年7月につづいて二度め。こんどもドラ娘が帰省ついでに発案したものだ。当夜の出演者はみんな初耳だったけど、前頭葉で炸裂する音の饗宴に完全にノックアウ…