ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

アカデミー賞および映画化作品

Rachel Joyce の “The Unlikely Pilgrimage of Harold Fry” (1)

今年のブッカー賞候補作、Rachel Joyce の "The Unlikely Pilgrimage of Harold Fry" を読了。さっそくレビューを書いておこう。(後記:本書は2023年、ヘティ・マクドナルド監督作品として映画化され、日本でも公開されました。邦題は『ハロルド・フライの…

Ernest Cline の “Ready Player One”(1)

今年のアレックス賞受賞作のひとつ、Ernest Cline の "Ready Player One" をやっと読みおえた。さっそくいつものようにレビューを書いておこう。(追記:本書は2018年、スティーヴン・スピルバーグ監督により映画化され、日本でも『レディ・プレイヤー1』と…

M. L. Stedman の “The Light between Oceans” (1)

オーストラリアの新人女流作家 M. L. Stedman のデビュー作、"The Light between Oceans" を読了。映画化が予定されているそうだ。さっそくレビューを書いておこう。(追記:その後、本書は実際、デレク・シアンフランス監督により映画化され、2016年に『光…

Jojo Moyes の “Me Before You” (1)

イギリスの最新ベストセラー、Jojo Moyes の "Me Before You" をやっと読みおえた。さっそくレビューを書いておこう。(後記:本書は2016年、テア・シャロック監督によって映画化され、日本でも『世界一キライなあなたに』として公開されました)。Me Before…

Colm Toibin の "Brooklyn"(1)

今年のブッカー賞候補作のひとつで、最近はまたコスタ賞にもノミネートされている Colm Toibin の "Brooklyn" を何とか読みおえた。さっそくまず、いつものようにレビューを書いておこう。 追記:本書は2015年に映画化され、第88回アカデミー賞の作品賞、脚…

Flaubert の "Madame Bovary"

フローベールの名作『ボヴァリー夫人』を Oxford World's Classics 版で読みおえた。今までの雑感とたいして変わらないが、さっそくレビューを書いておこう。 本書は1933年にジャン・ルノワール監督作品として初めて映画化され、その後も何度か映画化されて…

Tatiana de Rosnay の "Sarah's Key"(1)

昨日、Tatiana de Rosnay の "Sarah's Key" を読了。一日たって、だいぶ冷静に考えられるようになったが、読みおわった直後はしばし目頭が熱くなった。 追記:その後、本書は映画化され、2010年に日本でも「サラの鍵」として公開されました。Sarah's Key: Fr…

Aravind Adiga の "The White Tiger"(1)

Aravind Adiga の "The White Tiger" を読了。ご存じ今年のブッカー賞受賞作だが、たしかに面白いことは面白いけれど、はて、この程度で受賞かと、いささか拍子抜けしてしまった。(後記:その後、本書は2021年、ラミン・バーラーニ監督により映画化されまし…

"Moby-Dick" と「闇の力」(5)

エイハブはとにかく偉大な人間だった。その偉大さは、カリスマ性は、直接的にはもちろん、白鯨と対決することから生まれたものである。人間の力をはるかに上回る相手と戦うことにより、人間そのものの水準が引き上げられたのだ。この点、映画『白鯨』のグレ…

Cormac McCarthy の “The Road”

休日ながら「自宅残業」に明け暮れ、"The World Made Straight" の続きがさっぱり読めなかった。そこで例によって、今日は昔のレビュー。6月に翻訳が出た『ザ・ロード』である。 追記:その後、本書は実際に映画化され、2009年に「ザ・ロード」との邦題で公…

Balzac の “Old Goriot”

トーマス・マンの "Confessions of Felix Krull, Confidence Man" を読んでいるのだが、英語は易しいのにどうも進まない。そこで今日は、昔のレビューでお茶を濁すことにした。 追記:本書は2004年に映画化されました。 Old Goriot (The Human Comedy)作者: …

William Faulkner の “Intruder in the Dust”(1)

William Faulkner の "Intruder in the Dust" をやっと読了。これほどの難物は久しぶりだった。 追記:本書は1949年に映画化されましたが、日本では未公開のようです。Intruder in the Dust (Vintage International)作者:Faulkner, WilliamVintageAmazon[☆☆☆…

Alberto Moravia の "Contempt"

Alberto Moravia の "Contempt" を読了。モラヴィアを読むのは3年ぶりだが、期待どおりオモロー! 追記:本書は1963年に映画化され、翌年、日本でも「軽蔑」として公開されました。監督はジャン=リュック・ゴダール。Contempt (New York Review Books Clas…

Helen Cross の "My Summer of Love"

Helen Cross の "My Summer of Love" を読了。「夏シリーズ」第4弾だが、今回はいささか期待はずれだった。My Summer of Love作者: Helen Cross出版社/メーカー: Bloomsbury Publishing PLC発売日: 2002/06/03メディア: ペーパーバックこの商品を含むブログ…

Franz Kafka の "Trial"

前回、イアン・バンクスの『蜂工場』について書いているうちに、ふと、カフカの『審判』のことを思い出した。以下は3年前だったかのレビュー。 追記:本書は1963年に日本でも公開されたオーソン・ウェルズ監督作品「審判」の原作です。The Trial: A New Tra…

Andre Aciman の "Call Me by Your Name"

このところ「自宅残業」と内職で大忙しだったが、寝る前に読みつづけていた Andre Aciman の "Call Me by Your Name" をやっと読了した。 追記:本書は2018年に映画化され、アカデミー賞にノミネート。CALL ME BY YOUR NAME作者:Aciman, André発売日: 2008/0…

Tim Winton の "Dirt Music" と Tom Perotta の "Little Children"

今日からしばらく出張することになったので、場つなぎに昔のレビューを載せておこう。Dirt Music作者: Tim Winton出版社/メーカー: Scribner発売日: 2003/05/01メディア: ペーパーバック クリック: 1回この商品を含むブログ (1件) を見る [☆☆☆☆] 2002年度ブ…

Alain-Fournier の "Le Grand Meaulnes"

世間は三連休だったと思うが、ぼくは土曜出勤の上、昨日おとといの午前中は「自宅残業」。さすがに午後からは仕事をする気になれず、いろいろな理由があってアラン=フルニエの『グラン・モーヌ』を読んでいた。The Lost Estate (Le Grand Meaulnes) (Penguin…

J.L. Carr の "A Month in the Country"

5つ星の作品にこだわり、Irene Nemirovsky の "Suite Francaise" を採りあげてから、柄にもなくお堅い話が続きすぎてしまった。問題の核心にさっぱり触れない作家よりも、深刻な問題を粗雑に扱うレビュアーのほうが、よほど罪が重いかもしれない。というこ…