ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

2011-06-01から1ヶ月間の記事一覧

Tea Obreht の “The Tiger's Wife”(1)

今年のオレンジ賞受賞作、Tea Obreht の "The Tiger's Wife" を読了。さっそく例によってレビューを書いておこう。Tiger's Wife作者: Ta Obreht出版社/メーカー: Phoenix発売日: 2011/06/01メディア: ペーパーバック購入: 2人 クリック: 13回この商品を含む…

“The Tiger's Wife”雑感(2)

やっと状況が少しのみこめてきた。昨日は、第二次大戦中、ドイツ軍の空襲を受けた街がブダペストらしいと書いたが、これは単純ミスで、ベオグラード。さっそく昨日の記事を訂正しておいた。 勘違いに気づいたのは、主人公の女医の祖父がティトー元帥を手術し…

“The Tiger's Wife”雑感(1)

今年のオレンジ賞受賞作、Tea Obreht の "The Tiger's Wife" のペイパーバック版が意外に早く手元に届いたので、予定を変更してさっそく取りかかった。既報のとおり、アメリカのサイトでは、早くも今年のベスト10に推しているところもあるくらいで、とても評…

Beryl Bainbridge の “The Bottle Factory Outing”(2)

今年の2月、5冊のブッカー賞最終候補作のカバー写真を並べただけの簡単な追悼記事を書いてから4ヵ月。やっと5分の3までレビューつきになった。ほぼ1年遅れとはいえ、東洋の島国のマイナーなブログで少しずつ「追悼読書」が進行していることを Bainbrid…

Beryl Bainbridge の “The Bottle Factory Outing”(1)

Beryl Bainbridge の "The Bottle Factory Outing" を読みおえた。Bainbridge は、生涯で5回もブッカー賞のショートリストにノミネートされながら、ついに栄冠に輝くことなく昨年7月に他界してしまった「悲運の女王」で、これは1974年の作品。彼女としては…

“The Bottle Factory Outing”雑感

昨年7月に他界した “ブッカー賞悲運の女王” Beryl Bainbridge の "The Bottle Factory Outing" に取りかかった。1974年の同賞最終候補作である。 Bainbridge の訃報を知ったのは何と今年の2月。急遽、未読だった4冊の最終候補作を入手し、4月にまず73年…

Sarah Winman の “When God Was a Rabbit”(2)

このところ体調不良につき、カバーから軽い読み物を期待して読みはじめた本書だが、第1部は大いに満足。何度かプッと噴きだした場面もあり、ぼくはこういうわかりやすいスラップスティック・コメディーが大好きだ。 その愉快さたるや、はて話の方向はどうな…

Sarah Winman の “When God Was a Rabbit”(1)

もっかイギリスでベストセラーになっている(アマゾンUKフィクション部門24位)、Sarah Winman の "When God Was a Rabbit" を読みおえた。さっそくいつものようにレビューを書いておこう。When God Was a Rabbit作者: Sarah Winman出版社/メーカー: Headlin…

“When God Was a Rabbit”雑感(2)

読んでいるうちにわかったのだが、これは2部構成。第1部は主人公 Elly の少女時代で、第2部はその15年後、Elly は27歳になっている。舞台は最初ロンドンだったが、一家はやがてコーンウォールの海辺の村に引っ越し、民宿を経営。Elly の兄が働いているニ…

“When God Was a Rabbit”雑感(1)

今日はひと仕事終えてから、もっかイギリスで大人気を博している Sarah Winman の "When God Was a Rabbit" に取りかかった。本書を発見したのは先月の中ごろだが、以来1ヵ月、ずっとベストセラー・リストの上位を走っている。 これも例によってカバーが気…

“The Memory of Love”(2)

昨日のレビューにも書いたように、これは表面的、現象的な題材としては「メロドラマそのものだ」。横恋慕、失恋、不倫。タイトルからして甘ったるい恋愛小説を連想してしまうが、それはまあ、ぼくのような文学ミーハーを引っかけようという計算が働いている…

Aminatta Forna の “The Memory of Love”(1)

今年の国際IMPACダブリン文学賞は「残念ながら」、Colum McCann の "Let the Great World Spin" に決定した。もちろん秀作には違いないのだが、これは周知のとおり、2009年に全米図書賞を受賞している(http://d.hatena.ne.jp/sakihidemi/20100128)。ダブリ…

“The Memory of Love”雑感(4)

このところ血圧がやけに低く、何だかフラフラする。おかげで昨日も思ったほど進まなかったが、相変わらずすばらしい出来ばえである。 途中で気がつき、考えてみれば当然だなと思ったのは、シエラレオネが舞台だけあって、激しかった内戦がやはり物語に影を落…

2011年ベスト10小説と “The Memory of Love” 雑感(3)

さっそく David Foster Wallace の "The Pale King" が届いたが、これは夏休み用ですな。不勉強のため未読の作家だが難物らしいし、何しろ分厚い。しかし「サロン・ドット・コム」にも載っている著名作家なので、いつかは try しなくては。 ところで、どれだ…

“The Memory of Love”雑感(2)

今年のオレンジ賞を受賞した Téa Obreht の "The Tiger's Wife" は大変評判がよく、ネットで検索してみると、早くもアメリカの2011年ベスト10に選んでいるサイトもあるほどで、ペイパーバック版が届くのが楽しみだ。このベスト10にはどういうわけか、未刊行…

今年のオレンジ賞と “The Memory of Love” 雑感(1)

このところの過労のせいか今日はダウン。仕事を休み、midafternoon まで臥せっていた。その後なんとか動けるようになり、今年の英連邦作家賞(Commonwealth Writers' Prize)受賞作で、オレンジ賞最終候補作でもある Aminatta Forna の "The Memory of Love"…

Winifred Holtby の “South Riding”(3)

さて、D・H・ロレンスやイーヴリン・ウォー、グレアム・グリーンなどの作品と本書の決定的な違いは何か。それは大ざっぱに言うと、「古き佳きイギリスの伝統的な価値観やモラルを基盤にし」ているのか、それとも、さらにその奥を掘り下げようとしているの…

Winifred Holtby の “South Riding”(2)

ああシンドかった、というのが率直な感想。超多忙なおり、当初から「読む本を間違えた」と思ったものだが、案の定、えらく時間がかかってしまった。こんなとき、自分に合わない本はさっさと放り出せ、という趣旨のアドバイスを語学指南書などでよく見かける…

Winifred Holtby の “South Riding”(1)

今年の2、3月ごろイギリスでベストセラーだった Winifred Holtby の遺作、"South Riding" (1936) をようやく読了。さっそくレビューを書いておこう。South Riding作者: Winifred Holtby出版社/メーカー: BBC Books発売日: 2011/06/06メディア: ペーパーバ…

“South Riding”雑感(4)

相変わらずカタツムリ君だが、何とか頂上が見えるところまでたどり着いた。これ、ページ数としてもかなり長いが、それ以上に長く感じられる、ほんとにシンドイ小説だ。 その最たる理由のひとつは、山場が少ないからではないかと思う。後半に入ってまずまず引…