米アマゾンが選んだ年間優秀作品の一つ、Dinaw Mengestu の "The Beautiful Things That Heaven Bears" は、ガーディアン紙の処女長編賞受賞作でもある。http://www.amazon.com/gp/feature.html/ref=amb_link_5833012_13?ie=UTF8&docId=1000158641&pf_rd_m=ATVPDKIKX0DER&pf_rd_s=center-5&pf_rd_r=191VXDGAMF8E2XEZ5R4T&pf_rd_t=101&pf_rd_p=324314401&pf_rd_i=383166011
The Beautiful Things That Heaven Bears
- 作者: Dinaw Mengestu
- 出版社/メーカー: Riverhead Books
- 発売日: 2008/02/05
- メディア: ペーパーバック
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…テーマは最後の一ページに集約されている。要は宙ぶらりんの移民生活ということだが、途中の苦労話も含めておなじみの題材にもかかわらず読ませる。定番ながら現在の時間進行に回想を混ぜあわせた構成が見事だし、歯切れのいい文体のおかげで暗い話が妙に明るく感じられるほどだ。
が、結局のところ、この「明るさ」を生みだしているのは主人公のたくましさだと思う。最後のワンセンテンスが示すように、男は悲哀を感じつつも絶望はしていない。そのたくましさに救いがある。本書の題名はダンテの『神曲・地獄篇』の一節からとったものだそうだが、エチオピア革命で父親を殺されたり、地上げにあって店の経営が苦しくなったりしても、地獄の中にも救いありといったところだろうか。
また、ここでは人間観察の妙も楽しめる。高級レストランで働いているコンゴ出身の友人が主人公に店への訪問を勧めておきながら、いざ訪ねてみると何とも形容しがたい顔をする。作者自身の体験ではないかと思えるほどリアルな場面で忘れられない。そして何より、ちょっとした一言で感情の食い違いが生じる男と女の関係。よくある話だが、不安定な移民生活を象徴する一件だけに胸を締めつけられる。移民系作家の作品をシリーズ化している出版社もあるようなので、いずれ翻訳も出るのではないか。