ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

2020-01-01から1年間の記事一覧

Hilary Mantel の “The Mirror & The Light”(4)と Wolf Hall Trilogy

そろそろ、まじめに落ち穂拾いをしておこう。Mantel を読むのはこれで3冊目。しかも前作から8年もたっているとはいえ、3部作の最終巻とあって馴じみやすく、すぐに作品世界に入っていくことができた。 と同時に、前2巻の場合とはちがった観点から考える…

Hilary Mantel の “The Mirror & The Light”(3)

今回も大したことは書けそうにない。ぼくは本書を読むまで知らなかったが、16世紀前半、イングランドではペストが流行していたようだ。But now there are rumours of plague and sweating sickness. It is not wise to allow crowds in the street, or pack …

Hilary Mantel の “The Mirror & The Light”(2)

その後、本書は今年の小説文学賞ショートリストに入選。下馬評では3番人気のようだ。ちなみに、1番人気は Maggie O'Farrell の "Hamnet"(2020 未読)。彼女の名前を見かけるのは、2006年の "The Vanishing Act of Esme Lennox"(☆☆☆)以来だ。 その下馬評…

Hilary Mantel の “The Mirror & The Light”(1)

ゆうべ、Hilary Mantel の最新作 "The Mirror & the Light"(2020)を読了。ご存じ Wolf Hall Trilogy の最終巻で、第1巻 "Wolf Hall"(2009 ☆☆☆☆★)、第2巻 "Bring up the Bodies"(2012 ☆☆☆★★)に引きつづき、Mantel 3度目のブッカー賞受賞なるか、と現…

"The Mirror & The Light" 雑感

先月アマゾンUKで注文したブルーレイ盤 "Ivan's Childhood" が、到着予定日を2週間も過ぎたというのにまだ届かない。On the way, but running late とのことだが、これも新型コロナウイルスの感染拡大の影響だろうか。 一方、ほぼ同時に頼んだ Hilary Mante…

Yevgeny Zamyatin の “We”(5)とディストピア小説選

前々回だったか、mathematical infallible happiness(p.2)という本書の一節を引用したが、同様のくだりはほかにもある。the great strength of logic purifies everything (p.22) there is nothing happier than digits, living according to the well-co…

Yevgeny Zamyatin の “We”(4)

世間には「コロナ疲れ」という言葉があるそうだが、ぼくは「コロナ・ニュース疲れ」。当初こそ、自分は何ができるか、何をすべきか、何をしてはならないか、という観点からいろいろ知識を得ようとしたものだけど、そのうちフェイクニュース、偏向報道とりま…

Yevgeny Zamyatin の “We”(3)

"We" を読みながら、そして読んだあとも考えたのだが、全体主義には二種類あるかもしれない。ひとつはフランス革命あたりを起源とするもので、ある観念(理念、理想)に端を発し、その観念が社会や国家全体で実現されることを目指す全体主義である。 たとえ…

Yevgeny Zamyatin の “We”(2)

このところ新型コロナウイルスの感染が急速に拡大し、事態は悪化の一途をたどっている。そこで思い出したのが「十日の菊」という言葉。 いま『大辞林』をひくと、「時期遅れで役に立たないもののたとえ」とある。つまり、賞味期限切れ、である。転じて、ある…

Yevgeny Zamyatin の “We”(1)

諸般の事情で途中、何度か中断しながらも、おとといやっと Yevgeny Zamyatin の "We"(1920)を読了。ロシア語版原書の刊行年は Penguin 版の記述による。きのうレビューを書こうと思ったが書けなかった。きょうはどうだろう。 We 作者:Zamyatin, Yevgeny 発…

“We” 雑感

パンデミック。恐ろしい響きだ。いまやのんびり小説を読んでいられないような気もするが、とりあえず枕元には『舟を編む』。テレビ放映された映画を観たきり、原作のほうは長らく積ん読だった。バタンキューとなる夜もあるけれど、かなり面白い。 "The Mirro…

Ian Williams の “Reproduction”(3)

ご存じの方も多いと思うが、先日、Hilary Mantel の最新作 "The Mirror & the Light" が刊行された。かの Wolf Hall Trilogy の掉尾を飾るもので、第1作 "Wolf Hall"(2009 ☆☆☆☆★)、第2作 "Bring up the Bodies"(2012 ☆☆☆★★)につづいて、3度目のブッカ…

Ian Williams の “Reproduction”(2)

先日、勤務先の今年(2019年)度の業績がほぼ判明。前年にくらべ相当悪化したものの、2月にぼくが在宅勤務でこなした分野では成功をおさめたので、やけ酒半分、祝杯半分、ほろ酔い気分で少しばかり高い買い物をしてしまった。財布のひもをゆるめられるのも…

Ian Williams の “Reproduction”(1)

数日前に昨年のギラー賞受賞作、Ian Williams の "Reproduction"(2019)を読みおえたのだが、これまで諸般の事情というやつで、なかなか感想をまとめる時間が取れなかった。新型コロナウイルスのことも話題にしたいけれど、とりあえずレビューをでっち上げ…

"Reproduction" 雑感 (2)

北陸旅行から帰ってきて約2週間。どうやら新型肺炎には感染していなかったようだ。が、1週間前に税務署へ確定申告に出かけ、混雑のなかでかなり手間取ってしまったのが気になる。ぼくはもともと風邪を引きやすいほうで、ついきのうも鼻水が止まらなくなり…

"Reproduction" 雑感

数日前に入ったメールへの対応が、どうやら最後の仕事だったようだ。よもやもうリクエストはあるまい、とやっと安心したところ。 それまで夜討ち朝駆けとは言わないまでも、チャリンとケータイの着信音が鳴るたびに仕事の入ることが多く、パソコンでも同じメ…

Loius-Ferdinand Céline の “Journey to the End of the Night”(3)

前回、これからは「残務整理のようなものだ」と書いたテンプの仕事、いざ始まってみると目が回るような忙しさで、今週までテンテコ舞いだった。しかも、たしかに来月から出勤はしなくていいものの、メールのやりとりで在宅勤務を強いられることが判明。文明…

Loius-Ferdinand Céline の “Journey to the End of the Night”(2)

先週は3連休もあったけど、ぼくはそんなことに関係なく最後の仕事の突貫工事。近所の公園で行われたどんど焼きに参加したくらいで、あとはほとんどデスクに向かっていた。 その甲斐あって、きょうの午前中でやっと一連の作業が終了。来週からは残務整理のよ…

Loius-Ferdinand Céline の “Journey to the End of the Night”(1)

ゆうべ、Loius-Ferdinand Céline の "Journey to the End of the Night"(1932, 英訳1983)をやっと読了。さっそくレビューを書いておこう。 Journey to the End of the Night (New Directions Paperbook) 作者:Louis-Ferdinand Celine,Ralph Manheim 出版社…

“Journey to the End of the Night” 雑感

きょうは仕事始め、と言いたいところだが、じつは三が日もちょっとだけ〈自宅残業〉。元日も例年どおり鶴岡八幡宮に初詣のあと、お雑煮が出来るまでデスクに向かっていた。 3日にひと区切りがつき、4日からべつの作業を開始。どれも自分で企画した仕事なの…