ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

2011-03-01から1ヶ月間の記事一覧

“The Lacuna”雑感(2)

このところ計画停電が中止になり、わが家の生活もまあ平常に戻ってきたが、今日は年度末の大晦日。明日入社式をひかえた娘が入寮のため家を出ていった。「魔女の宅急便」のキキのお父さんの心境だ。 一方、本書のほうはさほど進んでいない。今読んでいるくだ…

“The Lacuna”雑感(1)

このところ血圧が高く、どうもフラフラする。旅行中に降圧剤を切らし、その後も計画停電などで何かと気ぜわしく、医者に行くのが遅くなったせいだが、うちの近所ではさすがに医薬品は不足していない。かみさんによると、ぼくの健康食である納豆とヨーグルト…

今年のオレンジ賞

夕べの特別音楽番組をたまたま少しだけ見たが、久しぶりに聴いた平原綾香の「Jupiter」がとてもよかった。こんな時だからこそ心にしみるのか。大学時代の友人も、「震災にあった人たちのことを思うと文句は言えないが、このバタバタですっかり疲れ果てた」と…

Jon McGregor の “Even the Dogs”(2)

昨日は本書のレビューを書いたあと銀座に出かけ、同僚の結婚式の二次会に参加。電車の中は空調を切っている関係でやけに寒く、途中寄った本屋も薄暗い。でもまあ、酒が飲めるだけでもありがたいと思わなければ。 閑話休題。本書の文体については雑感や昨日の…

Jon McGregor の “Even the Dogs”(1)

Jon McGregor の最新長編 "Even the Dogs" を読みおえた。さっそくいつものようにレビューを書いておこう。(その後、本書は2012年の国際IMPACダブリン文学賞を受賞しました)。Even the Dogs作者:McGregor, JonBloomsbury Publishing PLCAmazon[☆☆☆★★] 年の…

“Even the Dogs”雑感

夕べのわが家は、ぼくにとって2度目の夜の計画停電。娘は戦争体験もないのに戦時中みたいとつぶやき、さっさと自室に戻って布団の中にもぐりこんだらしい。かみさんはこたつに入って友人にメール。ぼくもその横で、電池がもったいない、目がもっと悪くなる…

Colm Toibin の “The Empty Family”(2)

雑感にも書いたとおり、表題作の第3話を読みかけていたときに地震に遭遇。その後、被災地ほどではないにしても生活が急変し、また奈良・京都旅行を決行したのはいいが、旅行中の残務整理やら何やらに追われ、本書を読むのはすっかり後回しになってしまった…

Colm Toibin の “The Empty Family”(1)

予定より大幅に遅れてしまったが、何とか Colm Toibin の最新短編集 "The Empty Family" を読みおえた。さっそくまずレビューを書いておこう。 追記:本書は2011年のフランク・オコナー国際短編賞の最終候補作でした。The Empty Family: Stories作者: Colm T…

“The Empty Family”雑感(4)

おととい京都から帰ってきた。おみやげは定番の八つ橋やちりめん山椒などのほか、かみさんのリクエストで米とパンとカップ麺。いずれも近所のスーパーマーケットでは入手困難だという。そういえば、奈良・京都でも単1電池は完売。被災地や首都圏でもないの…

“The Empty Family”雑感 (3)

昨日から古都旅行。旅先の奈良のホテルでこれを書いている。ケータイ利用なので非常に書きにくい。 こちらはずっと天気もよく、連日のどかそのもの。大変な事態になってしまった首都圏とは大違いだが、奈良市内で買ったのは、かみさんのリクエストで電池と懐…

“The Empty Family”雑感(2)

職場に一泊後、今日は電車が止まっていたので同僚の車で早めに帰宅。こんな途方もない大惨事に接すると、月並みな感想だが、人間の力ではどうしようもない運命の恐ろしさと、はかない人間の無力さを感じてしまう。 とはいえ、昨夜は家族の安全を確認したあと…

“The Empty Family”雑感(1)

いや怖かった、今日の地震。生きた心地がしなかった。こんな中でもアクセスしてくださったみなさん、アクセスされたということは大丈夫だったんですね。こんな日に記事を書くなんて不謹慎とは思ったが、今は夜中。結局、職場に泊まる羽目になってしまったも…

Heidi W. Durrow の “The Girl Who Fell from the Sky”(2)

さて今日は本書の続き。たった2冊とはいえ、べつの本について1日おきに書くのは初めてで、ボケた頭がこんがらがらないようにするだけでも大変だ。 で、改めて表紙をながめてみると、Bellwether Prize 受賞作との宣伝文句が…。この賞には何となく記憶がある…

Tom Rachman の “The Imperfectionists”(2)

昨日の飛び入りで順番が狂ってしまい、本書のモードに頭を戻すのが大変だが、さいわいメモ書きがのこっているので、それをもとに少しだけ補足しておこう。 登場人物はみんな、「対人的、外見的にはタフな人物もふくめ、心の中ではいちように鬱屈し、悩み苦し…

Heidi W. Durrow の “The Girl Who Fell from the Sky”(1)

昨日の夕食後、もっかニューヨーク・タイムズ紙の Trade Paperback 部門ベストセラー第15位、Heidi W. Durrow の "The Girl Who Fell from the Sky" に取りかかった。これがまたクイクイ読める作品で、通勤中はもちろん職場でもヒマを見つけて読みつづけ、帰…

Tom Rachman の “The Imperfectionists”(1)

去年の話題作のひとつ、Tom Rachman の "The Imperfectionists" を読みおえた。さっそくレビューを書いておこう。The Imperfectionists: A Novel (Random House Reader's Circle)作者: Tom Rachman出版社/メーカー: Dial Press Trade Paperback発売日: 2011/…

“The Imperfectionists”雑感

べつにゴロを合わせているわけではないが、"The Sentimentalists" に続いて今度は、Tom Rachman の "The Imperfectionists" に取りかかった。先日読んだ "Super Sad True Love Story" 同様、去年のメディア露出度ではベスト10に入る評判作で、あちらは Michi…

Johanna Skibsrud の “The Sentimentalists”(2)

ぼくが読んだのはカナダ版のペイパーバックだが、流通関係の問題があるのか、日英米の通販ではまだ入手できないようだ。書店の状況はわからない。ともあれ、雑感にも書いたとおり、これは同じく現地から取り寄せた Alexander MacLeod の "Light Lifting" と…

Johanna Skibsrud の “The Sentimentalists”(1)

去年のギラー賞(Scotiabank Giller Prize)受賞作、Johanna Skibsrud の "The Sentimentalists" を読みえた。さっそくいつものようにレビューを書いておこう。The Sentimentalists作者: Johanna Skibsrud出版社/メーカー: W W Norton & Co Inc発売日: 2011/…

“The Sentimentalists”雑感(2)

ううむ、こういう秘密の「ベールが少しずつはがされ」るような展開の小説は、どうも途中経過を報告しにくいですな。どこまで書けばネタばらしにならないのか難しいし、それより何より、いくら「かなり回りくどい」といっても、それをじっくり味わってこそ楽…

“The Sentimentalists”雑感(1)

一つだけ "Super Sad True Love Story" の補足をしておくと、「機械というのは、とことん進歩せずにはいられないものだ、という気がしている」ぼくは、一方、人間は少なくとも精神面ではさほど進歩しないのではないか、とかなり疑っている。べつに確かめたわ…

Gary Shteyngart の “Super Sad True Love Story”(3)

今日は「現代人は愛しうるか」というテーマを離れて本書をながめてみよう。ここで描かれている高度に発達した情報社会には慄然とするものがある。街路には、通行人の資産状況を瞬時に公開する探知機が設置され、会社へ行くと、社員の忠誠度や心理状態などを…