ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

2012-08-01から1ヶ月間の記事一覧

Deborah Levy の “Swimming Home” (2)

帰省2日目。今日はまず、ふるさと宇和島の宣伝から。宇和島に行く機会があったらぜひ鯛めしを食べてください。絶品です! ぼくの同僚でも何人かは知っていた。東京だと渋谷で食べられるのでは。ゆうべは駅前のに行ったが、ぼくはここがいちばんお気に入り。…

Jeet Thavil の “Narcoplolis” (2)

今日から愛媛の田舎に帰省。わが街、宇和島に1軒だけあるネットカフェでこれを書いている。途中松山に寄り、いつものようにでうどんを食べてから、大街道のサンシャインで『プロメテウス』を鑑賞。3D映画を観るのは初めてだったのでビックリしたが、今月…

Deborah Levy の “Swimming Home” (1)

今日も "Narcopolis の落ち穂拾いができなくなった。同じく今年のブッカー賞候補作、Deborah Levy の "Swimming Home" を読みおえ、そのレビューを書くことにしたからだ。"Narcopolis" の記憶が薄れていくのが心配だ。なお、"Swimming Home" のぶんもあわせ…

Alison Moore の “The Lighthouse” (2)

"Narcopolis" の落ち穂拾いもしなければならないが、昨日読んだ "The Lighthouse" のほうがぼくにはずっと楽しかったので、まずそちらから。 じつはこれ、点数評価をさんざん迷った作品である。ゆうべはいったん、☆☆☆★★★に落ちついたのだが、一夜明けてじっ…

Alison Moore の “The Lighthouse” (1)

今日はもともと、昨日の続きで "Narcopolis" の落ち穂拾いをするはずだったが、つい先ほど、同じく今年のブッカー賞候補作、Alison Moore の "The Lighthouse" を読了。記憶が薄れないうちにそのレビューを書いておくことにした。The Lighthouse (Salt Moder…

Jeet Thayil の “Narcopolis” (1)

今年のブッカー賞候補作、Jeet Thayil の "Narcopolis" を読了。さっそくレビューを書いておこう。Narcopolis作者:Thayil, JeetFaber & FaberAmazon[☆☆☆★] 1980年代初期に実在したかもしれぬ〈麻薬都市〉ボンベイ。本書はそれを紙上で再現しようとした試みで…

“Narcopolis” 雑感 (2)

「だんだん盛り上がるのを期待するしかありません」と昨日書いたのがよかったのか、中盤に入ってけっこうおもしろくなってきた。序盤では各エピソードがさほど熟さないまま焦点が移動し、雑然としたピンぼけ状態だったが、ボンベイのアヘン窟の経営者 Mr Lee…

“Narcopolis” 雑感 (1)

おとといの晩、久しぶりに飲み会があり、その席でドストエフスキーやオーウェルなどの話も出てきて大いに盛り上がった。みんなの話を聞いているうちに、ぼくの根っこの部分にはドストエフスキー体験があったんだな、と実感。じつはたまたま、〈文学の夏シリ…

Paul Auster の “Winter Journal” (2)

うかつなことに、しばらく読み進んでからやっと本書が小説ではないことに気がついた。新刊ニュースを知ったとき、もし自伝だとわかっていたら予約注文はしなかったかもしれない。ぼくはべつにオースターの熱心なファンというわけではなく、彼がどんな人生を…

Paul Auster の “Winter Journal” (1)

予約注文していた Paul Auster の最新作、"Winter Journal" が意外に早く届き、正式な発売日の今日読みおえた。さっそくレビューを書いておこう。Winter Journal作者:Auster, PaulHenry Holt & CoAmazon[☆☆☆★★★] 2011年1月から、冬のさなかにポール・オース…

Nicola Barker の “The Yips” (3)

Barker の旧作 "Darkmans" を読んだのは5年も前のことなので、レビュー以外にどんな駄文を綴っていたのだろうと検索してみたら、「本書("Darkmans")を構成する主な要素はどれも尻切れトンボ。読んでいるときは確かに面白いのだが、さてその意味は?となると…

Nicola Barker の “The Yips” (2)

これで今年のブッカー賞候補作を読んだのは3冊目だが、ぼくには本書がいちばんしっくりきた。William Hill で相変わらず1番人気の "Bring up the Bodies" (3/1)よりいいと思う。先週読んだ "The Unlikely Pilgrimage of Harold Fry" が3番人気(6/1)で、こ…

Nicola Barker の “The Yips” (1)

今年のブッカー賞候補作、Nicola Barker の "The Yips" をやっと読みおえた。さっそくレビューを書いておこう。The Yips作者:Barker, NicolaFourth Estate LtdAmazon[☆☆☆★★★] 人生はおよそ不条理で無意味、混沌としてなんの脈絡もなく、予想外の事件が偶発的…

“The Yips” 雑感 (3)

仕事の進みぐあいにもよるが、明日にはなんとかレビューが書けそうなところまで読み進んだ。フーフー。残暑厳しいなか、エアコンのないわが家で首筋に保冷パックを当てながら分厚い本を読んでいると、何やら自虐的な快感さえ覚える。洋書オタクの面目躍如で…

“The Yips” 雑感 (2)

今日も午前中は仕事に励み、昼から読書。夜は映画を観ることにしているので、大急ぎで昨日の続きを。(いいなあ、お盆休みって)。 8月にブッカー賞の候補作を何冊かまとめて読むようになったのは最近のことだが、いつも必ず1冊は大作があるもので、今年は…

“The Yips” 雑感 (1)

世間はお盆休みだが、ぼくは仕事がたまっているのでけっこう忙しく、実質的に在宅勤務。とはいえ、仕事ばかりだとストレスがたまるのでボチボチ本を読んでいる。今年のブッカー賞候補作の中から、今度は Nicola Barker の "The Yips" を選んでみた。 Barker …

Rachel Joyce の “The Unlikely Pilgrimage of Harold Fry” (2)

結局これは、去る6月、ちらっとシノプシスを読んだときの「何となくヤワな感じ」という先入観を消せないまま終わってしまった。もちろん凡作ではないし、それどころか、こういうヒーリング小説に安らぎを覚える読者がいても決してフシギではない。だからこ…

Rachel Joyce の “The Unlikely Pilgrimage of Harold Fry” (1)

今年のブッカー賞候補作、Rachel Joyce の "The Unlikely Pilgrimage of Harold Fry" を読了。さっそくレビューを書いておこう。(後記:本書は2023年、ヘティ・マクドナルド監督作品として映画化され、日本でも公開されました。邦題は『ハロルド・フライの…

“The Unlikely Pilgrimage of Harold Fry” 雑感

〈世界文学の夏〉シリーズは重い内容が続いたのでひと休み。気分転換に今度は例年どおり、新しいブッカー賞の候補作に取りかかった。まず Rachel Joyce の "The Unlikely Pilgrimage of Harold Fry" を選んだのは、本書には因縁があるからだ。まだ今年のロン…

Ismail Kadare の “The Palace of Dreams” (2)

私的な〈世界文学の夏〉シリーズ第2弾だったが、今回もまた、「こういう作品を平和な時代に読んだあと、星印で評価することに何の意味があるのだろう……と疑問を感じながら採点してしまった。英米の最新作ではあまり出会うことのない世界がここには広がって…

Ismail Kadare の “The Palace of Dreams” (1)

アルバニアの有名な作家 Ismail Kadare の代表作のひとつ、"The Palace of Dreams" を読みおえた。原作は1981年に出版され、英訳は同93年刊。さっそくレビューを書いておこう。The Palace Of Dreams作者:Kadare, IsmailVintage ClassicsAmazon[☆☆☆★★] 恐怖の…

“The Palace of Dreams” 雑感

日曜日は例によってダラダラ過ごしたので、今日から気分一新、Ismail Kadare の "The Palace of Dreams" に取りかかった。「え、遅れてる!」という声が聞こえてきそうですね。お恥ずかしい次第です。 Ismail Kadare の作品を読むのは "The Three-Arched Bri…

Irene Nemirovsky の “All Our Worldly Goods” (2)

今日は出勤日で、しかもけっこう仕事があり、〈スタバ〉に寄るゆとりもなく帰宅。疲労困憊しているが、一杯やるまでに何とか昨日の続きを書いておこう。 本書は内容的に "Suite Francaise" への導入編といったところだ。同書が第2次大戦勃発時のパリから始…

Irene Nemirovsky の “All Our Worldly Goods” (1)

今日も家に帰る途中、〈スタバ〉に寄って読書。Irene Nemirovsky の "All Our Worldly Goods" を意外に早く読みおえることができた。仏語の原作は作者の死から5年後、1947年に出版され、英訳の本書ハードカバーは2008年刊。さっそくレビューを書いておこう…

“All Our Worldly Goods” 雑感

みなさん同様、「暑いですなあ」というのがこの連日のあいさつだ。おととい読みおえたSF青春小説 "The Age of Miracles" にも炎熱地獄の中、停電、節電、配電の話が出てきて他人事ではなかった。毎日、〈スタバ〉に寄って涼んで帰るのが日課となっている。…

Karen Thompson Walker の “The Age of Miracles” (2)

雑感にも書いたようにぼくはSFの名作をかなり読みのこしているので、これはあくまでも勝手な推測だが、本書で展開されている終末の世界は、もしかしたら前例があるかもしれない。「太陽嵐が吹き荒れ、強い放射線が降りそそぐ」事態というのは、どこかで読…