ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

ピューリツァー賞

Colson Whitehead の “Nickel Boys”(2)

クラシック・ファンならご存じのとおり、きょうはモーツァルトの命日。ぼくも先ほどまで、手持ちのレクイエムを流しながら、2018年の Shadow Giller 賞受賞作、Eric Dupont の "Songs for the Cold of Heart"(2012)を読んでいた。 Shadow Giller 賞とは、…

Colson Whitehead の “The Nickel Boys”(1)

さる7日、某大手通販会社からのメールに驚いたひともけっこういるのではないか。今年のブッカー賞最終候補作のひとつ、"Real Life" のペイパーバック版が今月初めに日本でも発売され、7日までに到着という運びになっていた。ところが同日、なんの理由説明…

William Faulkner の “A Fable”(1)

ゆうべ、William Faulkner の "A Fable"(1954)を読了。1955年のピューリツァー賞および全米図書賞受賞作である。さっそくレビューを書いておこう。 A Fable (Vintage International) (English Edition) 作者:Faulkner, William 発売日: 2011/05/18 メディ…

文学と政治:Rebecca Makkai の “The Great Believers” (2)

大型連休前半終了。ぼくは前回の記事を書いたあと、初孫のショウマくんともども、愛媛の田舎に帰省していた。ホームに入寮中のひいばあちゃんにショウマくんを会わせるためである。 田舎はあいにく雨続き。一枚だけ撮った風景写真は、宇和島市内の道の駅〈き…

2019年ピューリツァー賞発表

アメリカ東部時間で4月15日午後3時、今年のピューリツァー賞(本ブログではいままで「ピューリッツァー賞」と表記していましたが、今回から『ロングマン英和辞典』の表記に改めました)が発表され、小説部門では、Richard Powers の "The Overstory"(2018…

Rebecca Makkai の “The Great Believers”と今年のピューリツァー賞予想

ゆうべ、Rebecca Makkai の "The Great Believers"(2018)を読了。周知のとおり、これは昨年のニューヨーク・タイムズ紙選ベスト5小説のひとつである。ぼく自身、これで同紙のベスト5小説は久しぶりにぜんぶ読んだことになる。さっそくレビューを書いてお…

Tommy Orange の “There There”(2)

このところ〈自宅残業〉の毎日だが、きょうは意外に早くノルマを達成。余裕ができたのでドラ息子の誘いに乗り、初孫のショウマくんともども、横浜・大岡川ぞいの桜並木を見物しに出かけた。あいにくパッとしない空模様だったけれど、これなどは比較的よく撮…

Tommy Orange の “There There”(1)

Tommy Orange の "There There"(2018)を読了。周知のとおり、これは昨年のニューヨーク・タイムズ紙選ベスト5小説のひとつである。また P Prize.com の予想によれば、3月5日現在、今年のピューリッツァー賞レースでも、Rachel Kushner の "Mars Room"(…

Andrew Sean Greer の “Less”(2)とゲイ小説名作選

本書のピューリッツァー賞受賞は意外と思った人が多いかもしれない。P Prize. com の直前予想では泡沫候補扱いだったからだ。 本命視されていたのは、昨年の全米図書賞受賞作、Jesmyn Ward の "Sing, Unburied, Sing"(☆☆☆★★)。ついで、今年(対象は昨年)…

Andrew Sean Greer の “Less”(1)

今年のピューリッツァー賞受賞作、Andrew Sean Greer の "Less"(2017)を読了。さっそくレビューを書いておこう。Less (Winner of the Pulitzer Prize): A Novel (The Arthur Less Books, 1)作者:Greer, Andrew SeanBack Bay BooksAmazon[☆☆☆★★] おれの、わ…

Elizabeth Strout の "Abide with Me" と "Olive Kitterridge"

ゆうべの記事をかいたあと確認したところ、Elizabeth Strout の旧作 "Abide With Me"(2006)と "Olive Kitteridge"(2008)の昔のレビューを公開していないことがわかった(追記:後日、すでに公開ずみであることが判明しましたが、この記事の削除はしてい…

2017年ピューリツァー賞発表(2017 Pulitzer Prize for Fiction)

あれま、Colson Whitehead の "The Underground Railroad" が、今年のピューリツァー賞を受賞してしまった。昨年の全米図書賞に続いて2冠達成。ぼく自身は、そんなにすごい傑作とは思わなかったけれど、文学にはいろんな見方や評価があっていい。ともかく、…

Viet Thanh Nguyen の “The Sympathizer” (2)

前にも書いたとおり、これは P Prize. com の予想では、今年のピューリッツァー賞の泡沫候補に近かった。が、ふたをあければ逆転受賞。下馬評にのぼったほかの作品や、最終候補作の "Get in Troubles: Stories" (未読) などと読みくらべたわけではないが、本…

Viet Thanh Nguyen の“The Sympathizer” (1)

ゴールデンウィーク中、仕事のあいまに読んでいた今年のピューリツァー賞受賞作、Viet Thanh Nguyen の "The Sympathizer" をやっと読了。さっそくレビューを書いておこう。The Sympathizer: A Novel (Pulitzer Prize for Fiction)作者:Nguyen, Viet ThanhGr…

2013年ピューリッツァー賞発表 (2013 Pulitzer Prize Winner for Fiction)

ニューヨーク時間で15日、今年のピューリッツァー賞が発表され、小説部門では Adam Johnson の "The Orphan Master's Son" がみごと栄冠に輝いた。ぼくはつい先日、最終予想で同書をイチオシにあげ、「この秀作をもうそろそろ、ちゃんと評価してほしい」と書…

2013年ピューリッツァー賞最終予想(final Pulitzer Prize prediction list for 2013)

いささか旧聞に属するが、去る3月27日、PPrize. Com による毎年恒例のピューリッツァー賞最終予想が発表された。これを見ると、最初の予想から6作ほど入れ替わっているが、上位の作品はほとんど動いていない。 ぼくの予想というかイチオシは、Adam Johnson…

2013年ピューリッツァー賞「候補作」(2013 Pulitzer Prize “Finalists”)

まず、"A Hologram for the King" の落ち穂拾いから。きのうはネクラな話になってしまったので、きょうは同書に出てくる爆笑物のジョークを紹介しておこう。ぜんぶで6つあるうち、知り合いのアメリカ人とオーストラリア人にお気に入りを選んでもらったとこ…

Adam Johnson の “The Orphan Master's Son” (1)

米アマゾンの上半期ベスト10小説のひとつ、Adam Johnson の "The Orphan Master's Son" をやっと読みおえた。さっそくレビューを書いておこう。 追記:その後、本書は2013年のピューリッツァー賞を受賞しました。The Orphan Master's Son: A Novel作者:Johns…

今年のピューリツァー賞とオレンジ賞最終候補作など

"Ten Thousand Saints" について少し補足しようと思ったが、父の逝去でしばらく田舎に帰省していたせいか、頭がまだ働かない。そこで今日は、最近発表された文学賞の受賞作や候補作をならべてお茶を濁しておこう。 まずピューリツァー賞だが、これは帰省中も…

今年のピューリッツァー賞予想

読みはじめた本はあるのだが、多忙につき雑感を書くほども進んでいないので、今日は発表が迫ってきた今年のピューリッツァー賞の予想を。といっても、周知のとおり、この賞のショートリストは受賞作と同時に発表されるので、不勉強のぼくは PPrize.com の予…

Denis Johnson の “Train Dreams” (1)

今日はもともと、昨日の続きで Siri Hustvedt の "The Summer without Men" について駄文を綴るはずだったが、意外に早く Denis Johnson の "Train Dreams" を読みおえたので、印象が薄れぬうちにそのレビューを書くことにした。パブリシャーズ・ウィークリ…

Jennifer Egan の “A Visit from the Goon Squad”(1)

今年のピューリッツァー賞、ならびに全米批評家(書評家)協会賞の受賞作、Jennifer Egan の "A Visit from the Goon Squad" を読了。さっそくいつものようにレビューを書いておこう。(点数評価は後日)。A Visit from the Goon Squad作者: Jennifer Egan出版…

今年のピューリッツァー賞とオレンジ賞

いさかか旧聞に属するが、今年のピューリッツァー賞の受賞作が Paul Hardingの "Tinkers" に決まったので、今日はまずそのレビューを再録しておこう。Tinkers作者: Paul Harding出版社/メーカー: Bellevue Literary Pr発売日: 2009/01/01メディア: ペーパー…

Paul Harding の "Tinkers"(1)

またまた予定より大幅に遅れてしまったが、昨年の米アマゾン年間最優秀作品のひとつ、Paul Harding の "Tinkers" をやっと読みおえた。いつものように、今までの雑感をレビューにまとめておこう。(後日、本書は今年のピューリツァー賞を受賞しました)Tinke…

Elizabeth Strout の "Olive Kitteridge"(1)

ピューリッツァー賞の新しい受賞作、Elizabeth Strout の "Olive Kitteridge" を昨日読み終えたので、1日遅れだが、いつものように今までの雑感をレビューにまとめておこう。Olive Kitteridge: Fiction作者:Strout, ElizabethRandom House Trade Paperbacks…

Cormac McCarthy の “The Road”

休日ながら「自宅残業」に明け暮れ、"The World Made Straight" の続きがさっぱり読めなかった。そこで例によって、今日は昔のレビュー。6月に翻訳が出た『ザ・ロード』である。 追記:その後、本書は実際に映画化され、2009年に「ザ・ロード」との邦題で公…

"Marilynne Robinson の "Gilead" と Monica Wood の "Any Bitter Thing"

全米批評家協会賞の発表が近づいてきた。未読なのに山勘で Marianne Wiggins の "The Shadow Catcher" に期待しているのは前に書いたとおりだが、今日は昔の受賞作(2004)のレビューでお茶を濁しておこう。これは2005年にピューリツァー賞も受賞している。G…

Geraldine Brooks の "March" と Irène Némirovsky の "Suite Française "

仕事の目途はだいぶついたのだが、相変わらず多忙で本が読めない。またまた昔のレビューを引用することになってしまった。March: A Novel作者:Brooks, GeraldinePenguin BooksAmazon[☆☆☆★★] 06年度のピューリッツァー賞受賞作。またもや南北戦争の話かと、大…