ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

2013-01-01から1年間の記事一覧

Donal Ryan の “The Spinning Heart” (2)

きょうはまず、本書の前に読んだ J. M. Coetzee の "The Childhood of Jesus" の補足から。 その後、カトリック信者でキリスト教に造詣の深い知人に問い合わせたところ、同書のタイトルからして、信者なら誰でもみんな、ユダヤ教の律法が支配していた旧約の…

Donal Ryan の “The Spinning Heart” (1)

アイルランドの新人作家、Donal Ryan の "The Spinning Heart" を読了。さっそくレビューを書いておこう。The Spinning Heart作者:Ryan, DonalDoubleday IrelandAmazon[☆☆☆★] アイルランドの小さな村を舞台とする、実質的にはショートショート集といってもい…

“The Spinning Heart” 雑感

アイルランドの新人作家、Donal Ryan の "The Spinning Heart" をボチボチ読んでいる。例の(どれだけ信頼できるかは疑問だが)Man Booker Prize Eligible 2013のリストで現在、第3位にランクインしている作品だ。一時は6位まで下がっていたが、いま検索する…

J. M. Coetzee の “The Childhood of Jesus” (3)

この連休は、忙中閑あり、小人閑居して不善を為す。要するにダラダラ過ごしてしまった。読みはじめた本はあるのだが、まだ途中経過を報告するほどでもないので、あと1回だけ "The Childhood of Jesus" の落ち穂拾いをしておこう。 David は常識にとらわれな…

J. M. Coetzee の “The Childhood of Jesus” (2)

話としてはおもしろかったのにな、というひとことに尽きるかもしれない。 主人公の中年男 Simon は、自分の子ではない少年 David の母親を捜しに、未来社会テーマのSFを思わせる Novilla の街にやってくる。その動機とはべつに、Simon は出会う女性に関心…

J. M. Coetzee の “The Childhood of Jesus” (1)

ノーベル賞作家 J. M. Coetzee の最新作、"The Childhood of Jesus" を読了。さっそくレビューを書いておこう。The Childhood of Jesus作者:Coetzee, J. M.Harvill SeckerAmazon[☆☆☆★★] 哲学とは「ひとを揺さぶり、ひとの人生を変えるようなもの」であるのが…

“The Childhood of Jesus” 雑感

ノーベル賞作家 J. M. Coetzee の最新作、"The Childhood of Jesus" をボチボチ読んでいる。例の Man Booker Prize Eligible 2013 のリストで発見し(第10位)、その後、The Mookse and the Gripes Forum でも好評のようなので気になった。 Coetzee の作品を…

Jim Crace の “Harvest” (2)

「最後にどんでん返しでもあるのかな」と期待しながら読んでいると、「どんでん返し」というほどではないが終盤、大きな山場。それまで「何を訴えようとしているのかよくわからな」かった本書の意図も、そこでようやく腑に落ちた……ような気がした。 「深読み…

Jim Crace の “Harvest” (1)

Jim Crace の "Harvest" を読了。今年2月にアマゾンUKが選んだ月間優秀作品のひとつで、最近はブッカー賞ロングリストへのノミネートも取り沙汰されている。さっそくレビューを書いておこう。 追記:その後、本書はブッカー賞ショートリストに入選。また201…

“Harvest” 雑感

Jim Crace の "Harvest" をボチボチ読んでいる。Crace は1997年に "Quarantine" がブッカー賞最終候補作に選ばれるなど、かなり有名な作家らしいが、ぼくは例によって不勉強で初耳。今回、この "Harvest" があちらのファンのあいだで今年の同賞〈ロングリス…

Mohsin Hamid の “How To Get Filthy Rich in Rising Asia” (3)

きょうは土曜日だが出勤。先ほど帰宅したばかりで疲労困憊。晩酌の前に、ちょっとだけ本書の落ち穂拾いをしておこう。ここで提示される蓄財のノウハウは、つぎの12ステップから成っている。 1. Move to the city 2. Get an education 3. Don't fall in love …

Mohsin Hamid の “How To Get Filthy Rich in Rising Asia” (2)

序盤を読んだだけで、本書は「最低でもブッカー賞のロングリスト、さらにはショートリストさえうかがえる出来ではないだろうか」と「ずいぶん大風呂敷を広げてしまったが」、その後、期待したほど中盤で盛り上がらず、終盤なんとか持ち直したものの、最終的…

Mohsin Hamid の “How To Get Filthy Rich in Rising Asia” (1)

Mohsin Hamid の新作、"How To Get Filthy Rich in Rising Asia" を読了。さっそくレビューを書いておこう。EXP - How to Get Filthy Rich in Rising Asia: A Novel作者:Hamid, MohsinRiverhead BooksAmazon[☆☆☆★★] まず着想がいい。タイトルどおり、あるア…

“How To Get Filthy Rich in Rising Asia” 雑感

Mohsin Hamid の新作、"How To Get Filthy Rich in Rising Asia" をボチボチ読んでいる。先日紹介したサイトに載っている Man Booker Prize Eligible 2013 のリストによると、堂々第2位の作品である。第1位は Kate Atkinson の "Life after Life" [☆☆☆★] だ…

William Trevor の “The Story of Lucy Gault” (2)

これは旧作探訪シリーズの一環。なにしろ2006年ごろ以前の作品は、気が遠くなるほどたくさん読み残している。機会を見つけて少しずつ catch up するしかない。 さて、William Trevor といえば、ご存じ短編の名手である。ぼくもあの "The Collected Stories" …

William Trevor の “The Story of Lucy Gault” (1)

2002年のブッカー賞最終候補作、William Trevor の "The Story of Lucy Gault" を読了。さっそくレビューを書いておこう。The Story of Lucy Gault作者:Trevor, WilliamPenguinAmazon[☆☆☆] 1921年、アイルランドの海を望む屋敷で暮らす八歳の少女ルーシー。…

“The Story of Lucy Gault” 雑感

いよいよブッカー賞の季節が近づいてきた。今年のロングリスト発表は7月23日とのこと。どんな作品がノミネートされそうか、あちらのファンのあいだでは、さぞ情報が飛びかっていることだろう。 ぼくも過去、何回か予想してみたことがあるが、なにしろ読書量…

Khaled Hosseini の “And the Mountains Echoed” (4)

前作 "A Thousand Splendid Suns" とくらべると、「小さくまとまってしまった」本書だが、それでも「連作短編集に近い」作品としての味わいはある。いくつか印象にのこっているエピソードの中で、ぼくのイチオシは、「ファミリー・サーガからすれば傍流にあ…

Khaled Hosseini の “And the Mountains Echoed” (3)

「待ちに待った Hosseini の新作にしてはそれほどでもない」。「もっともっと楽しませてくれてもよかったのに!」 ……とぼくが思った理由は、おとといのレビューにまとめたつもりである。それが「当初、読みはじめるとすぐに眠くな」った理由でもあり、簡単に…

Khaled Hosseini の “And the Mountains Echoed” (2)

腰の痛みはいくぶん和らいできた。しかし毎度、宮仕えの男はつらいよ、というやつで、無理をしないようにと思いつつ無理をしながら仕事をしている。早く楽隠居したいものだ。 閑話休題。雑感にも書いたとおり、この "And the Mountains Echoed" は先月末にい…

Khaled Hosseini の “And the Mountains Echoed” (1)

当初の予定より大幅に遅れてしまったが、ゆうべ、Khaled Hosseini の新作 "And the Mountains Echoed" をなんとか読了。さっそくレビューを書いておこう。And the Mountains Echoed作者:Hosseini, KhaledBloomsbury Publishing PLCAmazonAnd the Mountains E…

“And the Mountains Echoed” 雑感 (2)

相変わらず腰痛に悩まされている。歩行は可能だし、椅子に座ってパソコンを打つこともできるのだが、腰を下ろしたり立ち上がったりするのがひと苦労。同様に、寝起きもままならない。 試行錯誤の末、ロッキングチェアがいちばん楽なことに気がついた。ゆっく…

A. M. Homes の “May We Be Forgiven” (2)

いやはや、こんな絶不調は生まれて初めて、というほどの絶不調。このところ腰痛がひどく、きょうはついに欠勤してしまった。どうやら背骨の下部の関節が炎症を起こしているらしい。痛みがずっと続くようならヘルニアやガンの疑いもあるので、MRIを撮って調べ…

A. M. Homes の “May We Be Forgiven” (1)

諸般の事情で大幅に遅れてしまったが、オレンジ賞改め、Women's Prize for Fiction の受賞作、A. M. Homes の "May We Be Forgiven" を昨日、ようやく読了した。さっそくレビューを書いておこう。May We Be Forgiven作者:Homes, A.M.Granta BooksAmazon[☆☆☆★…

2013年国際ダブリン文学賞発表 (2013 IMPAC Dublin Literary Award)

いさかか旧聞に属するが、今年の国際ダブリン文学賞は、アイルランドの新人作家 Kevin Barry の長編デビュー作、“City of Bohane” に決定した。おととし書いたレビューを再録しておこう。City of Bohane作者: Kevin Barry出版社/メーカー: Jonathan Cape発売…

2013年女性小説賞発表 (2013 Women's Prize for Fiction)

女性小説賞なのか女流文学賞なのか、とにかくオレンジ賞改め、Women's Prize for Fiction の第1回受賞作は A. M. Homes の "May We Be Forgiven" に決定した。 ぼくは諸般の事情で、ようやく中盤に差しかかったところだが、おとといの日記にも書いたとおり…

2冊の雑感 (2)

あわよくば一石二鳥と思ったが、案の定、二兎を追う者は一兔をも得ず。2冊ともさっぱり進まない。 理由はもっぱら、相変わらず超多忙だからだが、最近、次々にショッキングな事件が起こり、心がどうも落ち着かないせいでもある。大学時代の友人に事件のひと…

2冊の雑感 (1)

今週は心身ともに絶不調。読書もさっぱりペースが上がらない。 まず、1冊だけ読みのこしていた今年の Women's Prize for Fiction の最終候補作、A. M. Homes の "May We Be Forgiven" に着手。なかなかおもしろく、いまのところ、☆☆☆★★★くらいの出来ばえだ…

Jim Lynch の “Truth Like the Sun” (2)

今週末はめずらしく仕事をしなかったが、近々、11年ぶりに愛媛の宇和島から母がやって来るので、庭の草取りや家の中の掃除に精を出した。昨年他界した父も、ぼくやぼくの子供たちが帰省するたびに大掃除をしていたのではないだろうか。 閑話休題。超多忙中の…

Jim Lynch の “Truth Like the Sun” (1)

Jim Lynch の "Truth Like the Sun" を読了。ニューヨーク・タイムズ紙の書評家、Janet Maslin が選んだ昨年の10 favorite books の一冊である。さっそくレビューを書いておこう。Truth Like the Sun作者:Lynch, JimBloomsbury Publishing PLCAmazon[☆☆☆★]「…