ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

2019-01-01から1年間の記事一覧

Jokha Alharthi の “Celestial Bodies”(1)

楽あれば苦あり。フランス旅行が一睡の夢のように終わったあと、帰国した翌日からボチボチ仕事を始め、今週はけっこう忙しい。といっても、自分で課したノルマをこなすだけなので、実際には、少し苦あり。 旅行中、バッグの底に忍ばせていた Jokha Alharthi …

ぼくの『マルセルの夏』

きょうの昼過ぎ、パリ経由でマルセイユから帰ってきた。マルセイユには二泊したが、観光に費やしたのは実質一日だけ。遊覧船に乗ったあと、港に面したレストランでブイヤベースに舌つづみを打っているうちに、ああ、これで今夏、いや今年のハイライトもおし…

イーデン・フィルポッツの『赤毛のレドメイン家』

きょうから3連休、ついでお盆休み。いままでテンプで復職後、ずっとオイソガシだったぼくも、ドラ娘の日程に合わせてひと息いれることにした。今晩、羽田からフランスへ飛ぶ予定になっている。 地獄の超繁忙期が終わって一週間、自分のペースで仕事をできる…

マルセル・パニョルの『マルセルのお城』

超繁忙期がやっと終わり、今週から自分のペースで仕事をしている。まあ、フツーに忙しい。 中断していた今年のブッカー国際賞受賞作、Jokha Alharthi の "Celestial Bodies"(アラビア語原作2010、英訳2018)に改めて着手。なかなか面白いけど、いまのところ…

ハーマン・ローチャーの『おもいでの夏』

ああ、やっと地獄の2週間が終わった! やむを得ぬ事情で4月から復職したとき、この超繁忙期がやって来ることはすでに覚悟していたのだけど、いざ迎えてみると、ほんとにキツかった。 それでも、5月末から準備を始めた甲斐があって、なんとか切り抜けるこ…

Max Porter の “Lanny”(2)

もっか、4月にテンプで復職して以来、いちばんの繁忙期。なので、今回はメモ書きふうに。 きょう久しぶりに過去記事をチェック。ちょうど1週間前にアップした『ひらいた窓』の拙訳をさらに修正。いちばんのポイントは姪のせりふ。少しは「それらしく」なっ…

Max Porter の “Lanny”(1)

きのうの夕方、サキの短編、実質的にはショートショート『ひらいた窓』の拙訳をアップ。それから十数ヵ所、少しずつ加筆修正している。初稿よりは、いくらかマシになったかもしれない。それでもまだ文字どおり拙訳ながら、スターを付けてくださった knana19…

サキの『ひらいた窓』

きょうも午前中は〈自宅残業〉。昼寝をしてから、きょうこそ Max Porter の "Lanny"(2019)を片づけようと取りかかったものの、途中でまた、眠りこけそうになった。つまらないからだ。イギリス現地ファンのあいだでは、今年のブッカー賞ロングリスト〈候補…

Akwaeke Emezi の “Freshwater”(2)

世間は三連休だが、ぼくは例によって午前中は〈自宅残業〉。あしたもその日程です。そうしないと仕事が間に合わない。つくづく因果な商売だけど、それでもゆうべは、有楽町の超高級ホテルでもよおされた、勤務先に関係のあるパーティーに出席。無職なら口に…

Akwaeke Emezi の “Freshwater”(1)

このところ、テンプながら復職した勤務先が超繁忙期。おかげで、ただでさえ遅読症なのに文字どおりカタツムリくんのペースだったが、それでもゆうべ、やっとのことで Akwaeke Emezi の "Freshwater"(2018)を読みおえた。今年の Women's Prize for Fiction …

"Freshwater" 雑感

あああ、6月も終わってしまいましたね。1年契約のテンプながら元の職場に復帰してもう3ヵ月。陳腐なせりふだが、あっと言うまに時が流れていった。 そのかん、読書量は激減。洋物はブログにアップしたとおりだけど、寝床読書にしても、1月から読みはじめ…

Ali Smith の “Spring”(2)

あれがこうなり、これがああなり、ここにこうしてぼくがいる。このところ、そんなことを痛感する毎日だ。先週など、満員電車の中でドア付近にしか立てず、降車駅の三つ前の駅でホームに押し出されてしまい、ああ、なんの因果か、これがああなり…と思ったもの…

Ali Smith の “Spring”(1)

きょうは日曜日。〈自宅残業〉を午前中で切り上げ、午後から Ali Smith の "Spring"(2019)に取り組んだ。最近カタツムリくんペースで読んでいたこの本、きょうしか片づけるチャンスはあるまい、と思った。そろそろまた超繁忙期がやって来るからだ。 おかげ…

Alia Trabucco Zerán の “The Remainder”(2)

超繁忙期は終わったものの、相変わらず〈自宅残業〉の毎日だ。テンプなので勤務時間が過ぎるとすぐに退勤できるのはいいのだけど、勤務時間内に片づけられなかった仕事を家に持ち帰る破目になる。因果な商売だ。 おかげで読書量も激減。いま読んでいる Ali S…

Alia Trabucco Zerán の “The Remainder”(1)

今年のブッカー国際賞最終候補作、Alia Trabucco Zerán(チリ)の "The Remainder"(原作2014、英訳2018)を読了。さっそくレビューを書いておこう。 The Remainder (English Edition) 作者: Alia Trabucco Zerán 出版社/メーカー: And Other Stories 発売日…

文学と政治:Juan Gabriel Vásquez の “The Shape of the Ruins”(2)

今週というか先週というか、とにかくこの一週間は超繁忙期につき、毎日〈自宅残業〉。きょうも日曜日なのに出勤して仕事の遅れを取り戻し、帰りにジムに寄って、なまった身体を鍛え直してきたところだ。 そんなわけで読書は小休止。その代わりストレスの発散…

2019年ブッカー国際賞発表

日本時間5月22日13時。7時間前、今年のブッカー国際賞の受賞作が発表され、オマーンの女流作家、Jokha Alharthi の "Celestial Bodies"(未読)が栄冠に輝いたとのこと。オマーンの作家はもちろん、アラビア語で書かれた作品が受賞したのも史上初めてらし…

Günter Grass の “Cat and Mouse”(2)

ブッカー国際賞の発表が迫ってきた(ロンドン時間5月21日)。去年に引き続き、今年も発表前に読んだ最終候補作は2冊だけ。 去年は現地ファンの下馬評で1番人気だった Hang Kang の "The White Book"(☆☆☆★★)と、3番人気だった Ahmed Saadawi の "Franke…

Juan Gabriel Vásquez の “The Shape of the Ruins”(1)

このところ、四月から一年契約で復帰した元の職場が繁忙期。家に帰るとぐったりで、おまけに風邪もひいてしまい、本を読むスピードがめっきり落ちてしまった。そんなこんなで、ゆうべ、やっと読みおえたのが Juan Gabriel Vásquez の "The Shape of the Ruin…

文学と政治:Annie Ernaux の “The Years”(2)

前回のあとも、Juan Gabriel Vásquez の "The Shape of the Ruins" をボチボチ読んでいる。仕事がなければクイクイ行けそうなほど面白い。 Vásquez の作品を読むのは二年ぶり二作目。2013年の国際IMPACダブリン文学賞受賞作、"The Sound of Things Falling"…

文学と政治:Luis Alberto Urrea の “The House of Broken Angels”(2)

あああ、ゴールデンウィークも終わってしまった。テンプのぼくもきょうから〈自宅残業〉ながら仕事再開。といっても、頭はいつにも増してボケ気味で、連休前のモードに戻すのにちと時間がかかってしまった。 一方、実質的に連休後半からボチボチ読んでいるの…

文学と政治:Rebecca Makkai の “The Great Believers” (2)

大型連休前半終了。ぼくは前回の記事を書いたあと、初孫のショウマくんともども、愛媛の田舎に帰省していた。ホームに入寮中のひいばあちゃんにショウマくんを会わせるためである。 田舎はあいにく雨続き。一枚だけ撮った風景写真は、宇和島市内の道の駅〈き…

Günter Grass の “Cat and Mouse”(1)

Günter Grass の "Cat and Mouse"(原作1961、英訳1997)を読了。周知のとおり、これは "The Tin Drum"(1959 ☆☆☆☆★★)に始まるダンツィヒ三部作の第二作である。さっそくレビューを書いておこう。 CAT AND MOUSE 作者: Gunter Grass 出版社/メーカー: Rando…

Orhan Pamuk の “The Museum of Innocence”(2)

大型連休の初日。ぼくも久しぶりにのんびり朝から本を読んで過ごした。こんな日は、やむを得ぬ事情で今月から元の職場に復帰して以来、初めてかもしれない。 そこでやっと、Orhan Pamuk の "The Museum of Innocence"(原作2008、英訳2009)の落ち穂拾いをす…

Annie Ernaux の “The Years”(1)

ゆうべ、横浜のさるホテルで催された某氏の米寿を祝う会に出席。ここで名前を書くと、え、とみなさんが驚くような有名人も祝辞を述べた。そのあと会場のあちこちで昔話に花が咲き、ぼくも来し方をしばし振り返った。その歳月を文字で表現するなら、どういう…

2019年ピューリツァー賞発表

アメリカ東部時間で4月15日午後3時、今年のピューリツァー賞(本ブログではいままで「ピューリッツァー賞」と表記していましたが、今回から『ロングマン英和辞典』の表記に改めました)が発表され、小説部門では、Richard Powers の "The Overstory"(2018…

"The Years" 雑感(3)

きょうは朝、ユンケルを飲んでから出勤。午前中で仕事が終わったあと、ジムでひとっ走り。長い長い一週間がやっと終わった。 電車の中で読んでいる本は相変わらず、今年のブッカー国際賞最終候補作、Annie Ernaux の "The Years" だが、相変わらず、つまらな…

"The Years" 雑感(2)

一年ぶりに職場へ復帰し、通勤ラッシュの人波にもまれる生活が再開。おかげで読書のスピードもカタツムリくん。「ブログはヒマな人がやるもの」という昔聞いた同僚の言葉を実感している。(お仕事が多忙なブロガーのみなさんを中傷する意ではありません。あ…

今年のブッカー国際賞ショートリスト予想

そろそろ Orhan Pamuk の "The Museum of Innocence" の落ち穂拾いをしなければ、と思いつつ〈自宅残業〉に追われている。その合間にボチボチ読んでいるのが Annie Ernaux(フランス) の "The Years"(原作2008、英訳2017)。ご存じのとおり、今年のブッカ…

Rebecca Makkai の “The Great Believers”と今年のピューリツァー賞予想

ゆうべ、Rebecca Makkai の "The Great Believers"(2018)を読了。周知のとおり、これは昨年のニューヨーク・タイムズ紙選ベスト5小説のひとつである。ぼく自身、これで同紙のベスト5小説は久しぶりにぜんぶ読んだことになる。さっそくレビューを書いてお…