ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

2011-01-01から1年間の記事一覧

Kyung-Sook Shin の “Please Look After Mom” (2)

これは読んでみて、ほんとによかった! Kyung-Sook Shin のことは不勉強でまったく知らなかったが、紹介記事によると韓国では有名な女流作家らしく、とりわけ本書は韓国国内だけで150万部近く売れたベストセラーとのこと。23ヵ国で翻訳が予定されているとい…

Kyung-Sook Shin の “Please Look After Mom” (1)

Kyung-Sook Shin の "Please Look After Mom" を読了。米アマゾンの今年の上半期ベスト10小説に選ばれた、韓国のミリオン・セラーの英訳版である。さっそくレビューを書いておこう。Please Look After Mom作者: Kyung-Sook Shin出版社/メーカー: Knopf発売日…

Simon Van Booy の “Love Begins in Winter” (2)

雑感にも書いたように、これでフランク・オコナー国際短編賞の受賞作を読むのは、08年の "Unaccustomed Earth"以降、4冊目ということになる。同書があまりにもよかったので、最近の受賞作にも大いに期待していたが、率直に言って、この "Love Begins in Win…

Simon Van Booy の “Love Begins in Winter” (1)

一昨年のフランク・オコナー国際短編賞受賞作、Simon Van Booy の "Love Begins in Winter" を読みおえた。さっそくレビューを書いておこう。Love Begins in Winter作者:Van Booy, Simon発売日: 2009/06/11メディア: ペーパーバック[☆☆☆★★] 愛の喜びと悲しみ…

“Love Begins in Winter” 雑感

一昨年のフランク・オコナー国際短編賞受賞作、Simon Van Booy の "Love Begins in Winter" に取りかかった。最近、この賞の catch up に励んでいて、これで受賞作を読むのは(2年前、受賞作とは知らずに読んだ "Unaccustomed Earth" もふくめて)通算4冊…

Julie Otsuka の “The Buddha in the Attic” (2)

今年のブッカー賞について、ひとつだけ補足。ぼくは "The Sense of an Ending" を読みおわった次の日 (8月19日) の日記に、「こういうストレートな秀作がブッカー賞を取ることはそう多くないのではなかろうか」と書いている。これは去年の受賞作、"The Fink…

2011年ブッカー賞発表 (2011 Man Booker Prize Winner)

本日早朝、眠い目をこすりつつ Man Booker Prize の Twitter をながめていたら、やっと受賞作が発表された。栄冠に輝いたのは、下馬評どおり Julian Barnes の "The Sense of an Ending" である。ぼくもイチオシの作品だったので、心から受賞を喜びたい。先…

Julie Otsuka の “The Buddha in the Attic” (1)

今年の全米図書賞の最終候補作、Julie Otsuka の "The Buddha in the Attic" を読了。さっそくレビューを書いておこう。 追記:その後、本書は2011年のロサンゼルス・タイムズ紙文学賞の最終候補作にも選ばれました。The Buddha in the Attic作者: Julie Ots…

Edna O'Brien の “Saints and Sinners” (2)

ある本をフランク・オコナー国際短編賞の受賞作と意識して読んだのは、これで2冊目だ。率直な感想を述べると、先月読んだ去年の受賞作、Ron Rash の "Burning Bright" よりはいいが、受賞作とは知らずに読んだ Jhumpa Lahiri の "Unaccustomed Earth" (08) …

Edna O'Brien の “Saints and Sinners” (1)

今年のフランク・オコナー国際短編賞受賞作、Edna O'Brien の "Saints and Sinners" を読みおえた。さっそくレビューを書いておこう。Saints and Sinners作者:O'Brien, Edna発売日: 2011/02/01メディア: ペーパーバック[☆☆☆★★] 技巧的にすこぶる洗練された短…

“Saints and Sinners” 雑感

今年のフランク・オコナー国際短編賞受賞作、Edna O'Brien の "Saints and Sinners" に取りかかった。同賞の受賞作を読むのは、恥ずかしながら、これでたったの3冊目。しかも、08年の "Unaccustomed Earth" にいたっては、あとから、へえ、そうなんだ、と気…

2011年全米図書賞ショートリスト発表 (The 2011 National Book Award Finalists)

オレゴン州の現地時間で12日、今年の全米図書賞の最終候補作が発表された。小説部門のリストを見ると、うれしいことに、ぼくが今年の上半期マイ・ベスト5に選んだ Tea Obreht の "The Tiger's Wife" もノミネートされている。 残念なのは、ひそかに期待して…

Michael Crummey の “Galore” (2)

いやはや、根負けしました。雑感にも書いたとおり、途中の評価としては☆☆☆★★だったのに、最終的には★を1つ追加。その理由は、結局、本書のパワーに圧倒されてしまったのと、「数奇な運命をたどった一家の年代記に、ニューファンドランドの百年史がみごとに…

Michael Crummey の “Galore” (1)

世間は3連休だったが、ぼくは土曜出勤で、昨日も午前中は「自宅残業」。午後から本書に取り組み、今日になってやっと読みおえた。昨年の英連邦作家賞、カナダ・カリブ海地域部門賞の受賞作で、米アマゾン選定今年の上半期ベスト10小説の1冊でもある。さっ…

“Galore” 雑感 (2)

相変わらずピッチは上がらないが、それでもたぶん、粗筋を書くとネタばらしになりそうなところまで読みすすんだ。そこで今日は、本書を素材にしながら、小説の採点ということについて考えてみよう。 これは今のところ、☆☆☆★★くらいかな、と思う。この採点法…

“Galore” 雑感 (1)

去年の英連邦作家賞、カナダ・カリブ海地域部門賞の受賞作、Michael Crummey の "Galore" をボチボチ読んでいる。周知のとおり、これは Tea Obreht の "The Tiger's Wife" や Ann Patchettの "State of Wonder" などと並んで、米アマゾン選定今年の上半期ベ…

2011年ギラー賞ショートリスト発表 (The Scotiabank Giller Prize Shortlist 2011)

Ron Rash の "Burning Bright" について駄文の続きを書くはずだったが、このところ職場がまた繁忙期に入り、ついこのブログをサボっているうちに、読了直後の印象が薄れてしまった。要は、その程度の作品だったということだ。 ボチボチ読んでいる本はあるの…

Ron Rash の “Burning Bright” (2)

恥ずかしながら、フランク・オコナー国際短編賞の受賞作を読んだのは本書が初めてだ。かの有名な "A Thousand Years of Good Prayers" も "No One Belongs Here More Than You" もじつは未読。いつか読もうと思っているうちに邦訳が出てしまい、興味がうせて…

Ron Rash の “Burning Bright” (1)

昨年のフランク・オコナー国際短編賞受賞作、Ron Rash の "Burning Bright" を読みおえた。さっそくレビューを書いておこう。Burning Bright: Stories作者:Rash, Ron発売日: 2011/02/01メディア: ペーパーバック[☆☆☆★] 「さまざまな孤独」とでも副題をつけら…

Ann Patchett の “State of Wonder” (2)

雑感にも書いたとおり、本書はここ4ヵ月、アメリカでベストセラーになっている。今検索すると、ニューヨーク・タイムズ紙のハードカバー部門、米アマゾンでは書籍全般のリストに載っていた。ぼくが入手したのはイギリスのペイパーバック版だが、イギリスで…

Ann Patchett の “State of Wonder” (1)

Ann Patchett の "State of Wonder" を読みおえた。さっそくいつものようにレビューを書いておこう。 追記:その後、本書は2012年のオレンジ賞最終候補作に選ばれました。State of Wonder: A Novel作者: Ann Patchett出版社/メーカー: Harper発売日: 2011/06…

“State of Wonder” 雑感

Ann Patchett の "State of Wonder" に取りかかった。去る6月、早くも今年のベスト10小説に選んでいるサイトを発見し(その後、米アマゾンでも上半期のベスト10入選)、以来ずっと読みたかったのだが、「ブッカー賞読書」に追われて積ん読のままだった。ア…

2011年ブッカー賞ショートリスト 「ぼくの採点表」

今年のブッカー賞の最終候補作をぜんぶ読了。レビューらしきものも書きおえたので、候補作をぼくが面白いと思った順に並べることにした。 3冊だけ読んだショートリスト落選作もふくめ、今年は全般的に低調という印象が強い。その中で群を抜いてすばらしかっ…

Patrick deWitt の “The Sisters Brothers” (2)

これはぼくのような西部劇ファンには、じつにこたえられない作品だ。たまたま最近、「マーヴェリック」と「シルバラード」を見たばかりだが、どちらも往年のジョン・フォードの諸作ほど完成度は高くないものの、それでも西部劇の醍醐味にあふれ、大いに満足…

Patrick deWitt の “The Sisters Brothers” (1)

今年のブッカー賞最終候補作、Patrick deWitt の "The Sisters Brothers" を読みおえた。さっそくレビューを書いておこう。The Sisters Brothers作者: Patrick DeWitt出版社/メーカー: Granta Books (UK)発売日: 2011/05/01メディア: ペーパーバック購入: 1…

A. D. Miller の “Snowdrops” (2)

「これでほんとにブッカー賞の最終候補作なんですか、という気がしてならない」と雑感に書いたが、この第一印象は最後まで消えなかった。とにかくあまりにも話が見え見えで、平板な描写とあいまって、ぼくにはかなり退屈な作品だった。まあ、濡れ場だけはし…

A. D. Miller の “Snowdrops” (1)

今年のブッカー賞最終候補作、A. D. Miller の "Snowdrops" を読みおえた。さっそくいつものようにレビューを書いておこう。Snowdrops作者: Andrew Miller出版社/メーカー: Atlantic発売日: 2011/09/01メディア: ペーパーバック クリック: 5回この商品を含む…

“Snowdrops” 雑感

このところブッカー賞の候補作ばかり読んでいる。本当はほかにもっと読みたい本があるのだが、こうなったらもう、ショートリストに残った未読の2冊を片づけるしかない。ということで、A. D. Miller の "Snowdrops" に取りかかった。 これ、あちらではベスト…

Esi Edugyan の “Half Blood Blues” (2)

これで今年のブッカー賞候補作を読むのは、ロングリストもふくめて7冊目。そこで思ったのだが、今年はどうも低調のような気がする。ほんとうにいいなあ、と感動したのは Julian Barnes の "The Sense of an Ending" だけだ。さらにと言えば、ショートリスト…

Esi Edugyan の “Half Blood Blues” (1)

今年のブッカー賞最終候補作、Esi Edugyan の "Half Blood Blues" を読みおえた。さっそくレビューを書いておこう。Half Blood Blues作者: Esi Edugyan出版社/メーカー: Serpent's Tail発売日: 2011/04/01メディア: ペーパーバック クリック: 9回この商品を…