ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

2011-01-01から1年間の記事一覧

“Half Blood Blues” 雑感 (2) とぼくの速読法

今年の土曜は基本的に出勤日。ということは、ストレス発散日でもあるので、これから一杯やる予定。その前に昨日の続きを簡単に書いておこう。 明日にはたぶん読みおえるはずなので粗筋はもう紹介できないが、この本、終盤にいたるも相変わらず快調だ。おそら…

“Half Blood Blues” 雑感

今年のブッカー賞最終候補作、Esi Edugyan の "Half Blood Blues" に取りかかった。Alison Pick の "Far to Go" の雑感にも書いたとおり、今年は Pick とこの Edugyan、それから Patrick Dewit と、カナダの作家が3人もロングリストにノミネートされて話題…

Beryl Bainbridge の “Every Man for Himself” (2)

以前にも書いたとおり、Beryl Bainbridge の訃報を知ったのは、恥ずかしながら今年になってから。2月ごろ、アマゾンUKで彼女のブッカー賞落選作が特集されていた。そのときもっと調べていれば、Man Booker Best of Beryl という、落選作のベスト1を一般読…

Beryl Bainbridge の “Every Man for Himself” (1)

1996年のブッカー賞最終候補作、Beryl Bainbridge の "Every Man for Himself" を読みおえた。さっそくいつものようにレビューを書いておこう。 Every Man For Himself: Shortlisted for the Booker Prize, 1996作者:Bainbridge, BerylAbacusAmazon[☆☆☆★] タ…

2011年ブッカー賞ショートリスト発表 (The Man Booker Prize for Fiction Shortlist 2011)

ブッカー賞のショートリストが発表された。これを見ると、William Hill や Ladbrokes の最終予想で順位の高かった Julian Barnes と Carol Birch、A.D. Miller は入選しているが、Alan Hollinghurst と D.J. Taylor は落選。逆に、泡沫候補扱いだった Esi Ed…

“Every Man for Himself” 雑感

1996年のブッカー賞最終候補作、Beryl Bainbridge の “Every Man for Himself” に取りかかった。彼女の作品を読むのは今年だけで3冊目、通算4冊目である。 去る7月、久しぶりに同賞のHPを覗いてみて初めて気がついたのだが、昨年物故したこの「ブッカー賞…

Alison Pick の “Far to Go” (2)

これはまず、「相当に面白く、しかもウェルメイドな作品」だ。今まで読んだ今年のブッカー賞候補作の中でも飛び抜けて面白い。印象的なカバー絵だけで選ぶ「見てくれ買い」、今回は大成功でした! こういうストーリー重視型の小説の場合、ともすると人物の造…

Alison Pick の “Far to Go” (1)

今年のブッカー賞候補作、Alison Pick の “Far to Go” を読みおえた。さっそくいつものようにレビューを書いておこう。Far to Go: A Novel (P.S.)作者: Alison Pick出版社/メーカー: Harper Perennial発売日: 2011/04/19メディア: ペーパーバック クリック: …

“Far to Go” 雑感

「ブッカー賞読書」第6弾。Alison Pick の "Far to Go" に取りかかった。William Hill のオッズでは "Pigeon English" などと並んで8位グループ、Ladbrokes でも8位グループと泡沫候補扱いだが、周知のとおり、今年は Alison Pick のほか、Patrick Dewit …

Stephen Kelman の "Pigeon English" (2)

これは結果的に、先週読みおえた Carol Birch の "Jamrach's Menagerie" と同じく、子供が大人へと成長する際の通過儀礼がテーマとわかり、どうしても両書を比較せざるをえない。Birch のほうは19世紀の海洋冒険を描いた歴史小説でもあり、回想形式だが、本…

Stephen Kelman の "Pigeon English" (1)

今年のブッカー賞候補作、Stephen Kelman の "Pigeon English" を読みおえた。さっそくいつものようにレビューを書いておこう。Pigeon English作者: Stephen Kelman出版社/メーカー: Bloomsbury UK発売日: 2011/03/01メディア: ペーパーバック購入: 2人 クリ…

“Pigeon English” 雑感

今日は「コクリコ坂から」を見に行った。「わりとよかった」と娘が話していたからだが、ぼくの感想も似たようなものだ。気に入ったシーンのひとつは1963年、東京オリンピック前の横浜・桜木町駅周辺の風景で、映画館ブルク13を出て目に飛びこんできた現代の…

Carol Birch の “Jamrach's Menagerie”(2)

これ、終わってみれば、最初から当然、通過儀礼のテーマに気づくべきだったのに、勘の鈍いぼくは、「いちおうヒントらしきものはあるのだが、はて、ほんとうにそうなのかしらん」と思いつつ、べつのテーマがあることを相当に期待しながら読んでいた。おかげ…

Carol Birch の “Jamrach's Menagerie”(1)

今年のブッカー賞候補作、Carol Birch の "Jamrach's Menagerie" を読みおえた。さっそくいつものようにレビューを書いておこう。Jamrach's Menagerie作者: Carol Birch出版社/メーカー: Canongate Books発売日: 2011/02/01メディア: ペーパーバック クリッ…

“Jamrach's Menagerie” 雑感(2)

昨日は「これ、フシギな小説です」と書いたが、今日は物語の方向も定まり、何だ、やっぱりそうだったのか、といったところ。目鼻がついてみるとフシギでも何でもなく、ごくフツーの海洋冒険小説です。あ、どんでん返しがなければ。 ぼくは『宝島』タイプの冒…

“Jamrach's Menagerie” 雑感(1)

今年の「ブッカー賞読書」第4弾。Carol Birch の "Jamrach's Menagerie" に取りかかった。あちらの評判はかなりいいようだ。William Hill のオッズは第3位、Ladbrokes では第6位。アマゾンUKでも星4つ。レビュー数は何と54もあり、A.D. Miller の "Snowd…

Sebastian Barry の “On Canaan's Side” (2)

雑感の続きを書こう。これ、ロングリストが発表されたとき、「かなり面白い物語ではないかと思われる」と直感したとおりだったが、じつはもうひとつ直感したことがある。何となく頭にのこっていた旧作 "The Secret Scripture" の印象からして、面白いことは…

Sebastian Barry の “On Canaan's Side” (1)

今年のブッカー賞候補作、Sebastian Barry の "On Canaan's Side" を読了。さっそくいつものようにレビューを書いておこう。On Canaan's Side作者: Sebastian Barry出版社/メーカー: Faber & Faber発売日: 2011/08/01メディア: ハードカバー クリック: 9回こ…

“On Canaan's Side” 雑感(2)

明日には何とかレビューを書けそうなところまで読みすすんだ。「序盤はかなり地味な展開だ」というのが第一印象だったが、昨日の続きを読みはじめた直後、予想外の事件が発生。そこからにわかに物語のテンポが速くなり、思わず引きこまれてしまった。これ、…

“On Canaan's Side” 雑感(1)

今年のブッカー賞候補作、Sebastian Barry の "On Canaan's Side" に取りかかった。Barry といえば、08年のコスタ賞を取った "The Secret Scripture" が有名で、ぼくもレビューらしきものを書いたことがある。Barry の作品がブッカー賞にノミネートされたの…

Julian Barnes の “The Sense of an Ending” (3)

本書を読みはじめてからしばらくして、やられたね、と思った。小説オタクなら誰でも一度くらい、自分で小説を書いてみたくなるものだが、これ、ぼくが最近、いちばん気になる問題をみごとにフィクション化していて、ああ、こんな小説が書けたらなあ、でも無…

Julian Barnes の “The Sense of an Ending” (2)

ふだんはペイパーバック・リーダーのぼくだが、ハードカバーの本書は長編というより中編に近く(07年の候補作、Ian McEwan の "On Cecil Beach" とほぼ同じくらい)、これなら繁忙期のカタツムリ君でも速く読めるだろう。 あちらの評判はなかなかいいようだ…

Julian Barnes の “The Sense of an Ending” (1)

Alan Hollinghurst の "The Stranger's Child" に続いて、同じく今年のブッカー賞有力候補作、Julian Barnes の "The Sense of an Ending" を読みおえた。さっそくレビューを書いておこう。The Sense of an Ending作者:Barnes, JulianJonathan CapeAmazon[☆☆…

Alan Hollinghurst の “The Stranger's Child”(3)

雑感(4)の訂正をしておこう。本書の第4部を読みはじめたとき、先のほうをパラパラめくって、これでもう最後だなと思ったのだが、短いながら、さらに第5部があったのにはビックリした。そこつ者のぼくらしいミスだ。 各部とも、「それぞれ山となる事件は…

Alan Hollinghurst の “The Stranger's Child”(2)

今年の夏は、今の職場にいるかぎり4、5年に1度やって来る繁忙期で、本来ならお盆でノンビリできるはずなのに、この土日も「自宅残業」。それでも昨日は、ここで本書を片づけなければついに挫折してしまう、と覚悟を決め、朝から取り組んだ結果、何とか読…

Alan Hollinghurst の “The Stranger's Child”(1)

予定より、というか予定どおり大幅に遅れたが、今年のブッカー賞有力候補作、 Alan Hollinghurst の "The Stranger's Child" をようやく読みおえた。さっそくいつものようにレビューを書いておこう。The Stranger's Child作者: Alan Hollinghurst出版社/メー…

“The Stranger's Child” 雑感 (4)

先週ほどではないにしても相変わらず多忙。おかげで、これまた相変わらずカタツムリ君だが、ようやく第3部を読みおえた。今見ると、残りはあと第4部だけ。それなのに、ここにいたるもまだまだ「長大なイントロ」といった感じだ。はて、どこまで続くぬかる…

“The Stranger's Child” 雑感 (3)

ずいぶんブログをサボってしまった。先週はここ数年でいちばん忙しい1週間で、帰宅後、夜中の2時ごろまで仕事をしてから朝は普通に出勤。土日は久しぶりに休めたものの、終日うたた寝ばかり。とても活字を追いかける気がしなかった。 というわけで、本書を…

“The Stranger's Child” 雑感 (2)

このところ、休日はあってないようなもので、連日、仕事に追われている。おかげで案の定、本書はカタツムリ君のペースでしか進んでいない。英語はけっこう易しいほうだと思うし、内容的にもまずまず面白い読み物なので、本来なら一気に片づけたいところだが…

「96時間」と「恋人たち」

突然ですが、「96時間」を初めて観ました。「突然ですが」というのは、このマイナーなブログの、ごく少数の奇特なリピーターの方々ならおわかりでしょう。ここではぼくは、今までほとんど海外小説についての駄文しか綴ってこなかったからです。96時間 [Blu-r…