ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

全米批評家協会賞

W. G. Sebald の “Austerlitz”(2)

もっか、父の七回忌その他で愛媛の宇和島に帰省中。桜は先週が見頃だったらしいが、いまはもうほとんど葉桜ばかり。かろうじて残っている花も、きょうの雨ですっかり散ってしまうことだろう。 その代わり、きのう訪れた市内天赦園の上り藤は、受付の案内によ…

W. G. Sebald の “Austerlitz”(1)

きょうは Patrick Modiano の "In the Cafe of Lost Youth" について若干補足するはずだったが、ゆうべ、W. G. Sebald の "Austerlitz"(2001)を読了。周知のとおり、2001年の全米批評家協会賞受賞作である。さっそくレビューを書いておこう。 追記:本書は…

Arundhati Roy の “The Ministry of Utmost Happiness”(2)

David Grossman の "A Horse Walks Into a Bar" を読了。ご存じ今年の Man Booker International Prize の受賞作である。本来ならすぐにレビューを書くところだが、いまは風呂上がり。明日の仕事に差し支えるといけない。そこで表題作の話に戻ろう。 Arundha…

Arundhati Roy の “The Ministry of Utmost Happiness”(1)

ゆうべも書いたとおり、Arundhati Roy の新作 "The Ministry of Utmost Happiness"(2017)を読了。フィクションとしては20年ぶりの2作目である。ひと晩寝かせたところで、さて、どんなレビューになりますやら。The Ministry of Utmost Happiness: A novel…

"The Ministry of Utmost Happiness" 雑感(2)

夕食後、やっと本書を読みおえた。いつもなら、さっそくレビューを書くところだが、いまは風呂上りでもう時間がない。きょうはメモの確認だけ。 当初は Anjum という hijra(両性具有者)が主人公。彼女(彼)はインドの首都、デリー市内の墓場に住んでいる…

"The Ministry of Utmost Happiness" 雑感(1)

Arundhati Roy の "The Ministry of Utmost Happiness"(2017)を読んでいる。今月6日に出版されたばかりの新作だ。 Arundhati Roy といえば、ご存じ1997 年のブッカー賞受賞作、"The God of Small Things" で有名なインドの作家である。あれは本当にすばら…

Mohsin Hamid の “Exit West”(3)

本書はたしかに恋愛小説である。が、それより何より、街なかに突然出現したドアを通じて、アジアやアフリカなどから先進国へ瞬時に移動できる、という近未来のSF的な設定で移民問題を大々的に扱っている点がミソだろう。 ぼくは最初、移民と先住民の激しい対…

Mohsin Hamid の “Exit West”(2)

Mohsin Hamid の作品を読むのは本書で3冊目。初めて読んだのは、ご存じ2007年のブッカー賞最終候補作 "The Reluctant Fundamentalist"(☆☆☆★★)。当時のレビューを読みかえすと、わりとおもしろい、という程度だったようだ。 次に、ちょうど4年前の今ごろ…

Mohsin Hamid の “Exit West”(1)

ゆうべ、Moshin Hamid の最新作、"Exit West"(2017)を読了。眠かったのでレビューはきょうに回すことにした。はて、どんな駄文になりますやら。Exit West: SHORTLISTED for the Man Booker Prize 2017作者:Hamid, MohsinHamish HamiltonAmazon[☆☆☆★] いま…

Lauren Groff の “Fates and Furies” (1)

本書は周知のとおり、昨年の全米図書賞と今年の全米批評家協会賞(対象はともに2015年の作品)の最終候補作である。さて、ひと晩寝かせたところでレビューを書けるかどうか。Fates and Furies作者:Groff, LaurenRiverhead BooksAmazon[☆☆☆★★★] 泣ける小説だ…

Valeria Luiselli の “The Story of My Teeth” (1)

先日発表された2015年のロサンゼルス・タイムズ紙文学賞(Los Angeles Times Book Prize for Fiction)の受賞作、Valeria Luiselli の "The Story of My Teeth" を読了。これは今年(対象はLAタイムズ紙賞と同じく2015年)の全米批評家協会賞の最終候補作で…

Paul Beatty の “The Sellout” (1)

2015年の全米批評家協会賞 (National Book Critics Circle Award) 受賞作、Paul Beatty の "The Sellout" を読了。P Prize. Com の予想では、今年のピューリッツァー賞レースでも最有力候補だった。さっそくレビューを書いておこう。(追記:本書はこのあと…

今年の全米批評家協会賞

かなり旧聞に属するが、去る13日、今年の全米批評家協会賞(対象は昨年の作品)が発表され、Chimamanda Ngozi Adichie の "Americanah" [☆☆☆☆] が栄冠に輝いた。 ぼくは去年の7月だったか、あちらの下馬評を参考に、同書がブッカー賞のロングリストにノミネ…

Chimamanda Ngozi Adichie の “Americanah” (1)

諸般の事情で予定よりずいぶん遅れてしまったが、Chimamanda Ngozi Adichie の新作 "Americanah" をなんとか読了。さっそくレビューを書いておこう。Americanah: A novel (ALA Notable Books for Adults)作者:Adichie, Chimamanda NgoziKnopfAmazon[☆☆☆☆] な…

2012年全米批評家協会賞発表 (2012 National Book Critics Circle Awards)

ニューヨーク時間で2月28日、全米批評家協会賞が発表され、フィクション部門では、Ben Fountain の "Billy Lynn's Long Halftime Walk" が栄冠に輝いた。ぼく自身は Adam Johnson の "The Orphan Master's Son" [☆☆☆☆] が本命と思っていたが、"Billly Lynn'…

Laurent Binet の “HHhH” (1)

Laurent Binet の "HHhH" を読了。今年の全米批評家協会賞の最終候補作で、2010年のゴンクール賞新人賞の受賞作でもある。さっそくレビューを書いておこう。HHhH作者:Binet, LaurentRandom House UK LtdAmazon[☆☆☆☆★] 従来のナチス物、ホロコースト物の定型…

Zadie Smith の “NW” (1)

Zadie Smith の最新作 "NW" を読了。2012年の全米批評家協会賞最終候補作で、ニューヨーク・タイムズ紙、ガーディアン紙、タイム誌などでも年間ベスト作品に選ばれている。さっそくレビューを書いておこう。NW作者:Smith, ZadieHamish HamiltonAmazon[☆☆☆★★]…

“NW” 雑感 (1) / 2012年全米批評家協会賞最終候補作 (2012 National Book Critics Circle Awards Finalists)

ほんとうは、Ian McEwan の "Sweet Tooth" についてもっと書きたかったのだが、レビューを読みかえしてみるとネタバレ気味ですな。ヒロインは女スパイだが、ふつうのスパイ小説ではないし、彼女の単純な恋物語でもなく、「愛のスパイ小説、陰謀小説」としか…

全米批評家協会賞発表 (2011 National Book Critics Circle Award for Fiction)

ニューヨーク時間で8日夜、今年の全米批評家協会賞が発表され(対象は去年の作品)、小説部門では Edith Pearlman の短編集 "Binocular Vision" が栄冠に輝いた。ぼく自身は Jeffrey Eugenides の "The Marriage Plot" が大本命だと思っていたので意外な結…

Jeffrey Eugenides の “The Marriage Plot” (1)

今年の全米批評家協会賞候補作、Jeffrey Eugenides の "The Marriage Plot" を読了。さっそくいつものようにレビューを書いておこう。The Marriage Plot: A NovelAmazonThe Marriage Plot作者:Eugenides, JeffreyFourth Estate LtdAmazon[☆☆☆☆★] 作中人物の…

2011年全米批評家協会賞最終候補作発表

うかつでした。ニューヨーク時間で去る21日、全米批評家協会賞の最終候補作が発表されていたんですな。読んだばかりで、もっか感想を書きつづけている Teju Cole の "Open City" が選ばれたのはタイムリーとして、廉価版待ちだった "The Marriage Plot" もノ…

Teju Cole の “Open City” (1)

Teju Cole の "Open City" をやっと読みおえた。昨年、タイム誌やエコノミスト誌、ニューヨーカー誌などが選んだ優秀作品のひとつである。いつものようにまずレビューを書いておこう。Open City作者:Cole, TejuFaber & FaberAmazonOpen City作者:Cole, TejuF…

Edith Pearlman の “Binocular Vision” (1)

今日は Denis Johnson の "Train Dreams" について落ち穂拾いをするはずだったが、先月以来中断していた Edith Pearlman の "Binocular Vision" をようやく読みおえたので、そのレビューから先に書くことにした。今年の全米図書賞候補作のひとつである。 追…

Jennifer Egan の “A Visit from the Goon Squad”(1)

今年のピューリッツァー賞、ならびに全米批評家(書評家)協会賞の受賞作、Jennifer Egan の "A Visit from the Goon Squad" を読了。さっそくいつものようにレビューを書いておこう。(点数評価は後日)。A Visit from the Goon Squad作者: Jennifer Egan出版…

Hans Keilson の “Comedy in a Minor Key”(1)

このところパッとしない体調だったが、今年の全米批評家(書評家)協会賞の最終候補作、Hans Keilson の "Comedy in a Minor Key" を何とか読みおえた。さっそくレビューを書いておこう。Comedy in a Minor Key (Modern Voices)作者: Hans Keilson出版社/メ…

Jayne Anne Phillips の "Lark & Termite"(1)

多忙その他、諸般の事情で遅れに遅れていた Jayne Anne Phillips の "Lark & Termite" をやっと読みおえた。去年の全米図書賞ならびに全米批評家(書評家)協会賞の最終候補作である。この本については、すでに雑感で言い尽くしたような気もするが、とりあえ…

今年の全米批評家(書評家)協会賞

National Book Critics Circle Award(全米批評家協会賞)の発表があり、候補作は3冊しか読んでいなかったが(うち1冊はあと少し)、その中でイチオシだった去年のブッカー賞受賞作、Hilary Mantel の "Wolf Hall" が見事ダブル受賞に輝いた。 あとの候補…

Bonnie Jo Campbell の "American Salvage"(1)

昨年の全米図書賞最終候補作で、今度は全米批評家(書評家)協会賞にノミネートされている Bonnie Jo Campbell の "American Salvage" を読みおえた。いつものようにまずレビューを書いておこう。American Salvage作者: Bonnie Jo Campbell出版社/メーカー: …

最近の全米批評家協会賞受賞作「面白度」ランキング

あと1ヵ月足らずで発表される昨年の全米批評家(書評家)協会賞(National Book Critics Circle Awards)の候補作、Bonnie Jo Campbell の "American Salvage" に取りかかった。今日一日で片づけようと思っていたのに、寝坊してしまい、あえなく挫折。中間…

Hilary Mantel の “Wolf Hall”(1)

今年のブッカー賞受賞作、Hilary Mantel の "Wolf Hall" をやっと読みおえた。今まで3回の雑感に毛が生えたものになりそうだが、いつものようにレビューを書いておこう。Wolf Hall (The Wolf Hall Trilogy)作者:Mantel, HilaryFourth Estate LtdAmazon[☆☆☆☆…