ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Ruth Ozeki の “The Book of Form & Emptiness”(1)

2022年の女性小説賞受賞作、Ruth Ozeki の "The Book of Form & Emptiness"(2021)を読了。彼女がメジャーな賞レースで脚光を浴びたのは、2013年のブッカー賞最終候補作、"A Tale for the Time Being"(2013 ☆☆☆★★★)以来だろうか。さっそくレビューを書い…

Honorée Fanonne Jeffers の “The Love Songs of W.E.B. Du Bois”(3)

ミニ闘病中、もっぱら寝転んで読んでいたのが Ruth Ozeki の "The Book of Form & Emptiness"(2021)。ご存じ去年の女性小説賞受賞作だ。 これも表題作と同じく、「長い、長すぎる」。名は体をあらわす、というが、かたちはリッパでも中身がない。 とはさす…

Honorée Fanonne Jeffers の “The Love Songs of W.E.B. Du Bois”(2)

やっと平熱にもどった。先週なかほど6回目のコロナワクチン接種を受けたあと、こんども副反応がひどくダウン。高熱がひいてからも頭がぼんやり。一般的にいう微熱ではないが、個人的には平熱でもない熱がずっとつづいていた。 その微妙な熱が接種のせいなの…

Geetanjali Shree の “Tomb of Sand”(4)

腰痛がかなり治まってきた。たぶん、常時着用している医療用サポーターと、最近使いはじめた椅子用腰クッションのおかげだろう。クッションのほうは即効性こそなかったものの、日がたつにつれ効果を感じるようになった。人間工学というのはスゴイですな。 と…

Geetanjali Shree の “Tomb of Sand”(3)

今年のピューリツァー賞はご存じのように二冊受賞。チェック洩れかもしれないけど、これはどうも史上初のようだ。 ぼくはすでに二冊とも落手したが(最近、米アマゾンのサービスはとても迅速)、届いた Barbara Kingsolver の "Demon Copperhead"(2022)を…

Geetanjali Shree の “Tomb of Sand”(2)

先日届いた椅子用腰クッションの効果はまずまず。楽は楽だが、これで一気に腰痛が解消というほどではない。もっとも、そんなスグレモノなんてあるわけないんだけど。 長時間すわっていられないので、もともと少ない読書量がさらに減。日英どちらの本も休憩し…

Ling Ma の “Bliss Montage”(1)

去る連休中、持病の腰痛が再発。一定時間デスクにむかうこともままならず、さりとて橫になるとすぐに眠くなり、とてもじゃないが読書どころではなかった。 サポーターをずっと着用し、ストレッチでごまかし、いまは多少痛みが和らいできたところ。きょう届く…

Muriel Spark の “The Driver's Seat”(2)

先週末、甥の結婚式に出席のため松山に行ってきた。帰りの日に市内見物。といっても、訪れたのは子規堂、坂の上の雲ミュージアム、萬翠荘の三ヵ所だけで、いずれも再訪ないし再々訪だったが、駆け足で明治・大正・昭和初期のことを勉強するにはいいコースで…

J.G. Farrell の “The Siege of Krishnapur”(3)

前回からずいぶん時間がたってしまった。そろそろこの項も片づけてしまわないと、ぼくのことだ、そのうち本の中身をほとんど忘れてしまうかもしれない。 本書もそうだったが、このところ、大作ほど結末が見えてきたところでひと休み。それがそのまま大休止と…

Honorée Fanonne Jeffers の “The Love Songs of W.E.B. Du Bois”(1)

きのうやっと、昨年の全米批評家協会賞受賞作、Honorée Fanonne Jeffers(1967 - )の "The Love Songs of W.E.B. Du Bois"(2021)を読了。頂上が見えたところでひと息ついたら、結果的に大休止。数日前、やおら重い腰をあげてふたたび登りはじめたが、えら…

J.G. Farrell の “The Siege of Krishnapur”(2)

今回はほんとうは Muriel Spark の "The Driver's Seat"(1970 ☆☆☆★★)の落ち穂ひろいをする順番なのだけど、前回の "Troubles"(1970)の流れで、どうしても表題作(1973)から先に片づけないといけない。それぞれ Farrell の Empire Trilogy に属し、どち…

J.G. Farrell の “Troubles”(5)

去年の全米批評家協会賞受賞作、Honorée Fanonne Jeffers(1967 - )の "The Love Songs of W.E.B. Du Bois"(2021)を読んでいる。とてもおもしろい! 取りかかったきっかけは、前回の "Tomb of Sand"(☆☆☆★★★)との超大作つながり。去年のいまごろだったか…

Geetanjali Shree の “Tomb of Sand”(1)

2022年の国際ブッカー賞受賞作、Geetanjali Shree(1957 - )の "Tomb of Sand"(2018, 英訳2021)を読了。Shree はインドの作家で、いままで五作の長編小説といくつかの短編集を上梓。本書は、ヒンディー語から英訳され国際ブッカー賞を獲得した史上初の作…

J.G. Farrell の “Troubles”(4)

Geetanjali Shree の "Tomb of Sand"(2018)をまだ読んでいる。諸般の事情で、1日50ページ進むのが精いっぱい。 といっても、べつにたいした事情ではない。まず、三軒先に住んでいる初孫のショウちゃんが、毎日のように「ジージーいる?」と遊びにやってく…

J.G. Farrell の “Troubles”(3)

とにかくイギリスの文学ファンはブッカー賞が大好きだ。一次候補作の発表前から入選予想で盛りあがり、過去の受賞作ランキングを披露しあうなんて、わが芥川賞・直木賞では、いやピューリツァー賞だって考えられない事態だろう。 それかあらぬか、ブッカー賞…

J.G. Farrell の “Troubles”(2)

去年の国際ブッカー賞受賞作、Geetanjali Shree の "Tomb of Sand"(2018)を読んでいる。Shree はインドの作家で、ヒンディー語から英訳され同賞を獲得した小説は史上初とのことだが、なにしろ、ちょっとした辞書なみのぶ厚さで、何ページあるのかもコワく…

J.G. Farrell の “The Siege of Krishnapur”(1)

最終章の前でほぼ1週間、諸般の事情でひと休みしていた J.G. Farrell の "The Siege of Krishnapur"(1973)をきのうやっと読了。Empire Trilogy の第二作で、73年のブッカー賞受賞作である。また2008年には、ブッカー賞創設40周年記念の特別賞、the Best o…

Suzette Mayr の “The Sleeping Car Porter”(2)

J.G. Farrell の "The Siege of Krishnapur"(1973)を読んでいる。ご存じ73年のブッカー賞受賞作で、"Troubles"(1970 ☆☆☆☆★)につづく Empire Trilogy の第二作だ。 ぼくにしては順調に進んでいるのだけど、メモを取るのでやはり遅読。メモがないと、人物…

Muriel Spark の “The Driver's Seat”(1)

Muriel Spark(1918 - 2006)の "The Driver's Seat"(1970)を読了。使用したテクスト、Penguin Books(初版)の表紙にエリザベス・テイラーの顔写真があり、調べてみると、本書は1974年、イタリアのジュゼッペ・パトリーニ・グリッフィ監督によって映画化…

J.G. Farrell の “Troubles”(1)

きのう、Lost Man Booker Prize(2010)の受賞作、J.G. Farrell(1935 - 1979)の "Troubles"(1970)を読了。同賞は、ブッカー賞の対象年度の変更により受賞作のなかった70年刊行の作品を対象としたものである。さっそくレビューを書いておこう。 [☆☆☆☆★] …

Elizabeth Taylor の “Angel”(2)

J.G. Farrell(1935 - 1979)の "Troubles"(1970)を読みはじめた。じつはこれ、今年こそ片づけようと年始に決めていた本の一冊。ご存じ Lost Man Booker Prize の受賞作である。 Booker Prize が創設されたのは1969年で、翌70年まで対象は前年刊行の作品だ…

Suzette Mayr の “The Sleeping Car Porter”(1)

きのう、昨年のギラー賞受賞作、Suzette Mayr(1967 - )の "The Sleeping Car Porter"(2022)を読了。 Mayr はカナダの女流作家で本書は6作目。小出版社の刊行作品を対象とした Republic of Consciousness Prize US/Canada の今年の候補作でもある。さっ…

“The Sleeping Car Porter” 雑感

このところなにかと雑用に追われ、読書はひと休み。雑用のなかには書斎のレイアウトの変更と、それに伴う家具類の移動もあった。 べつにたいした家具ではない。デスクは家人の実家にあった小さな食卓で代用しているのだけど、いままで窓向きだったのを室内に…

Elizabeth Taylor の “Angel”(1)

ゆうべ、Elizabeth Taylor(1912 - 1975)の "Angel"(1957)を読了。この Elizabeth Taylor は同名の女優とは別人物。本書は2007年、フランソワ・オゾン監督により映画化され、同年日本でも公開されている。邦題は『エンジェル』。さっそくレビューを書いて…

Peter Handke の “A Sorrow Beyond Dreams”(2)

遅ればせながら、今年の全米批評家協会賞(対象は去年の作品)の最終候補作をチェックしたところ驚いた。なんと Mieko Kawakami の "All the Lovers in the Night" がノミネート! 原作は2014年刊だが、どうやら昨年英訳が刊行されたものらしい。周回遅れの…

Heinrich Böll の “The Lost Honor of Katharina Blum”(2)

ゆうべ、一杯やりながらピエトロ・ジェルミ監督の『刑事』(1959)を観たあと、Wiki で調べて驚いた。Carlo Emilio Gadda の "That Awful Mess on Via Merulana"(1957)が原作とはちっとも知らなかった。いまさらながら、恐ろしい無知ですな。でもきっと、…

天沢退二郎の『まわりみち』

けさの新聞で天沢退二郎氏の訃報を知った(以下、敬称略)。 天沢退二郎は、肩書きとしては「フランス文学者・詩人」ということだが、寡聞にして学者としての業績は知らない。が、アラン=フルニエ作『グラン・モーヌ』の訳者ということだけは知っている。原…

Omar El Akkad の “What Strange Paradise”(2)

Elizabeth Taylor(1912 - 1975)の "Angel"(1957)を読んでいる。と聞いて、え、あの大女優が小説も書いていたのか、と驚くひとも多いかもしれないが、じつはこの Elizabeth Taylor、れっきとしたイギリスの女流作家。 ぼくも昔は知らなかった。いつだった…

Peter Handke の “A Sorrow Beyond Dreams”(1)

オーストリアのノーベル賞作家 Peter Handke(1942 - )の "A Sorrow Beyond Dreams"(1972, 英訳1974)を読了。1971年に自殺した Handke の母 Maria の思い出が綴られた作品である。さっそくレビューを書いておこう。 [☆☆☆★★] 肉親の死について語るのは気が…

Heinrich Böll の “The Lost Honor of Katharina Blum”(1)

先週ジブリパークへの旅行の行き帰り、新幹線のなかで読みはじめたドイツのノーベル賞作家、Heinrich Böll(1917 - 1985)の "The Lost Honor of Katharina Blum"(1974, 英訳1975)を数日前読了。諸般の事情で、レビューをでっち上げるのがきょうまでズレこ…