ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Shirley Hazzard の “The Great Fire”(1)

ゆうべ、2003年の全米図書賞受賞作、Shirley Hazzard の "The Great Fire"(2003)を読了。Shirley Hazzard(1931 - 2016)はオーストラリア出身で1951年にアメリカへ移住。それまでニュージーランドや香港にも滞在経験があり、本書には当時の体験が大なり小…

Kiran Desai の “The Loneliness of Sonia and Sunny”(4)

きょうはクリスマス・イヴ。ぼくも最近はバッハのクリスマス・オラトリオをよく聴いているし、いま流しているBGMもイ・ムジチのクリスマス協奏曲集。 クリスマス協奏曲集 アーティスト:イ・ムジチ合奏団 UNIVERSAL MUSIC GROUP Amazon が、祝祭気分にはほど…

2025年ブッカー賞ぼくのランキング

きのう Flashlight を読みおえ、今年もやっとブッカー賞レースの最終出走馬を総括する運びとなった。(未読の The Rest of Our Lives はパス)。 まず、現地ファンによる発表直前のランキングはこうだった。 1, The Land in Winter by Andrew Miller(or 2)…

Susan Choi の “Flashlight”(1)

今年のブッカー賞最終候補作、Susan Choi の "Flashlight"(2025)を読了。Susan Choi(1969 - )は韓国系アメリカ人作家で、第5作 "Trust Exercise"(2019 ☆☆★★★)で2019年全米図書賞を受賞。5, 6年に一冊のペースで創作活動をつづけている。さっそくレビ…

Kiran Desai の “The Loneliness of Sonia and Sunny”(3)

先日から読んでいる Susan Choi の "Flashlight"(2025)、いまのところとても快調で、ひょっとしたら表題作を上回るかも、と思えるほどの出来ばえだ。「才女才におぼれた凡作」ながら、全米図書賞を受賞した "Trust Exercise"(2019 ☆☆★★★)とは大ちがい。…

Kiran Desai の “The Loneliness of Sonia and Sunny”(2)

ああ、ガックリ! 先日、退院してはじめて再診、血液検査をうけたころ、相変わらず悪玉コレステロールが基準値以上だったため、高額医療の注射が必要との診断だった。食事や運動その他、あんなにがんばったのになぁ。 それどころか再手術の可能性まで示唆さ…

Jim Crace の “Being Dead”(3)

お気づきかもしれませんが、"Flesh" のレビュー、結論部分だけ加筆修正。おとといの夜、ふと目がさめてトイレに行ったあと、ひらめいた。睡眠不足が気になったけど、拙文のほうがもっと気になり、10分くらいだったかパソコンにむかった。 退院後のいまは毎日…

David Szalay の “Flesh”(1)

ゆうべ今年のブッカー賞受賞作、David Szalay の "Flesh"(2025)を読了。David Szalay(1974 - )はハンガリー系作家としてはじめてブッカー賞を受賞。Wiki によると、Szalay said that he "wanted to write a book that stretched between Hungary and Lon…

Andrew Miller の “The Land in Winter”(1)

退院後4日目。今年のブッカー賞最終候補作、Andrew Miller の "The Land in Winter"(2024)をやっと読みおえた。Andrew Miller(1961 - )は本書の舞台のひとつ、ブリストル生まれのイギリス人作家で、ブッカー賞のショートリストにノミネートされたのは、…

Jim Crace の “Being Dead”(2)

いやはや、この一週間、冥土の旅の三里塚あたりまで出かけていた。 先週木曜日の早朝、右胸に激痛が走り、ぜん息の発作かと思って近くの大病院に急行。いろいろな検査の結果、たしかにぜん息ではあるけれど、高感度トロポニンの数値が高いという。 そこで翌…

2025年ブッカー賞発表

きょうは速報のみ。ロンドン時間で10日、つい先ほど今年のブッカー賞が発表され、David Szalay の "Flesh"(2025)が栄冠に輝いた。David Szalay(1974 - )はハンガリー系イギリス人の作家で、2016年には "All That Man Is"(2016 ☆☆☆★★★)がブッカー賞の最…

Maria Reva の “Endling”(4)

ブッカー賞の発表が迫ってきた(ロンドン時間11月10日)。現地ファンによる直前の候補作ランキングはこうなっている(or n は別方法による集計結果)。 1, The Land in Winter by Andrew Miller(or 2) 2, The Loneliness of Sonia and Sunny by Kiran Desa…

Kiran Desai の “The Loneliness of Sonia and Sunny”(1)

大興奮のワールドシリーズがおわり、いまだ余韻にひたったまま、今年のブッカー賞最終候補作、Kiran Desai の "The Loneliness of Sonia and Sunny"(2025)をなんとか読了。Kiran Desai(1971 - )はインド人作家で、前作 "The Inheritance of Loss"(2006 …

Maria Reva の “Endling”(3)

ヒネりすぎ。しかし、ヒネらざるをえなかった。 表題作を簡単に評すると、そういうことになる。 なにしろ舞台は戦争の渦中にある現代のウクライナだ。ロシアによる侵攻がはじまって三年八ヵ月。短期間で終了するはずだった「特別軍事作戦」が長々とつづいて…

Maria Reva の “Endling”(2)

先週、愛媛の田舎、宇和島に帰省したとき、観光名所にもなっている海辺の段々畑のほかに、もう一ヵ所、ぼくがひそかに「宇和島のヴェニス」と呼んでいる目的地を訪ねることができた。小日提(こひさげ)という集落だ。 この景色をはじめて目にしたときは、「…

Benjamin Wood の “Seascraper”(2)

ゆうべ愛媛の田舎、宇和島から帰ってきた。今回の帰省も、介護施設に入所している母との面会と墓掃除が目的だったけど、天気がよければぜひ、遊子水荷浦(ゆす・みずがうら)の段々畑を訪れたいと思っていた。 市内からバスでも行けるが便数が少ない。ぼくは…

Theodor Storm の “Immensee and Other Stories”(2)

このところ寒暖差が激しく、てきめん絶不調。夜中にぜん息の発作が起こり、おかげで昼間もなんだかボンヤリしている。 それでも Kiran Desai の "The Loneliness of Sonia and Sunny"(2025)が楽しければ救われるのだけど、あいにくどうも乗れない。彼女が…

Jim Crace の “Being Dead”(1)

先日、1999年の全米批評家協会賞受賞作、Jim Crace の "Being Dead"(1999)を読了。Jim Crace(1946 - )はイギリスのヴェテラン作家で、代表作は本書のほか、2013年のブッカー賞最終候補作、および2015年の国際IMPACダブリン文学賞受賞作 "Harvest"(2013 …

Katie Kitamura の “Audition”(2)

先週金曜日、『あんぱん』がおわった。最初の舞台がぼくの田舎の隣県、高知ということで興味がわき、毎晩録画で視聴。べつにファンというほどではなかったが、つい最後まで見てしまった。 いつだったか途中、今田美桜が『あさイチ』に出演して役づくりの苦労…

Alice Walker の “The Color Purple”(2)

やれやれ、ブッカー賞レースでトップを走っていた "Endling"(☆☆☆★★)が第3コーナー(ショートリスト)で失速。おまけに、下馬評の下位グループから3頭も入選に食いこむとは、まったく波乱に近い展開ですな。リストを見て、"Endling" を高く買っていた現地…

Maria Reva の “Endling”(1)

ああ! このところぜん息など体調不良につき、Maria Reva の "Endling"(2025)をぼんやり読んでいたら、なんともうブッカー賞のショートリスト発表! しかも "Endling" は落選ときた。 前評判が高かっただけに意外な結果だが、しかたない、なんとかレビュー…

Kingsley Amis の “Lucky Jim”(2)

先週末、ドラ娘の発案で『ブラック・ショーマン』を見にいった。封切り二日目とあって館内は盛況。娘も家人も原作を読んでいて、それでもおもしろかったという。 ぼくもおおいに楽しんだが、犯人がしぼりやすく、以前やはり映画館で見た『マスカレード・ホテ…

Edith Wharton の“The Age of Innocence”(2)

ひさしぶりにブッカー賞の下馬評をチェックすると、前回からほとんど変化していなかった。 1. Seascraper by Benjamin Wood(or 2 ☆☆☆★★) 2. Endling by Maria Reva(or 1) 3. The Loneliness of Sonia and Sunny by Kiran Desai 4. Audition by Katie Kit…

Benjamin Wood の “Seascraper”(1)

先日、今年のブッカー賞一次候補作、Benjamin Wood の "Seascraper"(2025)を読了。Benjamin Wood(1981 - )はイギリスの作家で、2012年のコスタ賞新人賞部門最終候補作 "The Bellwether Revivals"(未読)でデビュー。表題作は第5作である。諸般の事情で…

Theodor Storm の “Immensee and Other Stories”(1)

ドイツの小説家 Theodor Storm(1817 - 1888)の中短編集、"Immensee and Other Stories" を読了。収録されているのは "Immensee"(1849, 英訳1966)、"Viola Tricolor"(1874, 英訳1956)、"Curator Carsten"(1877, 英訳1956)の三編で、本書は2025年に出…

Yael van der Wouden の “The Safekeep”(2)

ああ、やっぱり! 日本の場外馬券場でブッカー賞レースの馬券を買ったせいか、"Universality" が到着予定日から一週間すぎてもまだ届かない。"Endling" だって発送通知が遅すぎる。 これが本場の場内発売所だと、値段はうんと張るものの、早く確実に届くメリ…

Katie Kitamura の “Audition”(1)

きのう、今年のブッカー賞一次候補作、Katie Kitamura の "Audition"(2025)を読了。Katie Kitamura(1979 - )はアメリカ生まれの日系作家で、本書は彼女の長編第5作。さっそくレビューを書いておこう。 Audition: A Novel 作者:Kitamura, Katie Riverhea…

Manuel Puig の “Kiss of the Spider Woman”(3)

「あら、おじいちゃん、おひさしぶり。ブッカー賞レースの下馬評どうなってる?」「先頭グループは相変わらずだけど、3番人気以下が抜きつ抜かれつだね」 1. Endling by Maria Reva 2. Seascraper by Benjamin Wood 3. The Loneliness of Sonia and Sunny b…

Manuel Puig の “Kiss of the Spider Woman”(2)

「さてまず、最新のブッカー賞レースの下馬評を紹介しておくよ」 1. Endling by Maria Reva 2. The Loneliness of Sonia and Sunny by Kiran Desai(or 4) 3. Seascraper by Benjamin Wood(or 2) 4. Universality by Natasha Brown(or 3) 5. Audition b…

Alice Walker の “The Color Purple”(1)

先日、1983年のピューリツァー賞受賞作、Alice Walker の "The Color Purple"(1982)を読了。Alice Walker(1944 - )は黒人の女性作家として初めて小説で同賞を獲得。 本書が呼んだ社会的反響は大きく、1985年、スティーヴン・スピルバーグ監督によって映…