ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

2008-01-01から1年間の記事一覧

Dostoevsky の “The Idiot”(1)

Dostoyevsky の "The Idiot" を読了。Richard Pevear と Larissa Volokhonsky の夫妻が英訳した Vintage 版で読んだのだが、いやもう、めっちゃくちゃオモロー! おかげで、またまた長いレビューになってしまった。最長記録の更新だ。おしゃべり編は後日にし…

Carlos Fuentes の “A Change of Skin”(2)

ぼくは "A Change of Skin" のレビューの中で、「現実と虚構が入り乱れた猥雑な狂騒劇が繰りひろげられる」終幕を「マジック・リアリズムの真骨頂」と表現したが、この終幕をどうとらえるかによって本書の評価も決まるのではないだろうか。 「狂騒劇」が始ま…

Julio Cortazar の “Hopscotch”(2)

3年前に読んだあと書棚の奥に突っこんでいた "Hopscotch" を引っぱりだしてみると、第三部の冒頭には 'Expendable Chapters' という副題がついている。訳せば「読み捨ての章」。つまり、これから先はもう読まなくてもいいぞ、というわけだが、作者コルタサ…

Julio Cortazar の “Hopscotch”(1)

海外文学にハマってから3年前までは、夏になるとラテンアメリカ文学の作品も英語で読むことにしていた。ラテアメ文学となるとぼくはまったくの門外漢で、六〇年代に国際的なブームが起こったことも以前は知らなかったので、当然リアルタイムでは読んでいな…

Carlos Fuentes の “A Change of Skin”(1)

Carlos Fuentes の "A Change of Skin" を読了。いやはや、フォークナーに劣らぬ難物だった。A Change of Skin作者:Fuentes, CarlosFarrar, Straus and GirouxAmazon[☆☆☆☆★] 春の日曜日、ワーゲンに乗ってメキシコシティーから海辺のリゾート地へと向かう四…

D. H. Lawrence の “Aaron's Rod”(結び)

D. H. Lawrence の "Aaron's Rod" の終幕には、読んでいて思わず「元気が出てくる」箇所がある。この本には、「両者が自分の魂を所有し、ともに自由でありながら交わる」のが「愛の完成」であると説く作家が登場するわけだが、その作家が恋愛論から人間哲学…

D. H. Lawrence の “Aaron's Rod”(3)

D. H. Lawrence の "Aaron's Rod" には、ロレンスの現実認識を代弁する人物も登場する。それが主人公の男で、彼は当初、炭坑で働いていたのだが、やがて妻子を捨て、ロンドンでフルート奏者として生計を立てはじめる。その動機は要するに「愛からの逃避」だ…

D. H. Lawrence の “Aaron's Rod”(2) 

D. H. Lawrence の "Aaron's Rod" には 'aloness', 'singleness' という単語が何度か出てくる。訳せば「一人であること」「単独」。これが感傷的な「孤独」の意でないことは作中人物も断っているとおりで、ぼくは前々回、これを自分の言葉で「人がそれぞれ唯…

D. H. Lawrence の “The Rainbow”

ロレンスは学生時代の夏、"Lady Chatterley's Lover" を読んで以来、なんとなく夏読書向きのイメージがある。8年前に突然、海外文学に狂いはじめてから、夏になると英文学の古典としては、最初は E. M. フォースターやジョイス、コンラッド http://d.hatena…

D. H. Lawrence の “Aaron's Rod”(1)

D. H. Lawrence の "Aaron's Rod" を読了。ロレンス7作目の長編(22)で、彼の恋愛哲学、人間観が色濃く打ちだされた問題作だと思う。Aaron's Rod: Cambridge Lawrence Edition; Revised (Classic, 20th-Century, Penguin)作者: D. H. Lawrence,Mara Kalnin…

William Faulkner の “Intruder in the Dust”(2)

今日から D. H. Lawrence の "Aaron's Rod" を読みだしたらすっかりハマってしまい、もはや頭はロレンス・モード。しかし忘れないうちに、フォークナーの感想の続きを書いておこう。 テーマに関しては昨日書いたとおりだが、"Intruder in the Dust" の面白さ…

William Faulkner の “Intruder in the Dust”(1)

William Faulkner の "Intruder in the Dust" をやっと読了。これほどの難物は久しぶりだった。 追記:本書は1949年に映画化されましたが、日本では未公開のようです。Intruder in the Dust (Vintage International)作者:Faulkner, WilliamVintageAmazon[☆☆☆…

“Intruder in the Dust” におけるフォークナー英語の難しさ

フォークナーの "Intruder in the Dust" をようやく半分過ぎまで読みおえたところだが、いやはや「老脳」にはまったくしんどい。その英語の難しさについて気づいたことをいくつか書いておこう。 まずフォークナーに限らず、一般的に言えることだが、最初はど…

William Faulkner の “The Wild Palms”

3年ぶりにフォークナーを読みはじめたところだが、学力不足の上にボケ気味のため、なかなか進まない。まったく歳は取りたくないもんだ、と実感している。そこで今日は、3年前に読んだフォークナーの『野性の棕櫚』のレビュー(アマゾンに投稿して削除した…

2008年ブッカー賞のロングリストと John Berger の "To the Wedding"

昨日、今年のブッカー賞のロングリストが発表された。http://www.themanbookerprize.com/news/stories/1105久しぶりに超大物 Salman Rushdie の名前も見えるが、ぼくがほかに知っている作家は John Berger くらい。例によって日頃の不勉強ぶりを痛感した次第…

Claire Messud の "The Last Life"

先々週、Abha Dawesar の "That Summer in Paris" を読んでいるうちに思い出した作品の一つ。このところ3日で1冊のペースで新しいレビューを書いていたのだが、さすがにきつくなり、今日は昔のレビューでお茶を濁そう。The Last Life: A Novel作者: Claire…

Alberto Moravia の "Contempt"

Alberto Moravia の "Contempt" を読了。モラヴィアを読むのは3年ぶりだが、期待どおりオモロー! 追記:本書は1963年に映画化され、翌年、日本でも「軽蔑」として公開されました。監督はジャン=リュック・ゴダール。Contempt (New York Review Books Clas…

Margaret Drabble の "A Summer Bird-Cage"

Margaret Drabble の "A Summer Bird-Cage" を読了。題名に summer のついた未読の本はまだ何冊か手元にあるが、本書でとりあえず今年の「夏シリーズ」はおしまい。A Summer Bird-cage作者:Drabble, MargaretPenguinAmazon[☆☆☆★★] たわいもない小説だ。しか…

Helen Cross の "My Summer of Love"

Helen Cross の "My Summer of Love" を読了。「夏シリーズ」第4弾だが、今回はいささか期待はずれだった。My Summer of Love作者: Helen Cross出版社/メーカー: Bloomsbury Publishing PLC発売日: 2002/06/03メディア: ペーパーバックこの商品を含むブログ…

Abha Dawesar の "That Summer in Paris"

Abha Dawesar の "That Summer in Paris" を読了。『あの夏、パリで』という題名からいだく期待どおり、いやそれ以上に面白い佳作だった。That Summer in Paris作者:Dawesar, AbhaAnchorAmazon[☆☆☆★★] インド生まれの世界的な大作家プレム・ラスタムが、自分…

Karen Kingsbury の “Summer”

Karen Kingsbury の "Summer" を読了。最後は涙が止まらなくなり、これが電車の中でなくて本当によかった。Summer (Sunrise)作者: Karen Kingsbury出版社/メーカー: Tyndale House Pub発売日: 2007/08/21メディア: ペーパーバック クリック: 4回この商品を含…

Elizabeth Taylor の "In a Summer Season" 

いよいよ夏到来。そこでしばらく、題名に summer のついた本を読むことにした。In a Summer Season (Virago Modern Classics)作者:Taylor, ElizabethViragoAmazon[☆☆☆★★] 二部構成だが、前半は長大なイントロ。とくに事件らしい事件もなく、各人物の性格や心…

Rawi Hage の "De Niro's Game" 

今年の国際IMPACダブリン文学賞受賞作、Rawi Hage の "De Niro's Game" を読了。同賞にふさわしく、レバノンとフランスを舞台にしたインターナショナルな佳作である。De Niro's Game作者: Rawi Hage出版社/メーカー: Old Street Publishing発売日: 2008/05/0…

Marianne Wiggins の "The Shadow Catcher"

Marianne Wiggins の "The Shadow Catcher" を読了。なかなかの力作だが、今年の全米書評家協会賞(全米批評家協会賞)を逃した理由も何となく分かった。The Shadow Catcher: A Novel作者: Marianne Wiggins出版社/メーカー: Simon & Schuster発売日: 2008/0…

ぼくの上半期ベスト3

帰りの電車の中で、今年の全米書評家協会賞(全米批評家協会賞)最終候補作、Marianne Wiggins の "The Shadow Catcher" のペイパーバック版を半分過ぎまで読んだところだが、なかなか面白い。が、ハードカバーの表紙から期待したほどではなく、これが賞レー…

Rose Tremain の "The Road Home"

今年のオレンジ賞受賞作、Rose Tremain の "The Road Home" を読了。かなり面白かった。The Road Home: A Novel (English Edition)作者:Tremain, RoseLittle, Brown and CompanyAmazon[☆☆☆★★★] タイトルとは裏腹に、本書の大半を占めるのは、東欧の田舎町か…

Beryl Bainbridge の "An Awfully Big Adventure"

今年のオレンジ賞受賞作、Rose Tremain の "The Road Home" を半分ほど読んだところだが、かなり面白い。が、この拙文を書いているあいだもパソコンの電源が切れるのでは、と思えるほどマシンの調子が悪いので、きょうはとりあえず、同じ英国女流作家 Beryl …

William P. Young の "The Shack"

今週もニューヨーク・タイムズ紙の No.1ベストセラー、William P. Young の "The Shack" をやっと読みおえた。The Shack作者: William P. Young出版社/メーカー: Windblown Media発売日: 2007/05/01メディア: ペーパーバックこの商品を含むブログ (2件) を…

"The Shack" の中間報告

久しぶりに Evangelical Christian Publishers Association のHPを覗いたら、今年の Christian Book Awards の最終候補作が既に発表されており、7月13日には受賞作が発表されるという。http://www.ecpa.org/christianbookawards/finalists2008.php 昨年の大…

James Salter の "Light Years"

旧作発掘第二弾。James Salter の "Light Years" (75) を読んでみたが、またもや空振りに終わってしまった。Light Years (Vintage International)作者: James Salter出版社/メーカー: Vintage発売日: 1995/01/31メディア: ペーパーバックこの商品を含むブロ…