2008-01-01から1年間の記事一覧
日本時間で今朝、ブッカー賞の受賞作が発表され、Aravind Adiga の "The White Tiger" が栄冠に輝いた。http://www.themanbookerprize.com/news/stories/1146 今年はハードカバーの作品が多く、予算的に厳しいぼくはほとんどカヤの外。最終候補作をひとつ読…
休日ながら「自宅残業」に明け暮れ、"The World Made Straight" の続きがさっぱり読めなかった。そこで例によって、今日は昔のレビュー。6月に翻訳が出た『ザ・ロード』である。 追記:その後、本書は実際に映画化され、2009年に「ザ・ロード」との邦題で公…
世間は3連休かもしれないが、宮仕えのぼくは土曜出勤。ブログを書いたあと、DVDでアントニオーニの『情事』を観た。情事 [DVD]出版社/メーカー: 紀伊國屋書店発売日: 2008/08/30メディア: DVD購入: 3人 クリック: 96回この商品を含むブログ (9件) を見る…
前にも書いたとおり、"Eventide" における Kent Haruf の文体が「ヘミングウェイを思い出させる」という新聞評は的を射ている。その例は随所に見られるのだが、中でもぼくが「あ、これはヘミングウェイだな」と思ったのは、幕切れ近く、ある少年が遊び仲間だ…
Kent Haruf の "Eventide" は心にしみる佳作なのだが、涙を飲んで減点材料を挙げると、まず長編としての骨格をなす主筋が弱い。前作 "Plainsong" では、高校教師の息子たちの「トム・ソーヤーとハックルベリー・フィンの冒険を連想させる」物語と、「女子高…
Kent Haruf の "Eventide" を読了。やはり "Plainsong" ほどの出来ばえではなかったが、それでも読後、しばし静かな感動の余韻にひたった。Eventide (Vintage Contemporaries)作者: Kent Haruf出版社/メーカー: Vintage発売日: 2005/05/03メディア: ペーパー…
明日には Kent Haruf の "Eventide" のレビューを書けそうなところまで読み進んだ。今のところぼくの直感は正しく、前作 "Plainsong" ほどの出来ばえではない。その原因は…いや、これは最終報告にとっておくとして、「静かな抑制された筆致」は相変わらず快…
このところ天気が変わりやすく、てきめん風邪をひいてしまい、気分はすっかりブルー。昨日など本も読めず、先々週、BGMのベスト2に選んだ『タブラ・ラサ』ばかり聴いていた。ひさしぶりに聴くと「静寂の音」が心にしみてくる。あと、Ketil Bjornstad & D…
Marisa de los Santos の "Love Walked In" を読了。前回ふれたとおり、4、5月ごろだったか、ニューヨーク・タイムズのベストセラー・リストに入っていた本。お買い得だと思う。Love Walked In作者: Marisa De Los Santos出版社/メーカー: Plume発売日: 20…
今、Marisa de los Santos の "Love Walked In" を読んでいるところだが、とても快調で面白い。たしか春先に何週か連続で、ニューヨーク・タイムズのベストセラー・リストに入っていた。 洋書ファンのご多分に洩れず、ぼくも同リストはわりとまめにチェック…
06年に続いて05年に読んだ本のベスト3を選ぼうと思ったが、ぼくがリアルタイムで英米の現代文学を追いかけるようになったのはこの2、3年のことで、05年はまだ旧作が中心だった。たとえばイーヴリン・ウォーなども一例で、以下は、「奇想と常識と」と題し…
前々回、ぼくは Elizabeth Berg の "We Are All Welcome Here" を評して、「室内劇が中心」で、「事件も人物関係もあまり発展しようがない」と書いてしまったけれど、これはいささか誤解を招く表現だ。室内劇でも、事件や人物関係がどんどん発展するものもあ…
去年読んだ本のベスト3は今年の2月11日にまとめたが、http://d.hatena.ne.jp/sakihidemi/20080211/p1 このブログを始めたのは1年前なので、おととし以前の年間ベスト3についてはどこにも書いたことがない。以下とりあえず、06年に読んだ本を思い出すまま…
Elizabeth Berg の "We Are All Welcome Here" を読了。「文学の夏」シリーズ以来、大作ばかり読んでいたので、今度は肩の凝らないものを、と思って取りかかったのだが、いささか期待はずれだった。We Are All Welcome Here: A Novel作者: Elizabeth Berg出…
小説、音楽とくれば当然、次は映画だろう。いや、趣味を言うなら2番目か。しかし、これが実はいちばんベスト…を選びにくい。すぐに目移りしてしまうからだ。有名な話だが、今日のベスト…を選ぶのが無難なところだろう。 1.天井桟敷の人々 [DVD]出版社/メ…
昨日の続きを書こうと思ったけど、ぼくは本を読みながらクラシックを聴いていることが多いので、BGMのベスト…は何だろうと気になってきた。今までCDで聴いた回数の多い順に書いておこう。 1.バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ …
今日アマゾンから、Philip Hensher の "Northern Clemency" の配送が遅れるとの通知があり、迷ったがキャンセルすることにした。とにかく700ページを超える大作なので、ブッカー賞の発表日までに読み切れないかもしれない。それなら何も大枚はたいてハードカ…
Philip Hensher の "The Northern Clemency" はまだ手元に届かないし、つなぎに読みはじめた本もまだ途中。そこで今日は毎度おなじみ、昔のレビューでお茶を濁すことにした。 Afterwards (Vintage International)作者: Rachel Seiffert出版社/メーカー: Vint…
Steve Toltz の "A Fraction of the Whole" をやっと読了。ぼくが読んだのは Spiegel & Grau の米版だが、英版では700ページを超える大作である。A Fraction of the Whole作者:Toltz, Steve発売日: 2008/02/12メディア: ハードカバーA Fraction Of The Whole…
明日には最終候補作の一つ、Steve Toltz の "A Fraction of the Whole" のレビューを何とか書けそうなところまで読み進んだが、ひとまず感想を述べると、最後の6,7章がかなり退屈。しかし、あとまだ30ページあるので、これから挽回することを期待したい。…
9月に入ってにわかに多忙を極め、なかなか落ち着いて本が読めなくなった。今年のブッカー賞のショートリストに残った Steve Toltz の "A Fraction of the Whole" もまだ終わらない。もっとも、これは途中で飽きてしまったことも原因なのだが…。 というわけ…
本日、今年のブッカー賞のショートリストが発表された。http://www.themanbookerprize.com/news/stories/1134 Aravind Adiga "The White Tiger", Sebastian Barry "The Secret Scripture", Amitav Ghosh "Sea of Poppies", Linda Grant "The Clothes on Thei…
現地時間で9月9日、ブッカー賞のショートリストが発表されることになっている。今年はまだ、去年と違って一冊も候補作を読んでいないが、あちらの情報やシノプシスの斜め読みなどから勝手な予想を立ててみた。 まず、Steve Toltz の "A Fraction of the Wh…
Thomas Mann の "Confessions of Felix Krull, Confidence Man" を読みはじめたとき、前回紹介したような背景知識がほとんどなく、これが1954年の作品ということだけ知っていたぼくは、じつは、ある予断を持っていた。ここで告白をする詐欺師とは、ひょっと…
ぼくが今まで英訳でふれたドイツ文学といえば、トーマス・マンのほか、カフカ http://d.hatena.ne.jp/sakihidemi/20080424/p1、ギュンター・グラス http://d.hatena.ne.jp/sakihidemi/20080106/p1、そして『朗読者』だけ。まことにお恥ずかしい限りだが、こ…
Thomas Mann の "Confessions of Felix Krull, Confidence Man" を読了。予想以上に時間がかかってしまった。元来のボケと夏バテ、夏風邪のせいだろう。(追記:以下のレビューは読みが甘く、いつか再読したいと思っています)Confessions of Felix Krull, C…
トーマス・マンの "Confessions of Felix Krull, Confidence Man" を読んでいるのだが、英語は易しいのにどうも進まない。そこで今日は、昔のレビューでお茶を濁すことにした。 追記:本書は2004年に映画化されました。 Old Goriot (The Human Comedy)作者: …
「完全に近い善人」ムイシュキンが単なるお人好しでないことは明らかだ。彼はたしかに idiot と呼ばれるのだが、実際は鋭い知性の持ち主であり、相手の魂胆や下心をすばやく見抜く。しかしそれを咎めることなく、あとで後悔した人間をすぐに赦す。それゆえム…
やっと田舎から帰ってきた。帰省中にトーマス・マンを読もうと思ったのだが、意外に過密スケジュールで完読できなかったので、今日は『白痴』の続きでも。 第1部の第9章で大笑いした箇所がある。飲んだくれの老将軍が絶世の美女ナスターシャ・フィリッポヴ…
恥ずかしながら、『白痴』を完読したのは今回が初めてだ。まず学生時代、ドストエフスキーについて調べる必要があったとき、邦訳で途中まで読んだのだが、結局締め切りに間に合わず、ベルジャーエフの『ドストエフスキーの世界観』でごまかしてしまった。そ…