ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

2011-01-01から1年間の記事一覧

“The Stranger's Child” 雑感 (1)

今年のブッカー賞の本命では、とあちらで呼び声の高い Alan Hollinghurst の "The Stranger's Child" に取りかかった。その噂を知り、早くに入手していたのだが、何しろもっか、猫の手も借りたいほど忙しく、届いた分厚い本を見て今まで尻込みしていた。おま…

2011年ブッカー賞ロングリスト発表 (2011 Man Booker Prize Longlist)

夜中にふと目が覚めて検索したら、今年のブッカー賞のロングリストが発表されていた。これを見ると、発表前から今年の大本命では、と評判の高い Alan Hollinghurst の "The Stranger's Child" もノミネートされている。じつはその評判を知り、すでにペイパー…

Helen Simonson の “Major Pettigrew's Last Stand” (2)

レビューを書いたあとは、いつも翌日に落ち穂拾いの駄文を綴っているのだが、昨日は出勤日で大忙し。夜は夜で、ストレス発散のために一杯やったのでダウン。今日も午前中は「自宅残業」に追われ、補足を書くのがずいぶん遅くなってしまった。 これは雑感でも…

Helen Simonson の “Major Pettigrew's Last Stand” (1)

超多忙につき、予定より大幅に遅れてしまったが、何とか Helen Simonson の "Major Pettigrew's Last Stand" を読みおえた。さっそくいつものようにレビューを書いておこう。Major Pettigrew's Last Stand: A Novel (Random House Reader's Circle)作者: Hel…

“Major Pettigrew's Last Stand” 雑感 (2)

世間は3連休だったはずだが、ぼくは2連休。それも「自宅残業」に追われ、本書はボチボチしか読んでいない。 となると印象はふつう薄れるものだが、本書の場合、いつどのページをひらいても楽しいシークェンスが待っている。テーマ追求型の小説ではないので…

“Major Pettigrew's Last Stand” 雑感 (1)

Helen Simonson の "Major Pettigrew's Last Stand" に取りかかった。去る4月下旬から5月上旬にかけて、ニューヨーク・タイムズ紙の Trade Paperback 部門ベストセラー・リストに載っていた本だが、ハードカバーのほうは昨年、米アマゾンの年間ベスト10に…

Kevin Barry の “City of Bohane” (2)

本書は雑感にも書いたように、今年のブッカー賞のロングリストに選ばれそうな作品ということで興味を惹かれた。実際、中盤過ぎくらいまではかなり快調で、これはひょっとしたら…と期待をふくらませていたのだが、後半になって失速。読了後の今は、本書のロン…

Kevin Barry の “City of Bohane” (1)

アイルランドの新人作家、Kevin Barry の長編デビュー作、“City of Bohane” を読みおえた。さっそくいつものようにレビューを書いておこう。 追記:その後、本書は2013年の国際IMPACダブリン文学賞を受賞しました。City of Bohane作者: Kevin Barry出版社/メ…

“City of Bohane” 雑感(2)

昨日は出勤日であまり読めなかったが、今日は何とかノルマを達成。もう粗筋を書けないところまで読みすすんだ。相変わらず、出来はかなりいい。 その後いくつか明らかになったことがある。ネタばらしにならない程度にメモしておこう。まず、前回はてっきり現…

“City of Bohane” 雑感(1)

Kevin Barry の "City of Bohane" に取りかかった。Barry はアイルランドの新人作家で、2007年に "There Are Little Kingdoms" という短編集で Rooney Prize を受賞。本書は彼の処女長編である。 …などと知ったかぶりで書いたが、これすべて著者紹介の丸写し…

Anne Enright の “The Forgotten Waltz” (2)

これは既報のとおり、あちらのブロガーたちのあいだで、今年のブッカー賞ロングリストの候補作に挙げられている作品の一つだ。その後発見したサイト(http://www.waldenpondbooks.com/booker.html)でも紹介されている。Anne Enright とは相性のわるいぼくだ…

Anne Enright の “The Forgotten Waltz” (1)

Anne Enright の最新作、"The Forgotten Waltz" を読みおえた。さっそくレビューを書いておこう。The Forgotten Waltz作者: Anne Enright出版社/メーカー: Jonathan Cape Ltd発売日: 2011/04/28メディア: ペーパーバックこの商品を含むブログ (1件) を見る[☆…

“The Forgotten Waltz” 雑感

Anne Enright の "The Forgotten Waltz" に取りかかった。ご存じ2007年度ブッカー賞受賞作家の最新作である。 ぼくはあのときの受賞作、"The Gathering" にはえらく退屈したほうだが、今回彼女の作品を読んでみようと思ったのは、今年のブッカー賞のロングリ…

今年の上半期、ぼくのベスト6

この半年で読んだ本は30冊。日本語の本は一冊も読んでいない。何だか情けない数字だが、多忙その他、諸般の事情で思うように読めなかった時期もある。宮仕えの身としては、まずまずがんばったほうだろう。去年の今ごろは、ベスト3さえ選べる読書量ではなか…

Tea Obreht の “The Tiger's Wife”(2)

今週もけっこう仕事がきつかったが、何とかウィークデーに読みおえることができた。ぼくにしてはがんばったほうだ。なぜ努力したかというと、本書の出来ばえがすばらしかったのはもちろんだが、じつはこの半年でこれが30冊目になることに気づいたからだ。よ…

Tea Obreht の “The Tiger's Wife”(1)

今年のオレンジ賞受賞作、Tea Obreht の "The Tiger's Wife" を読了。さっそく例によってレビューを書いておこう。Tiger's Wife作者: Ta Obreht出版社/メーカー: Phoenix発売日: 2011/06/01メディア: ペーパーバック購入: 2人 クリック: 13回この商品を含む…

“The Tiger's Wife”雑感(2)

やっと状況が少しのみこめてきた。昨日は、第二次大戦中、ドイツ軍の空襲を受けた街がブダペストらしいと書いたが、これは単純ミスで、ベオグラード。さっそく昨日の記事を訂正しておいた。 勘違いに気づいたのは、主人公の女医の祖父がティトー元帥を手術し…

“The Tiger's Wife”雑感(1)

今年のオレンジ賞受賞作、Tea Obreht の "The Tiger's Wife" のペイパーバック版が意外に早く手元に届いたので、予定を変更してさっそく取りかかった。既報のとおり、アメリカのサイトでは、早くも今年のベスト10に推しているところもあるくらいで、とても評…

Beryl Bainbridge の “The Bottle Factory Outing”(2)

今年の2月、5冊のブッカー賞最終候補作のカバー写真を並べただけの簡単な追悼記事を書いてから4ヵ月。やっと5分の3までレビューつきになった。ほぼ1年遅れとはいえ、東洋の島国のマイナーなブログで少しずつ「追悼読書」が進行していることを Bainbrid…

Beryl Bainbridge の “The Bottle Factory Outing”(1)

Beryl Bainbridge の "The Bottle Factory Outing" を読みおえた。Bainbridge は、生涯で5回もブッカー賞のショートリストにノミネートされながら、ついに栄冠に輝くことなく昨年7月に他界してしまった「悲運の女王」で、これは1974年の作品。彼女としては…

“The Bottle Factory Outing”雑感

昨年7月に他界した “ブッカー賞悲運の女王” Beryl Bainbridge の "The Bottle Factory Outing" に取りかかった。1974年の同賞最終候補作である。 Bainbridge の訃報を知ったのは何と今年の2月。急遽、未読だった4冊の最終候補作を入手し、4月にまず73年…

Sarah Winman の “When God Was a Rabbit”(2)

このところ体調不良につき、カバーから軽い読み物を期待して読みはじめた本書だが、第1部は大いに満足。何度かプッと噴きだした場面もあり、ぼくはこういうわかりやすいスラップスティック・コメディーが大好きだ。 その愉快さたるや、はて話の方向はどうな…

Sarah Winman の “When God Was a Rabbit”(1)

もっかイギリスでベストセラーになっている(アマゾンUKフィクション部門24位)、Sarah Winman の "When God Was a Rabbit" を読みおえた。さっそくいつものようにレビューを書いておこう。When God Was a Rabbit作者: Sarah Winman出版社/メーカー: Headlin…

“When God Was a Rabbit”雑感(2)

読んでいるうちにわかったのだが、これは2部構成。第1部は主人公 Elly の少女時代で、第2部はその15年後、Elly は27歳になっている。舞台は最初ロンドンだったが、一家はやがてコーンウォールの海辺の村に引っ越し、民宿を経営。Elly の兄が働いているニ…

“When God Was a Rabbit”雑感(1)

今日はひと仕事終えてから、もっかイギリスで大人気を博している Sarah Winman の "When God Was a Rabbit" に取りかかった。本書を発見したのは先月の中ごろだが、以来1ヵ月、ずっとベストセラー・リストの上位を走っている。 これも例によってカバーが気…

“The Memory of Love”(2)

昨日のレビューにも書いたように、これは表面的、現象的な題材としては「メロドラマそのものだ」。横恋慕、失恋、不倫。タイトルからして甘ったるい恋愛小説を連想してしまうが、それはまあ、ぼくのような文学ミーハーを引っかけようという計算が働いている…

Aminatta Forna の “The Memory of Love”(1)

今年の国際IMPACダブリン文学賞は「残念ながら」、Colum McCann の "Let the Great World Spin" に決定した。もちろん秀作には違いないのだが、これは周知のとおり、2009年に全米図書賞を受賞している(http://d.hatena.ne.jp/sakihidemi/20100128)。ダブリ…

“The Memory of Love”雑感(4)

このところ血圧がやけに低く、何だかフラフラする。おかげで昨日も思ったほど進まなかったが、相変わらずすばらしい出来ばえである。 途中で気がつき、考えてみれば当然だなと思ったのは、シエラレオネが舞台だけあって、激しかった内戦がやはり物語に影を落…

2011年ベスト10小説と “The Memory of Love” 雑感(3)

さっそく David Foster Wallace の "The Pale King" が届いたが、これは夏休み用ですな。不勉強のため未読の作家だが難物らしいし、何しろ分厚い。しかし「サロン・ドット・コム」にも載っている著名作家なので、いつかは try しなくては。 ところで、どれだ…

“The Memory of Love”雑感(2)

今年のオレンジ賞を受賞した Téa Obreht の "The Tiger's Wife" は大変評判がよく、ネットで検索してみると、早くもアメリカの2011年ベスト10に選んでいるサイトもあるほどで、ペイパーバック版が届くのが楽しみだ。このベスト10にはどういうわけか、未刊行…