ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

ノーベル文学賞

William Faulkner の “The Town”(1)

このところボチボチ読んでいた Faulkner の "The Town"(1957)をやっと読了。周知のとおり、the Snopes trilogy スノープス三部作の第二巻である。さっそくレビューを書いておこう。 The Town (Vintage International) 作者: William Faulkner 出版社/メー…

Orhan Pamuk の “The White Castle”(3)

ここ数日、いままでサボっていた過去記事の分類をボチボチやっていた。中にはタイトルを見ただけでどんな本かすぐに思い出したものもあるが、それはレアケース。レビューを読み返してもピンと来ない本のほうが圧倒的に多い。 そんなときは前後の記事から判断…

Orhan Pamuk の “The White Castle”(2)

恥ずかしながら、Orhan Pamuk の作品を読んだのは本書が2冊目。日本では「オルハン・パムク」と表記されていることも、何ヵ月か前に “My Name Is Red”(1998 ☆☆☆☆★)を読むまで知らなかった。 宮仕えの時代にこのノーベル賞作家を敬遠していたのは、同書を…

William Faulkner の “The Hamlet”(1)

ああ、やっぱりヤマカンどおり、今年の全米図書賞は Sigrid Nunez の "The Friend" に決まりましたね! しかし当面、読書予定はけっこう詰まっている。とりあえず、来年2月に出るというペイパーバック版を待つことにしよう。 さて、このところ体調不良につ…

Orhan Pamuk の “The White Castle”(1)

きのう、ノーベル賞作家 Orhan Pamuk の "The While Castle"(1985)を読了。さっそくレビューを書いておこう。(追記:本書は、1990年に創設されたインディペンデント紙外国小説最優秀作品賞の第一回受賞作でした)。 The White Castle (Vintage Internatio…

Patrick Modiano の “Villa Triste”(2)

ゆうべ、愛媛の田舎からやっと帰ってきた。久しぶりに長い帰省とあって、本を3冊バッグに忍ばせたのだが、最初の、それもいちばん薄いやつをまだ読みおえていない。 今回は、母が新しい高齢者介護施設に引っ越しすることになり、その手伝いが帰省の主目的。…

Patrick Modiano の “Villa Triste”(1)

ご存じフランスのノーベル賞作家、Patrick Modiano の "Villa Triste"(1975)を読了。さっそくレビューを書いておこう。Villa Triste: A Novel作者:Modiano, PatrickOther PressAmazon[☆☆☆★★] あの夏、ぼくは18歳。アルジェリア戦争の災禍を逃れ、遠くにス…

Olga Tokarczuk の “Flights”(1)

ゆうべ、今年の国際ブッカー賞受賞作、Olga Tokarczuk の "Flights"(2007)を読了。原語はポーランド語。さっそくレビューを書いておこう。(後記:その後 Olga Tokarczuk はノーベル文学賞を受賞しました)Flights作者:Tokarczuk, OlgaRiverhead BooksAmaz…

Orhan Pamuk の “My Name Is Red”(2)

何度か(2)を書こうと思いつつ、きょうまでズレこんでしまった。泣く子も嗤うような〈恥ずかしながら未読シリーズ〉だからだ。どんな感想を述べても、何かの記事の二番煎じでしょう。 ということで、まず周辺情報から。本書は国際IMPACダブリン文学賞受賞…

Orhan Pamuk の “My Name Is Red”(1)

きのう、2003年の国際IMPACダブリン文学賞受賞作、Orhan Pamuk の "My Name Is Red"(1998)を読了。原語はトルコ語。一日寝かせたところでレビューの書き出しが頭にちらついてきた。さてどうなりますか。My Name is Red作者:Pamuk, OrhanFaber And Faber Lt…

Patrick Modiano の “In the Cafe of Lost Youth”(2)

ああもう、先月ハワイに出かけてから2週間もたってしまった。ほぼ40年ぶりの海外旅行で大興奮したというのに、記憶がどんどん薄れていく。息を切らしながら登ったダイヤモンドヘッド。あれはいったい何だったんだろう。 と、それと似たような思いが積もり積…

Patrick Modiano の “Dora Bruder”(2)

今回のハワイ旅行の友に Modiano を選んだのは、本のサイズが軽薄短小だったから。Modiano は旅の直前にも読んだばかり。同じ作家のものは内容がある程度予測できるので、ふだんはなるべく連続して読まないようにしているのだが、旅行となると話は別。自分好…

Patrick Modiano の “In the Café of Lost Youth”(1)

きょうは本当は "Dora Bruder" の続きを書くまわりなのだが、ゆうべ、ハワイ旅行の帰りに読みはじめた、同じく Patrick Modiano の "In the Café of Lost Youth"(2007)を読了。記憶が薄れないうちに、そちらのレビューを書いておこう。In the Café of Lost…

Patrick Modiano の “Dora Bruder”(1)

きのうハワイから帰ってきた。ダイヤモンドヘッドに登り、パールハーバーのツアーに参加した以外は、観光らしきこともせず、ショッピングも ABC Stores でチョコレートをお土産に買っただけ。あとはのんびりワイキキビーチで本を読んでいた。 帰りの機内で読…

Patrick Modiano の “Suspended Sentences”(2)

きのうはぼくの最終出勤日だった。40年近く勤めた職場とも、いよいよオサラバ。昼前に帰宅し、かみさんともども、シャンパンで祝杯をあげた。 老後の予定は特にない。とりあえず、きょうの午後から、ほぼ40年ぶりにハワイに出かけ、4月には愛媛の田舎に帰省…

Patrick Modiano の “Suspended Sentences”(1)

ゆうべ、Patrick Modiano の "Suspended Sentences"(1993)を読了。仏語の原題は "Chien de printemps"。3作の中編 "Afterimage" "Suspended Sentences" "Flowers of Ruin" を一冊にまとめたもので、表題作以外の原題は "Remise de peine"(1988)、"Fleur…

“The Green House”(2)と “No One Belongs Here More Than You”(2)

きのうまで飛鳥・奈良・京都を旅行していた。雨は一滴も降らず、きのうの昼など京都市内は22度。この時期に奈良や京都で汗だくになったのは初めてだ。 閑話休題。きょうは2冊まとめて補足しておこう。まず "The Green House"(1966)だが、いくら不勉強のぼ…

Mario Vargas Llosa の “The Green House”(1)

Mario Vargas Llosa の "The Green House"(1966)を読了。スペイン語の原題は "La Casa Verde"。さっそくレビューを書いておこう。The Green House作者:Vargas Llosa, MarioHarper PerennialAmazon[☆☆☆★★★]「文化とは、ある国民の生きかたである」と述べた…

Patrick Modiano の “Missing Person”(2)

先週は退職前の歓送会やら、財布を落とすやら!、何かとあわただしい毎日だった。 さて、Patrick Modiano もご存じノーベル賞作家(2014年受賞)。「も」というのは、本ブログの数少ないリピーターのみなさまならお気づきのとおり、ぼくはこのところ、〈文学…

Patrick Modiano の “Missing Person”(1)

1978年のゴンクール賞受賞作、Patrick Modiano の "Missing Person"(1978)を読了。仏語の原題は "Rue des boutiques obscures"。ご存じ『冬のソナタ』の下敷きになった作品である。さっそくレビューを書いておこう。Missing Person (Verba Mundi Book)作者…

Doris Lessing の “The Good Terrorist”(2)

Doris Lessing はご存じノーベル賞作家(2007年受賞)。が、恥ずかしながら、ぼくはいままで短編すら読んだことがなかった。そこで今回、〈文学のお勉強シリーズ〉の一環で本書に取り組んだというわけだ。 なにしろ1985年のブッカー賞最終候補作である。きっ…

Doris Lessing の “The Good Terrorist”(1)

1985年のブッカー賞最終候補作、Doris Lessing の "The Good Terrorist"(1985)をやっと読了。さっそくレビューを書いておこう。The Good Terrorist: A Thriller (Vintage International)作者:Lessing, DorisVintageAmazon[☆☆☆] 戦争も革命もテロも、その起…

"The Good Terrorist" 雑感 (2)

ボチボチ読んでいたが、やっと終盤に差しかかってきた。眠い目をこすりつつ、少しだけ、今までの内容を振り返ってみよう。 まず、看板に偽りあり、と言いたくなるほどテロの話題はなかなか出てこない。主人公 Alice をふくむコミュニストのグループが爆弾製…

"The Good Terrorist" 雑感 (1)

先週 Alice Munro の短編集を読みおえた翌日、青森に出かけた。前からぜひ、それも冬場に太宰治の生家、斜陽館を訪れたかった。 思ったほどの積雪量ではなかったが、それでも途中寄った弘前、五所川原、そして斜陽館のある金木はもちろん雪の中。五所川原に…

Alice Munro の “The Progress of Love”(2)

Alice Munro を初めて読んだのは5年前、大変遅ればせながら2013年正月のことだった。それが現時点で最新作の "Dear Life"(2012)。いたく気に入り(☆☆☆☆)、10月には "Dance of the Happy Shades"(1968)を通読。完全にノックアウトされましたね(☆☆☆☆★)…

Alice Munro の “The Progress of Love”(1)

Alice Munro の短編集 "The Progress of Love"(1986)を読了。さっそくレビューを書いておこう。The Progress of Love作者:Munro, AliceVintageAmazon[☆☆☆★★★] 人生にはときどき、「永遠の一瞬」とでもいえるような瞬間がある。いつまでも心にのこり、なに…

Nadine Gordimer の “The Conservationist”(4)

最後の補足をしておこう。本書は1974年のブッカー賞受賞作だが、いまのところまだ邦訳は出ていないようだ。その理由はおそらく、「決して面白い読み物ではない」からだろう。要するに、「売れない」という判断が昔からあるのではないか。 ところが、内容はど…

Nadine Gordimer の “The Conservationist”(3)

まず昨日の訂正から。2番めの引用箇所に If I had had my father's money とあったので、メモを確かめもせず、中間部分のエピソードもうっかり Mehring の息子の話だと勘違いしてしまった。実際は Mehring 自身が経験したことである。朝起きて気がつき、あ…

Nadine Gordimer の “The Conservationist”(2)

いやはや、これはムツカシかった! この数年読んだ本の中では、最高難度の部類に入ると思う。 悪戦したのはむろん、ぼく自身の貧弱な語学力のせいでもある。が、それを差し引いても、本書の難解さは単に語学だけの問題ではないかもしれない。 語学だけなら、…

Nadine Gordimer の “The Conservationist”(1)

1974年のブッカー賞受賞作、Nadine Gordimer の "The Conservationist" を読了。Gordimer は南アフリカの作家で、1991年にノーベル文学賞を受賞。本書はたぶん彼女の代表作のひとつだと思うが、まだ邦訳は刊行されていないようだ。さっそくレビューを書いて…