ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

2010-01-01から1年間の記事一覧

Emma Donoghue の “Room”(2)

表紙を見ると、「一気に読むべき本」との Audrey Niffenegger の評言が…なるほど、うまいことを言いますなあ。ひるがえって、最初の3分の1をダラダラ読み、残りを一気呵成に読んだぼくは何て言えばいいんだろう。 前半は間違いなく面白い。ところが、後半…

Emma Donoghue の “Room”(1)

昨日は結局、小人閑居して不善を為すで、終日ダラダラ過ごしてしまった。明けて今日は今年のブッカー賞最終候補作のひとつ、Emma Donoghue の "Room" に取り組み、何とか残り3分の2を読了。さっそくいつものようにレビューを書いておこう。Room作者: Emma …

“Room”雑感(2)

昨日はやっぱりバテバテで、思ったほど読めなかった。今日もお疲れモードだが明日から3連休。景気づけに一杯やる前に雑感の続きを書いておこう。 これは今のところタイトルどおり、ある家というか小屋の部屋の中だけで起きる出来事を描いた正真正銘の室内劇…

“Room”雑感(1)

今週も多忙を極め、昨日など残業疲れでとても本を読む気になれず、チャイコンを聴いただけで寝てしまった。なぜチャイコンかというと、先月、田舎に帰る途中に観た映画「オーケストラ」がいまだに脳裏に焼きついているからで、あのクライマックス・シーンは…

Tom McCarthy の “C”(2)

昨日は本書の残り半分近くを珍しく「ちゃんと机に向かって読」み、そのあと無い知恵を絞ってレビューらしきものを書いたのだが、今読みかえしてみると、やっぱり「とんでもない勘違いのような気もする」。どこかの英文科の先生が目にしたら、これだから素人…

Tom McCarthy の “C”(1)

今年のブッカー賞最終候補作の中で、今のところ1番人気らしい Tom McCarthy の "C" をやっと読みおえた。さっそく例によってレビューを書いておこう。C作者: Tom McCarthy出版社/メーカー: Jonathan Cape Ltd発売日: 2010/08/05メディア: ハードカバー クリ…

“C”雑感

今日はまず、ブッカー賞のショートリストについての感想の続きから述べよう。ぼくは David Mitchell が落選して Peter Carey が残るとはひどいなあと思ったので、あちらの記事をいくつか拾い読みしたところ、Peter Carey には受賞して欲しくない、と書いてあ…

2010年ブッカー賞ショートリスト発表(Man Booker Prize 2010 shortlist)

今年はロングリストの段階で珍しく6冊も候補作を読んでいたので、例年以上にショートリストに残った作品が気になり、今しがた調べてみた。すると、ぼくが勝手に大本命に推していた David Mitchell はあえなく落選。逆に、ぼくにしては珍しく酷評した Peter …

Peter Carey の “Parrot and Olivier in America”(2)

仕事の合間に本書の後半をボチボチ読みながら、ぼくが歴史小説に期待するものは何だろうと考えてみた。以下、いささか図式的だが、思いつくままに挙げてみると、 1.知られざる事実もしくは人物に光をあてたものを読み、なるほどそういうこともあったのか、…

Peter Carey の “Parrot and Olivier in America”(1)

たまっていた仕事を休日返上で片づけたあと、今年のブッカー賞候補作、Peter Carey の "Parrot and Olivier in America" をやっと読みおえた。さっそくレビューを書いておこう。Parrot and Olivier in America作者:Carey, Peter発売日: 2010/08/05メディア: …

“Parrot and Olivier in America”雑感(3)

帰省中にサボっていた仕事に追われ、なかなか思うように進まないが、それでも何とか後半に突入。わりとクイクイ読める本だ。 といっても、無我夢中で読みふけっているわけではない。舞台がアメリカに変わり、いよいよ本筋が始まったというのに、前回同様、「…

“Parrot and Olivier in America”雑感 (2)

先ほど田舎から帰ってきた。当初は帰省中に本書を読みおえようと意気ごんでいたのに、友人と飲んだり市内をチャリで回ったりしているうちに戦意喪失。帰りのバスと飛行機の中でふたたび取りかかった。 今日は Parrot と Olivier の二人が船でニューヨークに…

“Parrot and Olivier in America”雑感 (1)

昨日から帰省。またもやケータイを使って駄文を綴ることになり、不便この上ない。ともあれ、今年のブッカー賞候補作、Peter Carey の "Parrot and Olivier in America" を読みはじめた。これまた大長編だ。 Peter Carey もぼくには馴じみの薄い作家で、"True…

Paul Murray の “Skippy Dies”(2)

先週読んだ David Mitchell の "The Thousand Autumns of Jacob de Zoet" がわりと重い内容だったので、今度は肩の凝らない小説を、と思って取りかかったのだが、結果的に当てはずれ。えらく長いし、最後あたりは夏バテも手伝ってヒーヒーだった。これまた大…

Paul Murray の “Skippy Dies”(1)

今年のブッカー賞候補作、Paul Murray の "Skippy Dies" をやっと読みおえた。さっそく、いつものようにレビューを書いておこう。Skippy Dies作者:Murray, PaulFarrar Straus & GirouxAmazonSkippy Dies作者:Murray, PaulHamish HamiltonAmazon[☆☆☆☆] 学園も…

“Skippy Dies”雑感(3)

がんばればレビューを書けそうなところまで読み進んだが、このあと酒を飲むことにしているので今日はもうあきらめた。それにしても長い小説だ! ひょっとしたら、今年のブッカー賞候補作の中でいちばん長いかもしれない。こんなにつき合ったんだから、ぜひと…

“Skippy Dies”雑感(2)

ガーディアン紙のHPをながめていたら、A. S. Byatt がオレンジ賞についてこんな発言をしている記事が目についた。The British novelist [Byatt] has been vocal in her criticism of sexism in the literary world, and also hit out at the Orange prize, w…

“Skippy Dies”雑感(1)

注文していた今年のブッカー賞候補作の第2陣が届いた。ぼくはふだんレビューのたぐいはおろか、表紙の宣伝文句もほとんど読まないのだが、一度に何冊も届いたのでさすがに選別しないといけない。そこで裏表紙の紹介文だけ斜め読みした結果、おそらく泡沫候…

David Mitchell の “The Thousand Autumns of Jacob de Zoet”(3)

先月の末に読んだ Paulette Jiles の "The Color of Lightning" について駄文を綴ったとき、「日本文学より海外文学のほうが倫理の問題を扱った作品に出くわす確率が高いのではないか」という趣旨の独断と偏見を披露してしまったが、食い足りない面こそある…

David Mitchell の “The Thousand Autumns of Jacob de Zoet”(2)

エコ時代を先取りしてわが家にはクーラーがなく、扇風機も風呂上がりにしかつけない。あとは熱帯夜でも団扇だけだが、今年の夏の暑さはただごとではなく、保冷パックを首筋や脇の下に当てながら本書を読みおえた。最初のうちこそ「一気に読み通したくなるほ…

David Mitchell の “The Thousand Autumns of Jacob de Zoet”(1)

今年のブッカー賞の有力候補作、David Mitchell の "The Thousand Autumns of Jacob de Zoet" をやっと読みおえた。さっそくレビューを書いておこう。The Thousand Autumns of Jacob de Zoet作者:Mitchell, DavidSceptreAmazon[☆☆☆☆★] いささか度を超した細…

“The Thousand Autumns of Jacob de Zoet”雑感(3)

今日は第3部の途中まで読み進んだ。このペースだと、明日にはレビューが書けるかもしれない。毎日猛暑が続いているが、本書のように分厚い本をヒーヒーうなりながら読むのもまた格別だ。小学校のころから夏は大好きだ。 第2部は相当に面白い! 例によって…

“The Thousand Autumns of Jacob de Zoet”雑感(2)

今日は暑い、この本も厚い、などと親父ギャグを考えているうちに、だんだん面白くなってきた! 正直言って、これはおそらく熱心な Mitchell ファンでもないかぎり、最初は多少の忍耐を要する作品だと思う。が、それでもしばらく我慢して読んでいると次第にそ…

“The Thousand Autumns of Jacob de Zoet”雑感(1)

今度は David Mitchell の "The Thousand Autumns of Jacob de Zoet" に取りかかった。何しろ今年のブッカー賞候補作はもうペイパーバックでほとんど読めるので、夏読書の予定がすっかり狂ってしまい、うれしい悲鳴だ。本当は積ん読の古典をじっくり読みたか…

Andrea Levy の “The Long Song”(2)

直感で予想すると、これはショートリストどまり。受賞はないと思う。William Hill のオッズは 10 / 1 で、ぼくが「泡沫候補」と呼んだ Rose Tremain の "Trespass" と同じく7位グループに属しているが、あちらよりはブッカー賞にふさわしい内容だ。しかしな…

Andrea Levy の “The Long Song”(1)

お盆休みを利用して今年のブッカー賞候補作、Andrea Levy の "The Long Song" を読みおえた。さっそくレビューを書いておこう。The Long Song: Shortlisted for the Man Booker Prize 2010作者: Andrea Levy出版社/メーカー: Headline Review発売日: 2010/02…

“The Long Song”雑感

"The Slap"、"Trespass" に続いて今年のブッカー賞候補作、Andrea Levy の "The Long Song" に取りかかった。彼女の作品の中では、2004年にオレンジ賞とウィットブレッド賞を取った "Small Island" がいちばん有名だが、中身はほとんど失念。6年前というと…

Rose Tremain の “Trespass”(2)

Rose Tremain の作品を読むのは2年前のオレンジ賞受賞作 "The Road Home" 以来だが、相変わらず手堅い作風だ。「登場人物の心理や性格、関係、主筋の展開など、どの要素もすんなり頭に入り、ここにはまさしく英国小説の長い伝統が息づいている」とは同書を…

Rose Tremain の “Trespass”(1)

この夏、ほんとうは英連邦作家賞の最近の受賞作を3冊読もうと思っていたのだが、"Solo"、"The Slap" に続いて2年前の "The Book of Negroes" に取りかかる前にブッカー賞候補作の第1陣が手元に届いてしまった。既報のとおり、今年は珍しく大半がもうペイ…

Christos Tsiolkas の “The Slap”(2)

William Hill がつけたオッズを今見ると、本書は 11/2 で3番人気ということだが(ちなみに1番は David Mitchell で、2番は Tom McCarthy)、ぼくの率直な感想は読みはじめたときと変わらず、「ブッカー賞はたぶん無理でしょうね」。 もしかしたらショート…