ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

2023-01-01から1年間の記事一覧

Barbara Kingsolver の “Demon Copperhead”(1)

諸般の事情で長時間の読書、ブログとも夏休みだった。年金生活といえば毎日が夏休みのようなものだけど、それでもあれこれ雑用に追われ、けっこう忙しい。きのうもジムで走っていたら、三番めの孫、アカリちゃんをちょっと見ていて、という連絡が入り、予定…

Ruth Ozeki の “The Book of Form & Emptiness”(5)

先週末の夜、横浜野毛のジャズスポット〈DOLPHY〉でもよおされた、野力奏一(P)と本多俊之(S)のコンサートを聴きにいった。 ジャズの生演奏を聴くのは二回目。いつだったか、東京の〈BLUE NOTE〉でナベサダを聴いて以来だ。二回ともドラ娘の企画で、よろ…

Ruth Ozeki の “The Book of Form & Emptiness”(4)

きのう、いよいよ腰をいれて "Demon Copperhead"(2022)を読もうとした矢先、まさかの雪隠づめ。ちょっと用を足すつもりが、なんと三時間以上もかかってようやく脱出できた。 この「雪隠づめ」ということば、三軒先に住んでいるドラ息子夫婦にはピンとこな…

ダイアナ・クラールの「夢のカリフォルニア」

きょうは番外。歌手のアルファベット順に聴きはじめたジャズボーカル、もう Helen Merrill だけど(今回もやっぱりシビれる)、いまだに Diana Krall の "Wallflower"(2015)が忘れられない。最初の曲 "California Dreamin'" だけでも訳してみよう。 調べて…

Ruth Ozeki の “The Book of Form & Emptiness”(3)

Diana Krall の "Wallflower"(2015)にハマっている。 今月から歌手のアルファベット順にジャズボーカルを聴きはじめたのだけど(たしか三巡目)、Billie Holiday, Carmen McRae などやっぱりいいなあと思っているうちに Diana Krall。昔から好きな歌手だが…

Ruth Ozeki の “The Book of Form & Emptiness”(2)

まったくノリがわるいまま、おそらく今季最大の話題作 "Demon Copperhead"(2022)を読みはじめた。刊行年からして、今年の全米批評家協会賞の対象だったはずだが、最終候補作にもなっていない。だから、というわけではないけれど、「ノリがわるい」のもむべ…

Ling Ma の “Bliss Montage”(3)

短編集を読んだのはずいぶんひさしぶり。いまチェックすると、二年前の国際ブッカー賞最終候補作、"When We Cease to Understand the World"(2019 ☆☆☆★★★)以来だった。 同書ではハイゼンベルクの不確定性原理などが紹介され、コロナの時代という「不確実な…

Ling Ma の “Bliss Montage”(2)

きょうは Cleaning Day。掃除はぼくの係。体調不良のあいだサボっていたので、何日ぶりだろうか。週末にドラ娘が帰ってくる。目につくところだけでもキレイにしておかないと、と思って重い腰を上げた。 さて表題作。ご存じ今年の全米批評家協会賞受賞作だが…

Honorée Fanonne Jeffers の “The Love Songs of W.E.B. Du Bois”(5)

夕がた散歩に出かけたら、途中の〈あじさいの丘〉でもよおされていたあじさい祭りはきのうでおしまい。たしかに花の色もちょっと褪せ気味だった。下の写真を撮った今月初めはみずみずしかった。「五月ばかりなどに、山里に歩く、いとをかし」と清少納言が書…

Honorée Fanonne Jeffers の “The Love Songs of W.E.B. Du Bois”(4)

きのう鶴岡八幡宮へ、三番めの孫アカリちゃんの初宮参り。途中予報どおり、にわか雨に遭ったけれど、さいわい、お参りが済んだころにはまたすっかり晴れ上がり、ことなきを得た。 鎌倉は平日にもかかわらず人出が多く、とりわけ修学旅行生と外人が目についた…

Ruth Ozeki の “The Book of Form & Emptiness”(1)

2022年の女性小説賞受賞作、Ruth Ozeki の "The Book of Form & Emptiness"(2021)を読了。彼女がメジャーな賞レースで脚光を浴びたのは、2013年のブッカー賞最終候補作、"A Tale for the Time Being"(2013 ☆☆☆★★★)以来だろうか。さっそくレビューを書い…

Honorée Fanonne Jeffers の “The Love Songs of W.E.B. Du Bois”(3)

ミニ闘病中、もっぱら寝転んで読んでいたのが Ruth Ozeki の "The Book of Form & Emptiness"(2021)。ご存じ去年の女性小説賞受賞作だ。 これも表題作と同じく、「長い、長すぎる」。名は体をあらわす、というが、かたちはリッパでも中身がない。 とはさす…

Honorée Fanonne Jeffers の “The Love Songs of W.E.B. Du Bois”(2)

やっと平熱にもどった。先週なかほど6回目のコロナワクチン接種を受けたあと、こんども副反応がひどくダウン。高熱がひいてからも頭がぼんやり。一般的にいう微熱ではないが、個人的には平熱でもない熱がずっとつづいていた。 その微妙な熱が接種のせいなの…

Geetanjali Shree の “Tomb of Sand”(4)

腰痛がかなり治まってきた。たぶん、常時着用している医療用サポーターと、最近使いはじめた椅子用腰クッションのおかげだろう。クッションのほうは即効性こそなかったものの、日がたつにつれ効果を感じるようになった。人間工学というのはスゴイですな。 と…

Geetanjali Shree の “Tomb of Sand”(3)

今年のピューリツァー賞はご存じのように二冊受賞。チェック洩れかもしれないけど、これはどうも史上初のようだ。 ぼくはすでに二冊とも落手したが(最近、米アマゾンのサービスはとても迅速)、届いた Barbara Kingsolver の "Demon Copperhead"(2022)を…

Geetanjali Shree の “Tomb of Sand”(2)

先日届いた椅子用腰クッションの効果はまずまず。楽は楽だが、これで一気に腰痛が解消というほどではない。もっとも、そんなスグレモノなんてあるわけないんだけど。 長時間すわっていられないので、もともと少ない読書量がさらに減。日英どちらの本も休憩し…

Ling Ma の “Bliss Montage”(1)

去る連休中、持病の腰痛が再発。一定時間デスクにむかうこともままならず、さりとて橫になるとすぐに眠くなり、とてもじゃないが読書どころではなかった。 サポーターをずっと着用し、ストレッチでごまかし、いまは多少痛みが和らいできたところ。きょう届く…

Muriel Spark の “The Driver's Seat”(2)

先週末、甥の結婚式に出席のため松山に行ってきた。帰りの日に市内見物。といっても、訪れたのは子規堂、坂の上の雲ミュージアム、萬翠荘の三ヵ所だけで、いずれも再訪ないし再々訪だったが、駆け足で明治・大正・昭和初期のことを勉強するにはいいコースで…

J.G. Farrell の “The Siege of Krishnapur”(3)

前回からずいぶん時間がたってしまった。そろそろこの項も片づけてしまわないと、ぼくのことだ、そのうち本の中身をほとんど忘れてしまうかもしれない。 本書もそうだったが、このところ、大作ほど結末が見えてきたところでひと休み。それがそのまま大休止と…

Honorée Fanonne Jeffers の “The Love Songs of W.E.B. Du Bois”(1)

きのうやっと、昨年の全米批評家協会賞受賞作、Honorée Fanonne Jeffers(1967 - )の "The Love Songs of W.E.B. Du Bois"(2021)を読了。頂上が見えたところでひと息ついたら、結果的に大休止。数日前、やおら重い腰をあげてふたたび登りはじめたが、えら…

J.G. Farrell の “The Siege of Krishnapur”(2)

今回はほんとうは Muriel Spark の "The Driver's Seat"(1970 ☆☆☆★★)の落ち穂ひろいをする順番なのだけど、前回の "Troubles"(1970)の流れで、どうしても表題作(1973)から先に片づけないといけない。それぞれ Farrell の Empire Trilogy に属し、どち…

J.G. Farrell の “Troubles”(5)

去年の全米批評家協会賞受賞作、Honorée Fanonne Jeffers(1967 - )の "The Love Songs of W.E.B. Du Bois"(2021)を読んでいる。とてもおもしろい! 取りかかったきっかけは、前回の "Tomb of Sand"(☆☆☆★★★)との超大作つながり。去年のいまごろだったか…

Geetanjali Shree の “Tomb of Sand”(1)

2022年の国際ブッカー賞受賞作、Geetanjali Shree(1957 - )の "Tomb of Sand"(2018, 英訳2021)を読了。Shree はインドの作家で、いままで五作の長編小説といくつかの短編集を上梓。本書は、ヒンディー語から英訳され国際ブッカー賞を獲得した史上初の作…

J.G. Farrell の “Troubles”(4)

Geetanjali Shree の "Tomb of Sand"(2018)をまだ読んでいる。諸般の事情で、1日50ページ進むのが精いっぱい。 といっても、べつにたいした事情ではない。まず、三軒先に住んでいる初孫のショウちゃんが、毎日のように「ジージーいる?」と遊びにやってく…

J.G. Farrell の “Troubles”(3)

とにかくイギリスの文学ファンはブッカー賞が大好きだ。一次候補作の発表前から入選予想で盛りあがり、過去の受賞作ランキングを披露しあうなんて、わが芥川賞・直木賞では、いやピューリツァー賞だって考えられない事態だろう。 それかあらぬか、ブッカー賞…

J.G. Farrell の “Troubles”(2)

去年の国際ブッカー賞受賞作、Geetanjali Shree の "Tomb of Sand"(2018)を読んでいる。Shree はインドの作家で、ヒンディー語から英訳され同賞を獲得した小説は史上初とのことだが、なにしろ、ちょっとした辞書なみのぶ厚さで、何ページあるのかもコワく…

J.G. Farrell の “The Siege of Krishnapur”(1)

最終章の前でほぼ1週間、諸般の事情でひと休みしていた J.G. Farrell の "The Siege of Krishnapur"(1973)をきのうやっと読了。Empire Trilogy の第二作で、73年のブッカー賞受賞作である。また2008年には、ブッカー賞創設40周年記念の特別賞、the Best o…

Suzette Mayr の “The Sleeping Car Porter”(2)

J.G. Farrell の "The Siege of Krishnapur"(1973)を読んでいる。ご存じ73年のブッカー賞受賞作で、"Troubles"(1970 ☆☆☆☆★)につづく Empire Trilogy の第二作だ。 ぼくにしては順調に進んでいるのだけど、メモを取るのでやはり遅読。メモがないと、人物…

Muriel Spark の “The Driver's Seat”(1)

Muriel Spark(1918 - 2006)の "The Driver's Seat"(1970)を読了。使用したテクスト、Penguin Books(初版)の表紙にエリザベス・テイラーの顔写真があり、調べてみると、本書は1974年、イタリアのジュゼッペ・パトリーニ・グリッフィ監督によって映画化…

J.G. Farrell の “Troubles”(1)

きのう、Lost Man Booker Prize(2010)の受賞作、J.G. Farrell(1935 - 1979)の "Troubles"(1970)を読了。同賞は、ブッカー賞の対象年度の変更により受賞作のなかった70年刊行の作品を対象としたものである。さっそくレビューを書いておこう。 [☆☆☆☆★] …